1日の仕事が終わり、帰りの電車で運良く座れた時に、ついうとうと…。

心地良い睡眠が取れて、疲れも解消できた! と思いきや、なんとなくその日は寝つきが悪い気がする。

ちょっと遅めの昼寝で、寝不足は改善できるのだろうか。もし効果的な眠り方があるなら知りたいもの。そこで、睡眠医療の第一人者である秋田大学の三島和夫教授に夕方以降の睡眠について聞いてきた。

「帰りの電車で40分以上ぐっすり」は夜の睡眠に悪影響

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帰りの電車に揺られながらうとうとするのはなんとも心地良いが、夜の睡眠への影響はあるのだろうか。

「電車の中は雑音が多く、揺れもあり、深い睡眠になりにくいので、10~20分うとうとする程度であれば大きな問題はないでしょう。ただし、40分以上眠れてしまうようだと深い睡眠に入ってしまうことがあり、そうなるとその日の夜の睡眠が浅くなるなど影響は大きいです」(三島先生・以下同)

三島先生の話によると、夕方以降に長時間の睡眠を取ってしまうことが、夜の睡眠に悪影響を与えてしまうらしい。

「例えば、夕方から夕食までの間に1時間寝てしまったとすると、夜に眠気が襲ってくるタイミングが、いつもより1~2時間も遅れてしまいます。また、夜中の睡眠が浅くなり、熟睡感が得られず、翌日に再び遅めの昼寝をしてしまうという悪循環に陥る可能性も。夕方以降の睡眠はなるべく避けた方が、睡眠の質は高まります」

「20~30分」の昼寝なら眠気解消が期待できる

ただ、どうしても日中に眠気が出てしまう日もある。その時のために、夜に影響しない昼寝の仕方を知っておきたいものだ。

「睡眠不足が続いて、もやっとした眠気を感じる時は、正午過ぎくらいまでの早めの時間帯に20~30分昼寝をするといいでしょう。この長さであれば、深い睡眠に入る前にすっきり目覚められますし、眠気もある程度解消できるので、効率的です」

ちなみに、早めの時間帯だからといって油断し、長く寝てしまうのは逆効果とのこと。

「過去の研究によれば、例え昼間でも40分以上寝てしまうと、かなり深い睡眠に入ってしまう人が多いです。夜の睡眠に影響しなかったとしても、目が覚めた時にぼんやり感が強く残るので、脳も体もパフォーマンスが落ちてしまいます」

昼寝をするのは、眠気を解消し、作業効率をアップさせるため。昼寝によってぼんやりしてしまったら本末転倒だ。短い時間で起きられるよう、20分後にアラームをセットするなどの工夫を忘れずに。

「寝室以外の場所」で強烈な眠気に襲われる人は要注意!

「もし、毎日のように帰宅途中の電車などで強烈な眠気に襲われてしまう人は、『不眠症』を疑った方がいいかもしれません」と、三島先生。

「『不眠症』の方ほど、電車で熟睡してしまったりするものなのです。なぜかというと、寝室以外の場所では寝ることに緊張感を抱かないから」

「不眠症」の人は、布団に入っても眠れないという経験から、寝室の風景を見ただけで血圧や脈拍数が上がり、交感神経が優位に働いてしまいやすいという。布団に入ってからも緊張感や恐怖感を抱いてしまい、ますます寝付けない。そのため、日中は慢性的に眠気を覚え、仕事終わりでホッとした時などに、寝室以外の場所で熟睡してしまうのだ。

「心当たりがある人は、睡眠障害の専門医に相談してみましょう。さまざまな原因で夜の睡眠の質が低下していると、日中に眠気が出てきて、とりわけ夕方以降の昼寝に陥りがちです。『帰りの電車では座らない』などのマイルールを決めて、眠気を払いのけ、悪循環から脱却することが大切です」

休日に、遅めのランチやおやつを食べた後、テレビを見ているうちにぐっすり…。これも、夜の睡眠に影響してしまう遅めの昼寝。ひとときの気持ち良さに流されてしまいそうだが、翌日の自分のパフォーマンスを高めるためにも、ここは我慢してうとうとする程度に留めよう。


三島和夫
秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授。1987年に秋田大学を卒業し、秋田大学医学部精神科学講座助教授、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。専門は精神医学、睡眠医学、時間生物学。著書に『かつてないほど頭が冴える! 睡眠と覚醒 最強の習慣』『朝型勤務がダメな理由』など多数。

取材・文=有竹亮介(verb)

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プライムオンライン編集部
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