学習意欲や発育に悪影響も...子どもの「睡眠障害」に気付いてますか? 対策を聞いた

カテゴリ:国内

  • 大人だけじゃない...子どもにも忍び寄る「睡眠障害」
  • 夜のコンビニはダメ!? 睡眠と生活習慣の意外な相関関係とは?
  • 脳科学者「家庭でのコミュニケーションが鍵」

睡眠は誰にとっても欠かせないものだが、その睡眠で悩む人は後を絶たない。

不眠や過眠といったものから、生活リズムが乱れる「概日リズム睡眠障害」、睡眠中にねぼけ行動をする「睡眠時随伴症」などと内容も幅広く、日常生活に支障が出ることもある。

近ごろはこのような症状を「睡眠障害」と総称するようになったが、大人だけの問題ではないことをご存じだろうか。上諏訪病院(長野県)の亀井雄一医師によると、睡眠障害は子どもでも大人と同じように抱えてしまい、子どもの場合は発育にも悪影響を及ぼす可能性があるというのだ。

睡眠障害を抱えるのは大人だけではない(画像はイメージ)

【睡眠障害が子どもの発育に与える主な悪影響】

・集中力がなくなる
・情緒不安定になる
・多動気味になる
・太り気味になる

そして睡眠障害から子どもを守るには、睡眠時間を確保できているかを観察し、昼間の眠気など変わった様子があれば睡眠障害を疑い、医療機関で受診することが大切とのことだ。

それでは、家庭では子どものどんなところに注目して、どんな行動を取れば良いのだろう。このデータとして参考にしたいのが、大阪・淀川区の取り組みだ。

家庭でのコミュニケーションが睡眠につながる?

淀川区では「ヨドネル」(淀川区+寝る)と銘打ち、「LINE」アカウントやスタンプを活用して早寝を呼びかけたり、睡眠状況をチェックできるシートを公開したりするなどして、地域ぐるみで子どもの睡眠習慣改善に取り組んでいる。

子どもたちが興味を持てるよう、「ヨドネル」の周知にはコミカルなキャラクターを採用

この一環として行われたのが、区内に通う小中学生の睡眠実態調査だ。

2016年6~7月と2017年の6~7月の計2回、小学校4年生から中学校2年生までの約6000人にアンケート調査を行い、睡眠時間と生活習慣、疲れ、学習意欲などとの相関関係を分析した。

その結果、次のような傾向が示されたという。

【睡眠と疲労・学力】
・子どもたちは疲れていて、睡眠時間が短いほど疲れている
・疲労が強いほど注意制御力(物事に注意を向け続ける力)が低い

疲れている子どもほど睡眠時間が短かった

【睡眠を邪魔する行動】
・SNSを利用するほど、睡眠時間が短い
・平日の夜にコンビニを利用するほど、睡眠時間が短い
・テレビや動画視聴の時間が長いほど、睡眠時間が短い
・スマホを長時間利用するほど、睡眠時間が短い

テレビやSNSなどは楽しいものだが...視聴・利用しているほど睡眠時間が短かった

【睡眠と自宅での過ごし方】
・家庭全員で夕食を取る子どもほど、睡眠時間が長い
・家庭でよくほめられる子どもほど、睡眠時間が長い

なんと、家族とコミュニケーションを取るほど睡眠時間が長いという

この調査結果を見ると、睡眠不足は疲労と密接に結び付いているようだ。

そして気になるのは、夜のコンビニ利用がよくなかったり、家庭でのだんらんがあると睡眠時間が長くなっていた点。生活習慣は子どもの睡眠にどう影響するのだろうか。「ヨドネル」を監修した、大阪市立大学の脳科学者・水野敬特任准教授に話を伺った。

スマホのブルーライトは“眠りにくい脳”にしてしまう

水野敬特任准教授

――睡眠環境は子どもにどんな影響を与える?

調査では、子どもたちが疲労を抱える背景に睡眠不足があり、その疲労が学習意欲を低下させることが分かりました。思春期は脳が発達する時期なので、慢性疲労につながる睡眠不足は脳などの発達にも影響を与えると言えます。


――調査では睡眠を邪魔する行動を示されたが、睡眠時間とどう関係している?

例えば、SNSは外部とのコミュニケーションとなるため、意思疎通のすれ違いが起きることもあります。直接顔を合わせれば「そういう意図じゃない」と説明することもできますが、帰宅後のやり取りでトラブルが起きたら、翌日以降に引きずるはずです。そんな状況で不安感が高まると夜に眠れなくなることも考えられるので、睡眠にはよくありません。

スマホの利用時間調査では、1日に「5時間以上」使っている子どももいました。授業中は利用禁止なので、帰宅後から夜間にかけて利用していることが想定できます。スマホの画面からはブルーライトが出ますが、この光を受けると、睡眠を誘導するホルモン「メラトニン」が脳から分泌されにくくなります。“眠りにくい脳”になってしまうのです。


――夜間のコンビニ利用がいけないのはなぜ?

夜間にコンビニを利用するという行動からは、夜に出歩く習慣があり、家でゆっくりする時間が少ないことが想定されます。普通は夜になると眠くなるものですが、コンビニの照明は覚醒作用があり、強い光刺激を与えてしまうため、睡眠時間も短くなっていると考えられます。テレビや動画の光も同じですね。

勉強や部活動...子どもならではのプレッシャーに注意

――家庭でのコミュニケーションが睡眠時間に影響するのは本当?

子どもにも友人関係、勉強、部活動で責任ある立場を任せられるなど、子どもならではのプレッシャーがあります。責任感が強いばかりに「自分がやらなければ」と思い、ある日を境に朝起きれなくなることはあります。不登校の要因ともなるでしょう。

このプレッシャーに負けないためには、子どもの感情の動きを安定させることが大切ですが、そのときに家族のコミュニケーションが重要な役割を果たすのです。学校生活を頑張っていても、自宅ではほっとできるような家族の支えがあれば、子どもがストレスを抱えても緩和できますから。

睡眠不足による注意制御力の低下にも気を付けなければいけない

――親や周囲が子どもを支えるためにできることはある?

何時に寝て起きるという、睡眠・覚醒のリズムを子どもが小さな頃から作ることです。今の家庭は1日の活動時間を増やそうと睡眠時間を削るところがあります。習いごとに通わせる家庭もありますが、睡眠時間を軽視しないようにお願いしたいですね。

寝る前の安心感を与えられる環境も大切です。共働きで忙しい家庭も多いでしょうが、週に数回は家族で過ごす時間を持ってください。子どもは大人のまねをするので、親も夜はスマホを触らず、同じ時間帯に眠ることも必要です。生活リズムが違うと難しいと思いますが、子どもが悩んでいるときには、親が合わせることも必要でしょう。

「SNSよりも家の人と話そうよ」と伝えたい

――逆に子ども本人ができることはある?

自分がどんな状態か、俯瞰して見ることです。自分にはどれくらいの睡眠が必要なのか、何時に寝て起きているかを調べたり、無駄な時間を減らして睡眠時間を増やすような、“睡眠リテラシー”を身に付けるべきですね。学校でも「何時間寝た?」と話せるような、睡眠教育のムーブメントが子どもたちに起きるのが理想です。


――眠らない・眠れない子どもたちに呼びかけたいことは?

睡眠を取ることを大切にして生きてほしいですね。つらいこともあるかもしれませんが、家庭では穏やかな時間を取り、眠る前に安心感を得ることを心がけてください。「SNSよりも家の人と話そうよ」と伝えたいですね。

親御さんたちにも伝えたいことがあります。家庭の力、保護者の力は大きいです。仕事で忙しいかもしれませんが、家庭では子どもとコミュニケーションを取ってください。働き方改革が進められている今がチャンスではないでしょうか。

子どもが安心できるような環境作りが大切という(画像はイメージ)

心理的不安を取り除き、安心感を与えることが子どもの睡眠障害を解決する鍵となるようだ。子どもがいる家庭は定期的に団らんのひとときを作り、「最近眠れている?」などとコミュニケーションをとってはどうだろう。

そして、もし睡眠障害が疑われたなら、医療機関の診察を受ける選択肢があることも覚えておきたい。

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