台風15号直撃から一ヶ月…なぜ東京電力の復旧見通しは二転三転したのか?

カテゴリ:国内

  • 東電の復旧見通しは二転三転…「過去の経験則に基づいてしまった」
  • 「社内システムとマニュアルの課題浮き彫りに」専門家指摘
  • 「一番の問題は状況を的確に把握していないのに見通しを出したこと」

“最大級”の台風が残した爪痕と被害

9月9日に関東地方を襲った台風15号をめぐり、その初動対応について検証が急がれている。

関東地方を襲った台風としては最大級だった。
住宅被害は1都7県で計4万511棟にのぼり(総務省消防庁)、千葉県で観測された最大瞬間風速は57.5メートルを観測、損壊した電柱はおよそ2000本にのぼるとみられている(経産省)。

9月9日午前7:50には、関東地方で、最大約93万軒で停電となった。これは2011年の東日本大震災以降では最多の軒数になる。
発災から1ヶ月が経ついまも、いまだに50軒近い住宅で停電が続いていて、復旧の見通しもたたないままだ。

1か月が経過してもいまだブルーシートが目立つ被災地

10月3日に、官邸では内閣官房副長官をトップとする台風15号の検証チームを立ち上げ、年内の報告書作成に向けて動き始めた。
① 長期停電の原因、被害状況の把握、復旧見通しの発表の仕方
② 通信障害の原因
③ 国、地方自治体の初動対応
…を主なテーマとして検証を進めていくとしている。

同日に経済産業省でも検証会合が開かれ、この政府の検証チームと連携しながら、10月中には中間のとりまとめをする予定だ。上記の3つのテーマと併せて、今後の対策として、ドローンを使った現場の巡視や電柱の地中化についても検討を行う。

二転三転した東京電力の復旧見通し

台風15号が千葉県を直撃した翌日、東京電力は会見を開き「あした(9月11日)中の全面復旧を目指す」と発言した。その翌日には「あさって(9月13日)以降」。そして9月13日には「最長で(9月)27日の全面復旧」…。
このズルズルと延びていく復旧見通しに苛立ちを隠せなかったのは、被災した人たちだった。

「なぜ正確な復旧見通しがにたてられなかったのか?」

東京電力が開いた会見でも、記者からの質問が相次いだ。
13日の会見で、東京電力担当者は「倒木などがひどく、現場をなかなか見ることができない状況の中で、経験則で判断してしまった」と答えている。

電力システムが専門の、東京電機大学・加藤政一教授も「今回の東電の復旧対応の一番の問題は、状況を的確に把握していないのに見通しを出したこと。これでたくさんの人が振り回されてしまった」と指摘する。

なぜ経験則のみに頼らざるを得ない状況で、見通しを発信してしまったのか?

なぜ被害の情報収集に時間がかかったのか

東京電力は昨年の9月から、スマートフォンを使った社内情報共有システムの運用を開始している。社員がスマホを1台ずつ持ち歩き、電話によるやりとりのほか、今回のような現場巡視をした際は写真で撮り、瞬時にシステムで共有できるようになっていた。
しかし加藤教授は、「広範囲になった場合、この社内の情報共有システムで、的確に迅速に情報集められることができたのか」と疑問を呈す。

今回の停電では、電波の基地局も使えなくなってしまったエリアが多かった。そのため、このスマホによるやりとりが想定されていたより機能しなかった可能性があることを東京電力も認めている。
また、検証段階であるとしつつも、当時「何人」が「どこの現場」で「どういう作業」をしていたかの把握が、電波の問題でできなかった状況もあり得たという。

「台風の場合は配電線が切れたりするので、実際に現地を見ないとしょうがない。東電として、どの時点でようやく全体の被害状況を把握することができたのか検証する必要がある」と加藤教授は話す。

台風15号の影響で千葉県内で2000本の電柱が倒れたとみられる

実際、今回の台風15号では、倒木などにより現場への立ち入りが困難な場所が多かった。
電線についている東京電力の停電情報システムでは、通電状況を認識できる範囲には限界がある。今回の停電のような、高圧の電線以外の低圧線や、引き込み線に異常がある場合、正確に把握することができなかった。
東京電力は、「現場での巡視ではじめて被害状況が分かったという事例が相次いだことが、復旧見通しが何度も変更になった原因」とも説明している。

東電の社内マニュアルは山間部の台風被害を想定せず?

また、東京電力によると、社内のマニュアルでは、大規模な災害により発生した停電の現場巡視は「切れた電線による感電事故を防ぐための巡視」が基本となっている。東京電力では、マニュアルに従って、都市部など密集地域から巡視をしていく。
この点についても加藤教授は次のように指摘する。
「感電しないように、というのは基本中の基本だが、地震を想定しているもの。今回のような台風は念頭に置いてなかったと思う。道路が通れなくなった場合、東電がどう対応すべきかマニュアル化すべきだったのではないか。これだけの台風被害で、東電は今後の対策を作る必要がある。」
つまり、東京電力が今回のような山間部での台風被害を想定していなかったことで、被害の全容の把握ができないまま、いったん情報がまとめられてしまった可能性がある。

東京電力だけでなく、自治体、政府、自衛隊などの対応や互いの連携、意思統一のあり方についても検証が進められている。
10月12日頃には、また台風19号が関東地方に上陸する恐れがあり、今後の災害への対策が急がれる。

(フジテレビ報道局 経済部記者 井出光)

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