属人的だった不動産“目利き”をAIが担う

「不動産マーケット」が、様々なプレーヤーの活躍で、新たな展開を見せている。
不動産テック企業「GAテクノロジーズ」は、「RENOSY」ブランドで不動産の売買、賃貸プラットフォームなどを展開。物件の仕入れ、リノベーション、契約、管理などを“一気通貫”で手がける。

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力を入れているのが、AI技術の応用だ。
従来は属人的だった、不動産仕入れの初めのスクリーニングをAIで行い、仕入れ担当者によるバラつきがなくなるよう工夫している。
また、中古物件のチラシ画像をデータベース化し、優良物件をスクリーニング。販売しやすいかどうかを、ビッグデータを元に解析している。
中古物件は売買のやりとりデータがあり、相場もできあがっているため、新築では出来ない解析が可能だという。
社内に「AIストラテジーセンター」という部署があり、専門機関の研究者から大学教員、メーカーの研究開発など、様々なバックグラウンドの技術者や研究者が所属。“ビジネスになる技術”の研究を進めている。
「スマートロック」など新しい技術の導入も進める。

9月末からはグループ会社の「イタンジ」で「OHEYAGO」というセルフ内見型部屋探しサイトを開設。スマートフォンで賃貸物件を検索して、内見をオンラインで予約。

当日は、スマホに送られてきた電子錠で、物件の「スマートロック」を開け、自分のペースで時間を気にせず見学ができるサービスとなっている。物件を気に入ったら、その場でスマホから入居の申し込みができる。

物件に接することで“購入者コミュニティ”にも参加

一方、ITを活用したリノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」などを運営する企業「ツクルバ」は、「コミュニティ」を軸にしたサービスを展開する。「cowcamo」のユーザーを対象としたパーティーを年1回開催し、登録ユーザー同士もつながる仕組みを提供する。ユーザーは、物件購入後もコミュニティに参加が可能だ。
また、物件情報は見出しや文章などを工夫して「読み物」として楽しめるようになっている。そのため、ユーザーは購入前から楽しみながら物件との接点を持つことができ、「暮らしを妄想できる」という。

一人のユーザーが購入をめぐり、物件と接している時間が長いため、さまざまな「コミュニティ化」された場面に出会うことができる。
ツクルバは「コミュニティイベント」も大事にしていて、社内のイベントも合わせると週1回ほど、本社にあるキッチンスペースなどでイベントを開催。社内、社外問わず、いろいろなアナログコミュニケーションを重視している。

代表取締役の中村真広氏は、CCO=「チーフコミュニティオフィサー」を名乗るなど、コミュニティを大切にするスタンスが表れている。
テクノロジー面でも新たな試みを模索している。
ブロックチェーン技術に特化し、トークン(独自通貨)の開発などを行う企業「LayerX」と、ブロックチェーンを活用した電子市場創造を目指すプロジェクトに2018年に参画していて、次の展開が注目される。

「テクノロジー」や「コミュニティ」などをめぐる様々な動きが、新たな原動力となって、巨大な不動産マーケットに新風を吹き込んでいきそうだ。

(フジテレビ報道局経済部 西村昌樹記者)

西村昌樹
西村昌樹

フジテレビ報道局 FNNプロデュース部デスク 元経済部デスク