「信頼関係は完璧に壊れた!」 “質問内容流出”に猛反発の野党  対抗策の実効性は?

カテゴリ:国内

  • 野党は、国民民主党・森ゆうこ議員の質問内容が“流出”したと批判
  • 政府は「漏洩の事実はない」と全面否定
  • 野党の対抗策「質問通告の簡素化」 官僚から「仕事増える」と疑問の声も

野党が猛反発!国会の「質問通告漏洩」問題

野党議員の「質問通告漏洩」問題が、国会で波紋を広げている。
国民民主党の森ゆうこ議員が15日の参議院予算委員会で質疑に立った際に、政府側に通告した質問内容が事前に漏れていた可能性があるというのだ。
森議員らは、16日の記者会見で、政府の対応を厳しく批判した。

国民民主党・原口国対委員長、森ゆうこ参院議員らの記者会見(10月16日)

「日本国憲法において、規定されている国会議員の発言の自由、それを守る憲法そのものに対する挑戦だ」(国民民主党・森ゆうこ参院議員 16日・記者会見)

「森ゆうこ議員・質問要旨配布資料外部流出事件として追及していく」
(国民民主党・原口国対委員長 同上)

森議員によると、15日の予算委員会の質問内容を11日に政府側に通告していたが、質疑の前日の14日に、ある大学教授がインターネット番組で「(森議員の)質問通告をみた。私の関連も入っていた。役所の方から(情報が)来た」などと語ったという。

国民民主党・森ゆうこ議員の質問(10月15日・参院予算委員会)

こうした背景には、森議員のこの日の質問内容の通告が遅かったとする、官僚によるものとみられる書き込みを端緒に、インターネット上で森議員に対する批判が出ていたことがある。

「国会の質疑権というものをこうした形で脅かすようなことは、本当に、民主主義の根幹に関わる問題だ」(立憲民主党・枝野代表 17日 常任幹事会)

立憲民主党・枝野代表 (10月17日・常任幹事会 )

野党側は、「国家公務員の守秘義務違反」、「国会議員の質問権の侵害だ」と批判。
立憲民主党などの野党統一会派は調査チームを立ち上げ、真相を明らかにしていくとしている。

政府は「漏洩の事実はない」

これに対し、23日の衆議院内閣委員会で、北村地方創生担当相は、「内閣府から通告内容が漏洩した事実はない」と真っ向から野党の批判を否定した。

北村地方創生担当相の答弁(23日 ・衆院内閣委員会)

北村大臣は、「森ゆうこ議員から内閣府事務局に対し、原英史・国家戦略特区ワーキンググループ座長代理に対する参考人招致の要請と質問通告があった。これを受け、原氏に参考人招致の要請を伝えるとともに、(招致の)諾否の判断を求めるため、質問通告の内容を送付した」と述べた。
北村大臣によると、質問通告の内容に個別の大学名があったため、原氏が「私人としての判断」で、その大学の教授に電話とメールで連絡し、大学教授がネット番組で通告について明らかにしたという。
そして、北村大臣は、内閣府は大学教授に直接接触はしていないと強調し、「責任問題が生じた時は責任を取る」とまで言い切った。

100年近い伝統が?「質問通告」とは

衆議院本会議 安倍首相の答弁 (10月7日)

そもそも質問通告は、本会議や委員会の場で、安倍首相を含めた閣僚や政府の担当者が答弁する際、答弁の準備ができるよう、質問の内容や概要を事前に伝えるものだ。実際には、通告は各省庁の事務方を通じて行われる。国会での議論を深めるため、国会での質問通告は与野党の「慣例」となっている。
いつからこの慣例が始まったのかは不明だが、国会の事務局によると、第50回帝国議会が開催されていた1925年に初めて通告が行われたという説があるという。

また、質問通告が遅いため、各省庁の担当者が夜遅くまで残業せざるを得ないと、これまでも指摘されてきた。
与野党はこれまで、「質問者は原則として、前々日の正午までに、質問の趣旨等について通告する」(1999年)、「国家公務員の過剰な残業是正等を行うため、速やかな質問通告に努める」(2014年)などと申し合わせてきた。

野党は「簡素な通告文」で対抗

しかし、立憲・国民などの野党の共同会派は、この問題で「信頼関係は完璧に壊れた」として、当面の間、政府への質問通告を簡素化する方針を発表した。

自民・立憲・国民 国会対策委員長会談 (10月18日)

「質疑の信頼関係を壊すものなので看過できない。」
(国民民主党・原口国対委員長 18日)

18日の自民・立憲・国民の国対委員長会談で、野党側は「一定の前進があるまでは、“以前の自民党が行っていたような”簡潔な通告文で行いたい」との方針を与党に伝えた。

小泉環境相も野党時代は“一行通告”

では、野党側がいう「以前の自民党」とは、どういうことなのか?
その一例として、野党側が提示したのが、民主党政権時代、つまり自民党が野党だった時代の小泉環境相、菅原経産相、河井法相の過去の予算委員会の質問要旨だ。

小泉環境相 国会での答弁

2011年2月に小泉氏が提出した質問要旨には、「政権交代について」「政治不信について」「そのほか」の三行しかなかった。
2012年2月の菅原氏の質問要旨も、「政府の円高・デフレ政策について」、「日本銀行の金融政策について」、「そのほか」の三行だけだ。
2011年12月の河井氏の質問要旨にいたっては、「閣僚の資質と任命責任について」と一行しかない。

野党側は、民主党政権に対する野党・自民党の対応を引き合いに、「簡素な通告」にすると主張しているのだ。

野党側の狙いとは・・・「国会審議が深まらない」危機

野党の共同会派は、「簡素な質問通告」によって質問内容の流出は防げるので、必要な対応だと主張している。

これに対して、ある政府関係者は「通告がないから『お答えできません』と発動するだけだ」と冷ややかな見方を示す。
一方、立憲民主党の関係者が「一行通告だと国会の議論が深まらない」と語るように、野党内からも批判的な声が聞かれる。
また、答弁を用意する官僚の側からも「我々の仕事が増えるだけだ」との疑問の声も出ている。通告が簡素だと、逆に幅広い想定問答を用意しなければならず、かえって疲弊するというのだ。

そもそも、森ゆうこ議員をめぐっては、台風が接近する中なのに、質問の通告が遅かったとの指摘があり、「この問題をすり替えようとしているのではないか」との声も出ている。

「質問通告漏洩」問題では、一部の野党は、参議院の予算委員会で再発防止策が講じられることが必要だと要求しているが、今のところ落としどころは見えない。

激しさを増す、質問通告をめぐる野党の批判。対立がエスカレートすれば、国会での議論がかみ合わず、水掛け論に発展する危険性もある。国会の議論のあり方が問われるだけに、建設的な解決策が見出されることを期待したい。

(フジテレビ 政治部 野党担当 羽山 寛)

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