入口鎌伍記者:
まだ生きているということで時折、体や尾ひれを動かしています。現在、消防や海上保安部が救出活動をしています

9月18日、静岡市清水区三保の海岸に体長約5.8メートルのアカボウクジラが漂着した。住民も駆けつけ救出作戦を展開。

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住民:
クジラが涙を流していた。早く海に戻れるといい。ただそれだけ…

しかし懸命の作業もむなしく、徐々に弱っていくクジラ。救出を始めてから約4時後、息絶えた。

見守った人:
残念。本当にかわいそう

アカボウクジラの生態は

東海大学海洋学部 大泉宏教授:
アカボウクジラは群れで暮らす習性がある。この個体に何かあったというより群れ全体に何かあったのではないか

この言葉を裏付けるように、県内でこの前後にアカボウクジラの漂着が相次いだ。

漆畑晃太郎記者:
清水区興津の海岸です。後ろに見える波消しブロックと防波堤の間にクジラが浮いています

最初は静岡市の海岸に。続いて南伊豆、富士、そして清水区に。4日間で5頭のアカボウクジラが漂着。すべてメスだった。生きていたものから、かなり腐敗が進んだものまでさまざまで、5頭が一斉に死んだわけではないと見られている。

東京海洋大学でクジラの生態の研究や野外調査を行っている、村瀬弘人准教授にアカボウクジラの生態を聞いた。

東京海洋大学鯨類学研究室 村瀬弘人准教授:
クジラは種類によっては母系、母親を中心とした群れを作る種もいる。アカボウクジラ自体はそういう生態がわかっていないが、群れで行動していた可能性はなくはない

過去には1日で5頭漂着したことも

県内では1990年、同じ日に清水区や沼津市の海岸で合わせて5頭のアカボウクジラが打ち上がったことがあった。駿河湾はアカボウクジラにとって良好な生息域で、定住している可能性もあると言われている。

村瀬弘人准教授:
1000メートルくらいの深さで、60分間潜るという習性がある。エサはイカや魚類で深く潜る。船で海から目視調査をするが潜水時間が長く調査が難しい。生態がわかっていないところが多い

仮説1 「動脈硬化」

ではアカボウクジラの死因に迫ることはできるのか?

解剖の結果、5頭のクジラの内2頭については「動脈硬化」を患っていたことがわかった。しかし、直接的な死因になるほど重症化していなかった。

仮説2 「軍事用ソナーによる潜水病」

こうした中、村瀬准教授が注目しているのは潜水艦の探知などに使われる「軍事用ソナー」だ。
ソナーが発する音波がクジラに届くと、クジラはパニックに陥ってしまう。そして水面に上がろうと急浮上した結果、圧力の変化に対応できずに、いわゆる潜水病を発症。呼吸困難になり、死んでしまう。

村瀬弘人准教授:
クジラは水の中で生活していて、生活するために音をかなり利用している。音が出る機械に対して敏感に反応する。ある研究の結果では軍事用ソナーの音に対して行動を変えると報告されている

アメリカやスペインなどでは、実際に軍事用ソナーの音波による潜水病が原因で、クジラが座礁したとの研究結果も発表されている。

国内で、年間約数百件の報告があるクジラの漂着。しかし、死因が明確にわかるのは約2割だけ。クジラに何があったのか。
もし人間が原因を作っているのなら、助ける道があるのかもしれない。

(テレビ静岡)

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