あなたのせいで眠れない

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると健康を保つためには大人は1日7時間以上の睡眠が必要としていますが、35%は睡眠時間が7時間を切っています。

出典:アメリカ疾病予防管理センター(CDC)
出典:アメリカ疾病予防管理センター(CDC)
この記事の画像(7枚)

運動や食生活ほど睡眠を健康問題として重要視していないからでしょうが、7時間寝ない大人は寝ている人に比べて心臓病や糖尿に肥満、高血圧や鬱などの症状を訴える割合が高いそうです。アルツハイマーの発症率や孤独感も高まるとか。睡眠を軽視している場合じゃないのです。

だけどどんなに睡眠を大切にしようとしても、睡眠妨害されることがあります。それも実に近い関係にある人に、しかも毎日のように。それは自分の隣で寝ている人です。いびき・寝言・歯ぎしり・寝相の悪さ・寝付けなくて夜中にガサゴソ・挙げ句の果ては不眠症、などなど。誰かと一緒に寝ているあなた、こんな睡眠妨害を経験したことはありませんか?

出典:National Sleep Foundation
出典:National Sleep Foundation

睡眠不足と離婚の関係

ピッツバーグ大学のリサーチャーらが10日間かけて行った35組の若いカップルを対象とした調査によると、眠りを妨害された場合、睡眠不足の妻の次の日の機嫌はすこぶる悪いのだそうです。夫を無視したり、批判的になったり、とにかく忍耐力に欠け口喧嘩へと発展して行きます。 「良い妻とはこうあるべき」の呪縛から自分に厳しくして夫からの睡眠妨害をなんとか我慢しようと不満が溜まっていくからでしょう。でも夫が睡眠を妨害された場合は全然気にしていないという結果が出ました。もっともそれは男性特有のそういうことをあまり表現しないことからくるとも調査では言っていますが。

なんと、これは我が家の光景ではないか!というのも夫は気になることがあると全く眠れない人なのです。メラトニンに睡眠アプリ、寝る前の禁iPhoneまでありとあらゆるナチュラル睡眠法を試しても寝付けない。一晩中隣でガサゴソするから私は「あなたのせいで眠れなかった」と不機嫌な朝を迎えることになります。それも週に何度も。反対に私が眠れずにガサゴソして自分が眠れなくなったとしても、夫は平気そうなのです。

睡眠不足と険悪な夫婦関係は同時期におこる、という調査結果もあるようですから、睡眠不足は離婚の原因ともなりうるのです。離婚の理由トップ10にはコミュニケーションの欠如、激しい言い合いが入っています。こうなったら我慢している場合じゃありません。何とかして不機嫌な朝を回避せねば。そこで我が家で実践していることがあります。実はこれがアメリカのカップルの最新トレンドなのです。

夫婦円満の秘密はスリープ離婚

それは寝る時は別々という「スリープ離婚」。2012年にベタースリープカウンシルが行った調査によると25%のカップルが別々の部屋かベッドで寝ているそうです。マットレス会社が行った調査によれば46%が「スリープ離婚したい」と言っています。相手のいびきや寝言を我慢したり、就寝時間を無理に合わせたり、室温で喧嘩したりせずに、ただゆっくりと寝たい人はいっぱいいるのです。

朝の人気ニュース番組でも「どうやってスリープ離婚を切り出すか」のハウツーを紹介しています。 というのも「夫婦たるもの一緒に寝るべき」とどちらか一方が強く信じている場合や自分は悪くないと思っている場合、扱いを間違えればスリープ離婚どころか本物の離婚に発展してしまうかもしれないからでしょう。

そこで紹介しているステップは
①眠れない実情を訴える
②眠れると自分はどれだけ幸せになり相手をさらに愛することができるかを伝える
③一緒に寝ない=愛がなくなったのではないを明確にする。

そして最重要点は「あなたのせいで眠れない」とは決して言わないこと。「私たちがもっと眠れるように」と運命共同体感を出すのがコツだそうです。男性よりも女性から切り出す方が多いようですが、「言ったら悪い」なんて我慢を重ねて「良い妻」を演じ言い争いになったり健康障害が出るよりも、交渉するが勝ちです。

最初は嫌がっていた相手方も、「結果良かった」と思う人が多いのだとか。 表現しないだけで、本当は男性だって一人でゆっくりと寝たかったのかもしれませんよね。

我が家の場合もそうでした。 最初は抵抗していた夫も眠れない時は寝室以外でウロウロするようになりました。そして眠くなったところで寝ているようです。そんな日は朝起きてくるのが遅いのが難点だけど自由気ままに夜を過ごせるから夫はご機嫌だし、マイペースで眠れる私もニコニコです。スリープ離婚はどんなサプリやアプリよりも良質な睡眠と健康、そして夫婦円満を約束してくれます。

【執筆:ボーク重子】

「人生の3分の1を豊かにする“良質な睡眠”」すべての記事を読む
「人生の3分の1を豊かにする“良質な睡眠”」すべての記事を読む
ボーク重子著
ボーク重子著
ボーク重子
ボーク重子

Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表。ICF(国際コーチング連盟)会員ライフコーチ。アートコンサルタント。
福島県生まれ。30歳目前に単独渡英し、美術系の大学院サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートに入学、現代美術史の修士号を取得する。1998年に渡米、結婚し娘を出産する。非認知能力育児に出会い、研究・調査・実践を重ね、自身の育児に活用。娘・スカイが18歳のときに「全米最優秀女子高生」に選ばれる。子育てと同時に自身のライフワークであるアート業界のキャリアも構築、2004年にはアジア現代アートギャラリーをオープン。2006年、アートを通じての社会貢献を評価され「ワシントンの美しい25人」に選ばれた。
現在は、「非認知能力育成のパイオニア」として知られ、140名のBYBS非認知能力育児コーチを抱えるコーチング会社の代表を務め、全米・日本各地で子育てや自分育てに関するコーチングを展開中。大人向けの非認知能力の講座が予約待ち6ヶ月となるなど、好評を博している。著書は『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)、『「非認知能力」の育て方』(小学館)など多数。