“作戦は選挙のため” 「イスラム国」指導者バグダディ死亡でトランプ再選の潮目は変わる

テロ首謀者殺害で支持率を上げた大統領たち

カテゴリ:ワールド

  • 「イスラム国」指導者バグダディの死亡が伝えらると記者から拍手が
  • オバマもブッシュも、テロ首謀者殺害後に支持率が上昇
  • トランプは「リーダーシップに欠ける」との批判を回避できるのか・・・

ホワイトハウスの記者がトランプに拍手?!

死亡したイスラム国の指導者バグダディ容疑者とみられる画像

「イスラム国」の首領アブバクル・アルバグダーディ容疑者を死亡させたとトランプ大統領が発表した記者会見が終わった時、テレビ中継の画面では記者席が死角になって見えなかったが拍手がまき起ったように聞こえた。

ホワイトハウス記者会見で拍手が起こるのは極めてまれだし、今はほとんどの記者がトランプ大統領に反対かそうでなくとも皮肉な視線を向けているときに、この拍手には正直驚いた。

「“イスラム国”を潰すと公約したトランプ大統領にとって大きな勝利だ」(ニューヨーク・ポスト紙電子版)と保守系のメディアが賞賛したのは当然としても、反トランプ急先鋒のCNNでも論理的に大統領を批判することで知られるキャスターのジェイク・タッパー氏が、大統領の記者会見には好意的で自身の番組の中でこう言った。

「記者会見でトランプ大統領が、イスラム国によって残酷に殺害された米国人や英国人の名前をあげて改めて弔意を表したのにはここ(スタジオ)にいる誰もが拍手を送るだろう」

テロ首謀者殺害で支持率を上げた元大統領たち

これから行われる世論調査で、トランプ大統領の支持率が上がるのはまず間違いないだろう。

実は2011年5月、米軍がアルカイダの首領ウサマ・ビンラディンのパキスタン国内の隠れ家を急襲して殺害した時も、当時のオバマ大統領の支持率が急上昇した。殺害発表の翌日ワシントン・ポスト紙が行った世論調査で同大統領の支持率は56%で9ポイント上昇し約1年半ぶりの高水準になった。

2011年のビンラディン殺害を機にオバマ前大統領の支持率が上昇(RealClearPoliticsのHPより)

当時オバマ大統領は1期目だったが内政、外交共に手詰まりで、前年に行われた中間選挙では民主党が大敗し2012年の再選選挙も危ぶまれる状況にあったが、この支持率回復で体制を立て直し、共和党のロムニー候補を大差で破って再選を果たしている。

殺害されたアルカイダのオサマ・ビンラディン

この時、オバマ大統領は再選に向けての活動を開始した直後のことだったのでこのビンラディン殺害作戦は「選挙対策」ではないかとも言われた。現に、この作戦に参加した米海軍特殊部隊SEALの隊員の一人マット・ビソネッティ氏は雑誌「ワイヤード」電子版にこう語っている。

「我々はこの作戦が選挙のためだと知っていました。我々は道具箱の中の道具みたいなものなんです。我々の作戦が成功すれば、政治家はその成果をできるだけ膨らませ、自分たちの功績にします」

ビンラディン殺害作戦で支持率を上げたバラク・オバマ前大統領

さらに2003年12月、湾岸戦争の敗北の後逃亡していたサダム・フセイン元イラク大統領が隠れ家の地下穴に隠れているところを米軍に確保され米国民への「大きなクリスマス・プレゼント」と言われたことがあった。この時もジョージ・ブッシュ(子)大統領は翌年の再選選挙で苦戦が予想されていたが、この一件をきっかけに支持を取り戻し民主党のジョン・ケリー候補に激戦の末勝利していた。

トランプ大統領再選の潮目が変わるか

そこで今回のアルバグダーディ容疑者死亡発表のタイミングだが、来年の大統領選に向けて与野党ともに盛り上がり始めた中でトランプ大統領はいわゆる「ウクライナ疑惑」をめぐって民主党から弾劾の追求を受け、またシリアからの米軍撤兵に対して与野党から批判を浴びているところだった。

しかし、この奇襲作戦を命じ成功させたことで合衆国軍隊の「最高指揮官」としての役割を果たして「リーダーシップに欠ける」という批判をひとまず回避できそうだ。また、今回の作戦ではトルコやロシア、さらにはクルド族の支援も受けたと発表して、先の米軍撤兵も正当化できるだろう。

世論調査で、どこまでトランプ大統領への支持が回復されるかは未知数だが、オバマ前大統領のように、再選に向けての不利な潮目が変わるようなことになるかもしれない。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【イラスト:さいとうひさし】

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