10月17日 運命のドラフト会議

ドラフト会議をスクリーンで見守る森下(明治大学・10月17日午後5時過ぎ)
ドラフト会議をスクリーンで見守る森下(明治大学・10月17日午後5時過ぎ)
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10月17日の17時過ぎ、明治大学駿河台キャンパスが沸いた。
完成度の高さから“大学ナンバーワン投手”と呼ばれる明治大学の森下暢仁(まさと)が運命のドラフト会議で広島東洋カープから単独1位指名され、プロの扉の前に立った瞬間だった。
千葉ロッテマリーンズが交渉権を獲得した佐々木朗希(大船渡高)、東京ヤクルトスワローズが交渉権を獲得した奥川恭伸(星稜高)と並び「ビッグ3」とも称される2019年のドラフトの超目玉だ。

直後の会見での第一声は「幸せな気持ち。本当に1位で指名されてしまったんだな。これからしっかりと活躍していかなければいけないという自覚もある。台風で被害に遭った方に勇気を与えるプレーがしたい」と喜びを口にした。

 
 

高校時代から注目されるも大学進学

大分商業で1年生の夏に登板こそ無かったが甲子園の土を踏んだ森下。3年生最後の夏は大分大会決勝で敗れて甲子園出場はならなかったが、侍ジャパンU-18代表に選ばれた。

スカウトからも高い評価を受け、「ドラフト指名確実」と言われていた森下だが、「高校からプロに行くのは不安が大きかった。即戦力でプロ入りを目指したい」と、プロ志望届は提出せず、大学進学を決めた。

6月の全日本大学野球選手権で力投する森下
6月の全日本大学野球選手権で力投する森下

2年生の時から大学日本代表に選ばれ、3年生の時には自己最速の154キロをマーク。再びスカウトの視線に止まる。
「大学ナンバーワンの“即戦力”。ストレートのスピード、変化球のキレと精度がいい」(在京球団のスカウト)

主将兼エースとして臨んだ4年生春の東京六大学リーグ戦ではチームを5季ぶりの優勝に導いた。4勝1敗、防御率2.03の成績でMVP、ベストナインも受賞した。6月の全日本大学選手権では東洋大戦を完封、佛教大戦を1失点完投で胴上げ投手に。明治大を38年ぶりの優勝に導き、自身もMVPに輝いた。3年連続の大学日本代表にも選ばれ、7月の日米野球では2勝を挙げMVPを獲得した。

全日本大学選手権で38年ぶりの優勝に導いた森下
全日本大学選手権で38年ぶりの優勝に導いた森下

森下のすごさとは

「ストレートの球の質、守備、けん制の全てが4年間で成長できたと思う。春季リーグ初戦の立教大学戦(4月20日)で速球を痛打され、0-4の完封負けを喫した。あの時に緩急を使わなければ勝てない、変化球もしっかり投げ切ることが大事だと痛感した」と自身の成長のきっかけを語った森下。

森下の最大の武器は最速154キロのストレートだ。また110キロ前後で大きく縦に割れるブレーキの効いたカーブは、カウントを稼ぐボールにも決め球にも使えるボールで、ストレートの速い森下にとって緩急をつけるうえで効果的なボールとなった。

会見に同席した善波達也監督も「1試合ごとに成長していった。国際大会も経験する中でカーブやチェンジアップの精度が上がっていったと思う。春季リーグ初戦の立教大学戦で負けた時にロッカールームで涙ながらにチームメートに“明日勝って3戦目を投げさせてくれ”と頼んでいたのが印象的。成長を見たような気がします」と投球のみならず、4年間の内面の成長を認めた。

現在は秋季リーグ戦も佳境に入っており、9月28日の早稲田戦では完封勝利を飾る。

9月30日の早稲田戦では9回に勝ち越しを許したところで降板。それでもベンチに戻ると後続投手を応援するなど、いつ何時でも主将としての振る舞いができる、4年間を経てそんな人間に成長した。

佐々岡真司新監督が背番号18を用意!?

すぐさま指名あいさつに訪れた広島・佐々岡真司新監督(10月17日)
すぐさま指名あいさつに訪れた広島・佐々岡真司新監督(10月17日)

19時半、交渉権を得た佐々岡真司新監督がすぐさまあいさつに出向いた。

「数日前に白紙を引いた夢を見た」と語った新監督は「クジと思っていたが、単独で獲れてホッとした。ガッツポーズだった」と話し、満面の笑みを浮かべた。ドラフト会場の入場証を手渡すと、真っ赤なカープの帽子も被せ「いい男だな。合ってる」とご満悦だった。

「次のエース」とほれこむ新監督はかつて自身や前田健太投手(現ロサンゼルス・ドジャース)も着けていた背番号18を用意する考えも示し、「まずは先発ローテーションに入って欲しい」と大きな期待を寄せた。

「佐々岡監督は1年目から活躍した大投手。自分も負けないように頑張りたい。1年目はローテーションに入ることと新人王を目指して頑張りたい」と決意をにじませた森下。
また、座右の銘を問われると“未来は可能性”と答えた。「これから厳しいこともあろうが、可能性を信じて頑張っていきたい」

“大学ナンバーワン投手”と呼ばれる実力とブレることのない強い気持ちを携え、森下はプロの世界へ高く舞う。

チームメートから胴上げされる森下(明治大学駿河台キャンパス・10月17日)
チームメートから胴上げされる森下(明治大学駿河台キャンパス・10月17日)

(フジテレビ 加藤忍)

加藤忍
加藤忍

早稲田大学卒業。フジテレビ入社。スポーツ局すぽると!ロッテ担当、ヤクルト野球中継などを経て現在は報道局兼スポーツ局。