赤ちゃんを育てているパパの皆さん。
外出中に「おむつ交換」をする場所が見つからず困ったことはないだろうか?

今インターネット上では「#俺のおむつ交換台」というハッシュタグと共に、商業施設の男性用トイレにも「おむつ交換台」を備え付けて欲しいという署名活動の輪が広がっている。



この活動を始めたのは、ジェンダーバイアスに反対し性別による差別や偏見のない社会を目指す市民グループの「babystep」。
9月2日から始めた署名活動は、大手量販店のヨドバシカメラに対し、男性トイレに「おむつ交換台」を設置するよう求めている
署名は、ネット上で賛同者を募るChange.orgで集計し、1万1千を超える支持の声が集まっている。(10月24日現在)

同時にTwitterでは「#俺のおむつ交換台」というハッシュタグを使って意見を募集。
子育て中のパパ・ママだけではく、様々な声が寄せられている。

・いままで嫁に頼んでばかりだったから、本当に設置してもらいたい
・男性トイレに無いため、ますます男性の育児不参加が助長されると思う
・うちは娘なので、人目をさえぎるカーテンも付けてほしい
・多目的トイレを増やすほうがいいのでは?
・夫は外出先でおむつ替えたこと1回もない


ちなみに、2018年5月に「babystep」は、アカチャンホンポが販売する「おしりふき」のパッケージに「全国のお母さんを応援します」と書かれていることに違和感があるとして署名活動を行っている。
オムツを替えるのはお母さんだけではない、お父さんは子育ての主役として認められないのかなどと訴え、パッケージの変更を求め賛同者を募った。
その結果、約5000人の署名が集まり、アカチャンホンポは問題の文言を削除した新パッケージに変更したという。

最近は男性用トイレにも少しずつ増えている印象はあるものの、前回以上の1万1千以上の署名が集まった今後の展開はどう考えているのか?
そもそもなぜ「ヨドバシカメラ」という、いち店舗に対して活動しているのか?
「babystep」代表の早川菜津美さんに聞いてみた。

今の状態では「外出先での育児シェア」が出来ない

――おむつ交換台の設置を求める署名活動はどうして始めたの?

わたし達は家族や性の多様性を互いに尊重し、差別や偏見から自由になり、楽しく子育てできる社会を目指し活動していますが、その中で「男性トイレに幼児用のイスはあるけれど、おむつ交換台はまだ無いところも多くて困るね」という話になり、Change.orgのご協力もあり署名活動をはじめました。

――多目的トイレにある「おむつ交換台」だけじゃダメなの?

多目的トイレは多くの方が使用します。
実際に男性がおむつを交換しようとしても使用中で使えないことがあります。
また女性のパートナーや同伴者がいる場合は、他の多目的トイレを必要とする方に遠慮して女性ばかりが女性トイレでおむつを交換するなどし、外出先での育児シェアが出来ない場合があります。
また、「女性トイレと多目的トイレにはおむつ交換台があるが、男性トイレにはない」といった状態は、それ自体が「子育ては主に女性がするものだ」という性別役割分業観を助長し、問題であると考えます。

出典:babystep
出典:babystep
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なぜ「ヨドバシカメラ」なのか?

「babystep」は8月末、ヨドバシカメラ各店舗の男性用トイレにおむつ交換台が設置されているかを独自に調査し、結果を公表している。

・マルチメディアAkiba
男性トイレ:設置なし 多目的トイレ:設置あり
・新宿西口本店
男性トイレ:設置なし 多目的トイレ:設置あり(一か所のみ)
・マルチメディア梅田
男性トイレ:設置なし 多目的トイレ:設置なし


上記のような大型店の男性用トイレにおむつ交換台はなかったそうだ。
ただ、他の一部の店舗では、設置しているところもあったという。

しかし、なぜ小売店を代表するような大手百貨店や、誰もが使う公共施設ではなく、ヨドバシカメラを取り上げているのか、という点についても聞いてみた。

――なぜ「ヨドバシカメラ」に対して署名活動をしているの?

わたし達がよく家族連れで訪れる大好きなヨドバシカメラであるからこそ、男性トイレにおむつ交換台が少ない現状が残念で、ぜひ設置をしてほしいというお願いをしています!
また全国の主要な都市における玄関口に店舗をかまえ、訪日外国人も多く訪れる企業であるヨドバシカメラだからこそ、他の企業や社会への影響力があり、まずヨドバシカメラの男性トイレにオムツ交換台を設置していただくことで、全国に広がると期待しています
オリンピック、万博を控えた今だからこそ、行動力のある私企業にお願いをしています!

――外国人の話が出たが、海外だと男性用トイレのおむつ交換台は普通なの?

国や地域によると思います。
わたし達の今回の署名はアメリカの“Squat for Change”(注1)に倣ったものなので、アメリカでもそういった活動が必要である現状があると言えると思います。
しかし、我が国のジェンダーギャップ指数(注2)などから察するに、未だ日本は「育児は母親がするもの」といった偏見も強く、世界的にも男性トイレのおむつ交換台が少ないと思います

※注1 Squat for Changeとは
2018年のアメリカで始まった、男性トイレにおむつ交換台の設置を求める運動。
https://squatforchange.com/home/


※注2
世界経済フォーラムが公表した「ジェンダー・ギャップ指数2018」で日本の総合スコアは0.662、順位は149か国中110位。
http://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2018/201901/201901_04.html

感覚としては男性の賛同もかなり多い

――署名活動の反対意見はないの?

署名活動は10月24日現在で11,493筆の賛同を頂きました。
反対のご意見には特に注意して目を配るようにしていますが、「男性トイレにおむつ交換台を設置」すること自体への反対ではなく、「なぜ私企業にお願いするのか?」「不審者の目が心配」などの疑問・心配が目立ちます
その点にはQ&Aでお答えしています。

――テレビや新聞でも取り上げているが、この反響の大きさは想定していた?

少しずつ育休をとる男性も増えており、今の時代に必ず必要なものであると思っていたのである程度の賛同は頂けると思っていました。
しかし思った以上の反響で驚いています。

――署名の男女比や、賛同者が多い年齢層は?

集計をとっているわけではないので、明確にはお答えできません。
また署名のお名前はお伺いしていますが、男女を聞いているものではありません。
しかし、感覚としては、今回は男性の賛同もかなり多いと感じています
また子育て世代の声が多いのですが、子育てが落ち着いた世代からも「自分のときは大変だった。ぜひ応援している」といったメッセージが寄せられています。
また、育児参加しているおじいさんからの賛同もいただいています。

――署名活動はこれからどうなるの?

現在すでにヨドバシカメラさんにアプローチを行っており、先方の解答をおまちしています。
東京オリンピックには設置が間に合うと良いと思っています。

ヨドバシカメラにも聞いてみた

では、名指しされたヨドバシカメラは今回の署名活動をどうとらえているのか。
担当者に聞いてみた。

――男性用トイレにおむつ交換台設置を求める署名活動が行われていることは知っている?

認識しております。

――なぜヨドバシカメラに対して署名活動が行われたと思う?

直接の連絡が来ていないのでコメントに関しては差し控えさせていただきます。

――署名活動を知っているというが、なにか対応した?

実際におむつ交換台が少ないところを確認し、すぐ対応できる2つの店舗の男性トイレにおむつ交換台を設置しました。

――今後の予定は?

例えば、大阪のマルチメディア梅田が入った商業施設が近々増築されるので、これまで男性トイレにおむつ台がなかったフロアには、新たに設けるよう取り組んでいます
他の店舗も現在検討中でございます。



ヨドバシカメラは、まだ連絡や署名の受け取りなどないものの、すでに男性用トイレのおむつ交換台を増やしていた。
ネット発のムーブメントが起きやすい今っぽい現象ではあるが、外出先での育児シェアをするための環境づくりというのはこれからの社会にますます必要になっていくことは確かだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。