「東京都をバカにしてるのか」
オリンピックの「華」ともいえるマラソンと競歩の開催地を「東京から札幌へ」。
この唐突な変更を小池知事が組織委員会の武藤事務総長からいわれたのは今月15日。
その翌日にはIOCが発表した。
都庁内からは、「東京都をバカにしてるのか」「なぜ札幌なのか。せめて復興五輪ということで東北の被災地での開催にならまだ…」「決定権はIOCにある」など憤りや諦めなど様々な声があがった。
また、いつもは知事に対して辛口の都庁職員達ですら「今回ばかりは小池知事がかわいそう」と知事に同情的な言葉を口にした。
都は“未明スタート”をIOCに提案
この“決定”をくつがえせるのか、21日に水面下ではIOC、組織委員会、都庁の3者の非公式協議が行われた。
日本医師会が去年10月、気温などのデータをもとに、マラソンについては午前5時半スタート、50キロ競歩の場合午前3時半(遅くとも午前4時)にはスタートするように、といった提案を行っている。
都はこの医師会の提案などをもとにマラソンを未明にスタートすることで東京開催にできないか、IOCに対して提案した。
また、競歩については皇居外苑の内堀通を周回するコースが日陰が少ないことから、日陰の多いコースに変更することなどもIOCに提案する考えだという。
開催地変更の追加費用は誰が払うのか?
では、実際に札幌に開催地変更した場合の費用はいくらぐらいになるのか。
都庁関係者によると、東京マラソンの開催費用は40億円。その他に地方開催となるとセキュリティや輸送に100億円以上かかるという。
この費用をだれが払うのか。
都はマラソンコースの遮熱道路などの対策におよそ300億円を投じている。
それはまさに都民の税金だ。
対策にお金を払ったうえに開催地は変更されてさらにお金を要求される、というのは都民にとって納得できるものではないと思う。
小池知事より先に知っていた都議の存在
また、小池知事は18日の会見で「先週半ばに森会長はオリパラ担当大臣や特定の都議の方にはもう連絡をされていたということをうかがいまして」と明らかにした。
この「特定の都議」について都庁内では職員、都議にかかわらず誰にたずねても同じ名前が挙がった。
その特定の都議は“開催地変更”を知ってからIOCの発表までに何を思っていたのだろうか。
知っていた特定の都議は、口止めされていたのかもしれない。
上司からの口止めで話せない、というのは会社など組織のなかでは、容易に想像できる.
しかし、都議は都民の代表である。
その都民の代表である都議が「札幌への変更」を聞いた都民がすぐに納得すると思ったのだろうか。
都に寄せられた意見では6割が計画変更に反対、1割が賛成だったという。
アスリートファーストはもちろん誰しも反対するものではない。
ただ、都議としてアスリートファーストと都民の気持ちの両立を目指すべく、まずは都知事側に情報を入れて、IOCが情報発信する前に「オール東京」としてさらなる対策づくりやIOCへの働きかけなどに尽力するという選択肢はなかったのか。
知っていた都議が自らの立場上、黙っていないといけなかったとしても、早く知っていたからこそIOCが発表すると同時に都議会として抗議声明を出すとか、関係する自治体、とくに期待していた子供たちや住民へのケアなど、何らかのアクションを起こせるよう準備ができたのではないか。
しかし、21日に開かれた都議会のオリンピックパラリンピック特別委員会の理事会では、委員会を開く方向にはなったものの、これといった対策も出されず何をするのかは詰まっていない。
このままほかの競技も東京以外の場所で行われるようなことになったら「東京五輪」でなく「日本五輪」ではないのか。
30日に始まる調整会議にむけ、どこまで「オール東京」で一丸となって情報収集を行い知恵をしぼっていけるのか、開催都市としての力量が試されている。