“バックウォーター”現象の脅威

台風19号により全国71河川で起きた堤防決壊。一体何が命の分かれ目となったのだろうか?

いまも日本に接近しつつある2つの台風。再び河川の氾濫などに警戒が呼びかけられている。首都圏でも被害が出た命の分岐点を検証する。

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番組が行った専門家との取材で、被害を出した河川に“バックウォーター”という現象が起きたことがわかってきた。

東京都と神奈川を流れる多摩川。台風19号の影響で氾濫した結果、大規模な浸水が発生し、マンション1階に住む男性が死亡した。さらにJR武蔵小杉駅の改札が泥水につかるなど、深刻な被害が都市部にも及んだ。

その引き金となったのが“バックウォーター”だと、東京大学・池内幸司教授は語る。

バックウォーターとは大量の雨で本流の水位が上昇し、支流の水が本流へと流れ込めずに逆流氾濫するというもの。

池内氏はこのバックウォーターが多摩川の支流・平瀬川で起き、氾濫したと指摘する。

池内氏と平瀬川沿いを歩くと…

東京大学・池内幸司教授:
本川ではなくて流れ込む支川から溢れてきて(土地が低くなっている住宅地のほうに流れ込み)、それでいつの間にか浸水してしまっている。

各地の川で相次いだバックウォーター

普段、水量の少ない支流が突如として氾濫するバックウォーターは各地の川で相次いだとみられている。
栃木県足利市にあるこの場所は、渡良瀬川の支流となる旗川や出流川と尾名川が流れている。今回の台風では出流川の堤防が約80メートル決壊した。

東京大学・知花武佳准教授:
堤防が完全に決壊したわけですけれども、このコンクリートの水路がずっとまっすぐ田んぼに沿う形であったはずです。
ですけど、ここから下流のものは一切なくなっていますので、流れに沿って運ばれていった、という状況です。

知花氏によると、もう1つの旗川でもバックウォーターが起きた可能性があるという。
これは台風が列島を襲った今月12日午後8時半過ぎの足利市で撮影された映像だ。

道路が冠水するなど、この時すでに出流川と尾名川の水は堤防を越えていたとみられる。
午後10時半、旗川の水位が6メートルを超え、尾名川の水位との差は約2メートルに。
より大きい旗川の水位が上昇したことで、小さい出流川と尾名川が逆流する危険が高まった。

このため国交省の河川管理事務所は3時間後この2つの川の水門を閉じた。
足利市・奥戸町水防隊の隊長は「閉めないと被害が大きくなるので、これはやむを得ない」と語った。

本流と支流の水位を調節する水門。知花氏は水門を閉じたことで被害拡大を抑えられたとした上で、限られた人数での水門の操作は非常に困難だと指摘した。

東京大学・知花武佳准教授:
上流域の小さな川とその下流域の都市の川の洪水対策のバランスをどうしていくのか?というのは今一度考えていた方がいいのかなと思っています。

被害から浮かぶ新たな問題

スポーツコメンテーター・為末大氏:
河川の対策は長期でやらなくてはいけないと思うが、個人的には今回の災害でスクープの魅力のようなものを個人が知ってしまった気がする。つまり、撮れない映像を取りに行こうと思ってみんなスマートフォンを持ってそこに近寄っていっちゃう。これがすごく危ないと思うので、例えば、とにかくなるべく近寄らないということを結局徹底するしかないんだろうなと思う。映像に収めることではなくて、命を守るということを。

フジテレビ・風間晋解説委員:
日本にある一級河川と二級河川の数は2万1147。つまりこれだけバックウォーター現象が起きる可能性がある。そうすると、堤防などのハードの対策を待っていてもなかなかすぐには無理だ。ということは、もう自分で身を守る努力をやっぱりいろいろ考えていかなきゃいけないということかなと。台風19号は残したものを次の対策につなげていかないといけない。

(Live News it! 10月21日放送分より)