塩を最低限にした“透き通った”キャビア

静岡県浜松市の中心部から車で約2時間、天竜区春野町。人口わずか4000人あまりの地区に養殖場がある。中にいるのは…

金子コード食品部 武石充人さん:
約1万5000尾を飼育しています。大きさは10センチから1メートルのものまでいます

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飼育されていたのは大量のチョウザメ。5年前に1000匹から養殖を始め、ようやく去年チョウザメの卵「キャビア」をとることができた。

そのキャビアが「HAL CAVIAR(ハル キャビア)」だ。

一般的な黒いキャビアと比べて、薄く透きとおった輝くような色合い。固くなったり黒ずんだりしないよう、冷凍や低温殺菌はせず、塩も最低限しか使わない。

保存期間は数週間から数ヶ月と短いものの、キャビア本来の濃厚さを味わうことができる。

金子コード食品部 中村秀憲部長:
この春野にある水、チョウザメに適した水が使えることからこの場所を選択しました

水質に敏感なチョウザメのために水を入れ替え、エサも脂の少ないものを使い臭みを抑える。
春野の水は、適度なミネラルが含まれた軟水で養殖に適していた。

金子コード食品部 中村秀憲部長:
非常にピュアな水。程よいミネラル感を含んだ水です。この水がチョウザメ・キャビアをおいしくしている。キャビアづくりにはベストな水

そんな春野のキャビアは、イギリス王室も認めた味。
エリザベス女王が伝統的なポロの世界大会で優勝者の副賞に、このキャビアを手渡した。

金子コード食品部 中村秀憲部長:
非常に光栄ですし、他に類を見ない栄誉なこと

イギリス王室も認めた味とは。

9割が東京へ出荷される春野のキャビアを、浜松市で唯一提供しているフレンチレストランを訪れた。シェフの尾上さんは、その味にほれ込んだそう。

cafe & restaurant連理 尾上成彰シェフ:
キャビアはもともとロシアの方で使われていたものが多く、10パーセントの塩でかなり塩気がすごくて、キャビアの味が分からない。春野のキャビアは3パーセントの塩で、すごく甘みがあってなんでも相性がいい

春野のキャビアは日本はもとより、世界で勝負できる商品として知名度を伸ばしている。

山ではアワビも“豊作”

一方、こちらは天竜区佐久間地区。

若山悠介記者:
続いても海の高級食材…なんとアワビです。こちらでは流通に向けた実証実験が進んでいます

4年前、閉鎖した給食センターを使って浜松市と地元のNPO法人が始めたアワビの養殖。ゼロからスタートした当初は、1~2週間で2割の稚貝が死んでしまった。

がんばらまいか佐久間 河村秀昭事務局長:
稚貝を岩手の方から仕入れていますが、出荷の水温と我々が受け入れる水温がほとんど分かっていなくて、来たら翌日全部死んでしまいました

エサを変えたり、水温を変えたりと試行錯誤。今年ようやく安定して育つようになりました。

ーーこの装置の役割は?

がんばらまいか佐久間 河村秀昭事務局長:
汚れた水を集めてポンプでくみ上げ、ろ過してまた戻すシステム

ーーきれいな水を保つのがポイント?

がんばらまいか佐久間 河村秀昭事務局長:
ポイントです。我々が4年間で一番感じたことです。これである程度かなり解決されています

浜松市市民協働 地域政策課 湯山禎典さん:
佐久間の水を活用して天竜川の恵みで育てられたアワビは、非常に高付加価値のあるものと考えています。完全閉鎖型の養殖事業になるので水質の管理や寄生虫を防ぐ大きなメリット

課題は、飼育員の高齢化。平均70歳以上となり、継続できるかが勝負だ。

がんばらまいか佐久間 河村秀昭事務局長:
せっかくチャンスを頂いたのをどうしても生かしたい。一つの街としての産業化にどうやって結びつけるか。それにともなって若い人が1人でも2人でも佐久間に残ってくれる。そういう姿を見るのが夢です

意外な高級食材で山間部を元気に。
海の幸が過疎化が進む山にチャンスをもたらしている。

(テレビ静岡)

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