「ひも1本でぶら下がっているように見え、ドキドキした」

10月上旬、神奈川県内のとある場所で撮影された映像が、FNNビデオPostに届いた。

空中に浮かぶ、6つの黒い影。
電線に何かが引っかかってしまったのだろうか。
しかし、拡大して見てみると…その正体は、なんと人間!

映像を撮影した投稿者は、「鉄塔に囲まれた場所に6年ほど暮らしていますが、作業しているところは初めて。ひも1本でぶら下がっているように見え、ドキドキしました」と、驚いた様子。
6人は、電線を少しずつ移動しながら作業していたそう。

高所というだけでダメな人もいるだろうが、さらに電線にひもでぶら下がっている不安定な状態に見える。
彼らは、どういった人たちなのだろうか。送電線建設技術研究会の担当者にお話を聞いた。

全国におよそ6,000人。その名は「ラインマン」

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ーー彼らの正体は?

映像に映る彼らは、電気の通り道となる送電線(鉄塔と電線)の建設や保守点検を行う職人で、「ラインマン(電工)」と、呼ばれています。
高所で作業する作業員数は、2018年度の調査で、全国におよそ6,000人います。


ーー具体的にどういう仕事?

鉄塔から鉄塔まで、電線を延ばしながら張り上げるまでには、ヘリコプターなど多くの機械を使いますが、高所での電線同士の接続や連結といった重要な部分は、すべてラインマンの手作業となります。

鉄塔の高さは、低いもので30メートル前後、高いものでは100メートルを超えるものまでさまざまですが、鉄塔の昇り降りは基本的に自力です。
基本装備は、胴ベルト型の安全帯一式とヘルメット・安全靴・手袋です。
また、高所作業にあたっては墜落防止用ロープを装着し、電線に乗り出して細かな作業を行う場合などには、資材・工具等の万が一の落下に備え、落下防止ネットを装着します。

「一人前になるまでに10年かかる」

ーーラインマンになるには?

高所での作業が続くので、体力や運動神経・タフな精神力が求められます。
一般に、一人前のラインマンになるまで、10年かかるといわれており、地上で若手を指導するベテランの中には、70歳以上のラインマンもいます。

ーー働く場所は?

現場は海や川、住宅地以外に、鉄道や高速道路の真上で作業することもあります。
また、すべてが屋外の仕事となることから、真夏の暑さ、真冬の寒さ、険しい山岳地など、自然環境の厳しい場所での作業もあります。


東京電力ホールディングスによると、この作業は、電気の供給工事とのこと。
日々の生活に欠かせない電気。台風など自然災害で、送電線が被害を受けた時も、彼らが頼りになる。
ラインマンの過酷な仕事が、わたしたちの暮らしや社会を支えてくれているんですね。

(執筆:清水智佳子)

FNNビデオPost
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