ラグビー界のレジェンドは日本代表の戦いをどう見る?

初のベスト8入りを決め、いよいよ未知の世界、決勝トーナメントに臨むラグビー日本代表。
2007年と11年大会の2度、日本代表のヘッドコーチ(監督)としてW杯の指揮を取ったラグビー界のレジェンド、元オールブラックス代表のジョン・カーワン氏に南ア戦の展望と盛り上がるW杯日本大会について聞いた。

ジョン・カーワン氏
ジョン・カーワン氏
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ーー初めてのアジアでのW杯開催、ここまでどう評価されますか?

カーワン氏;
大成功だと思います。世界のラグビー界にとっても素晴らしいことです。
大会前は多くの人が心配していたと思うけど、日本のファンが支えて大会を盛り上げている。アジアでのラグビー普及の力になっていると思う。

ーー日本のベスト8進出をどう評価しますか?

カーワン氏:
日本代表の、特にアタックラインのスピードとディフェンスが素晴らしく、ラックとなったときのボールの展開が素早い。日本は最も理想的なラグビースタイルで戦っているチームだと思うし、ベスト8にふさわしい戦いをしています。

ーーこれまでの日本の試合で最も印象的なシーンは?

カーワン氏;
二つあります。
一つは、特に日本戦において観客が全員桜ジャージーを着てスタンドが赤と白に染まったこと。
もう一つ ラグビーの視点からは、ディフェンス陣の頑張りが見ていて誇りに思いました。。
観客のサポートと日本選手の献身的な戦いぶりの二つが特に印象的なシーンです。

ーー日本のトライシーンで印象的なものはどれを挙げますか?

カーワン氏;
スコットランド戦のウィングの福岡堅樹の2つのトライ。僕にとってあれは印象的なトライで素晴らしかった。

カーワン氏は1987年第1回のW杯でトライ王に輝きニュージーランドの優勝に貢献。
オープニングゲームのイタリア戦で伝説の90m独走トライを挙げたことでも有名。
ラグビー王国NZではその名を知らない人はいない。「JK」の愛称とともに、レジェンドとしてその名をとどろかせている。

ーーカーワン氏と同じポジションである、日本代表のウイングの松島選手と福岡選手についてどう評価しますか?

カーワン氏;
二人とも素晴らしいウイングだと思う。
松島はそれほど身体が大きな選手ではないが、足が速く、とてもタフでボールを奪い、今大会大活躍している。
僕にとっては、今のところ彼がトーナメントの注目選手。南アフリカ戦の活躍も期待している。

カーワン氏;
福岡選手も大変素晴らしい。現代のラグビーはチェンジオフペース(緩急)が重要。
とにかく二人とも俊足だから日本は彼ら2人にボールをまわしたいところ。
2人は南アにとって非常に手強いプレイヤーだ。

松島は現在までに5トライ。今大会のトライ数ランキングでプール戦終了時現在、トップタイにつけている

2006年に日本へ来たカーワン氏は、翌年日本のヘッドコーチ(監督)に就任すると当時の日本の世界ランクを19位から、2011年には11位にまで押し上げた。
そしてエディ・ジョーンズ時代を経て、現在の日本ラグビーの成長は、ジェイミー・ジョセフHCとトニーブラウンコーチ(注1)の2人の存在が大きいと語った。

※(注1)トニー・ブラウン氏
元ニュージーランド代表で05年から10年までは三洋電機(現パナソニック)でプレーした経験を持つ。16年から日本代表コーチとしてジェイミー・ジョセフHCを支える


カーワン氏:
個人的には、現在のジェイミー・ジョセフとトニー・ブラウンは世界でベストコーチの二人だと思う。
ジェイミーのラグビーに関する知識と選手のマネージメント能力は素晴らしく、選手に厳しくするべき時とそうでない時の見極めも心得ている。
そしてトニー・ブラウンは戦術家として優れている

カーワン氏に聞く!「南ア戦、日本は勝てるのか?」

ーー率直に聞きます。.南アフリカに勝てる確率はどれくらいでしょうか?

カーワン氏;
日本が勝てる確率は50%
ここからは負ければ終わりの戦いだから、全チームが同じ条件。これまでの試合は関係ない。他のチームの可能性について聞かれても私はすべて「50-50」と答える。

 
 

ーー勝つために日本チームに必要なことは?

カーワン氏;
これまでと同じゲームプランを維持すること。早いボールさばきと素早いディフェンスラインが必要
南アフリカはスピードを抑えに来る。ボールのスピードを落とし、フィジカルに持ち込んでくる。
だから日本がこれまでのゲームスタイルを維持できたら50%の勝率がある。

ーーどれくらいのスコアの戦いになると予想する?

カーワン氏;
決勝トーナメントはいつも接戦になる。トライチャンスは2~3回に絞られる
お互いに17~18点ぐらいの戦い、接戦になると思う。

ーー日本のキープレーヤーは?

カーワン氏;
HORIE
フォワード陣にとって大変な試合になると思う。南アフリカのフォワード陣は体が大きいので、堀江がスクラムをコントロールする必要がある。スクラム以外でもラインアウト、そして日本代表が自分たちの試合を組み立てられるよう、フィールド全体に目を配る必要があり、そういう点を踏まえ、彼がキーリーダーと見ている。
彼は経験豊富だが、日本フォワード陣にとってタフな戦いになると思う。

 
 

ーーちょっと先走った質問だが、決勝戦はどういう顔合わせになると思う?

カーワン氏;
日本が今週末、また大金星をあげることを期待しています。
僕は、もちろんオールブラックスに決勝進出してほしい。決勝に進んでくれたらそれで満足。
そして日本と対戦できたらうれしい。

最後にこんな質問をぶつけてみた。
「数人の選手が優勝を狙うと言っているが、日本が優勝することなんて夢みたいなことはあるんでしょうか」と。

カーワン氏;
信じることが大事、プレイヤーは信じなきゃダメ。

選手が本気で優勝できると信じていれば、日本の優勝の可能性も決して夢ではないかもしれない…

(聞き手:報道スポーツ部 坂本隆之、プライムオンライン編集部 信原麗)

坂本 隆之
坂本 隆之

1990年入社後、カメラマン・政治部・社会部・スポーツ部・番組プロデューサー・クアラルンプール、ベルリン、イスタンブールの支局勤務を経て現在はマルチメディアニュース制作部長。バルセロナ・長野・シドニー・リオ五輪やフランス、ドイツW杯の取材経験あり。