安倍首相の国会演説に「韓国の段落」が復活…でも理由は抗議のため!

カテゴリ:国内

  • 臨時国会冒頭での安倍首相演説で韓国の段落復活
  • 趣旨は“重要な隣国なんだから韓国は国と国の約束を守れ!”
  • 韓国をめぐる表現の変遷に見る、日韓関係の泥沼化

安倍首相の所信表明演説で注目された韓国への言及

10月4日、日本国憲法下で200回目の国会となる臨時国会が召集され、安倍首相が衆参両院で所信表明演説を行った。

この中で安倍首相は、今国会で憲法改正の議論を進めるよう与野党に呼びかけたほか、少子高齢化対策や、全世代型社会保障の実現に意欲を示した。一方、外交面では韓国への言及がどうなるかが注目点の1つとなった。

韓国への言及は1行のみだが、単独の段落が復活

安倍首相はこの演説の外交に関するパートの中で、まず日米同盟を基軸とし英仏豪印などとも協力した開かれたインド太平洋構想に触れた。続いて北朝鮮、中国、ロシアそれぞれとの関係に言及し、その後に韓国について次のように述べた。

韓国は重要な隣国であります。国際法に基づき、国と国との約束を遵守することを求めたいと思います

言及は以上だ。首相官邸作成の原稿の書式でちょうど1行、句読点を入れて47文字だった。北朝鮮、中国、ロシアに関する部分が3行だったのと比べると、極めてあっさりした言及ということになる。

一方で、安倍首相の国会演説で、韓国について単独の段落が復活するのは久々なのだ。

過去の所信表明演説での言及と比較すると…

では、去年や一昨年はどう韓国に言及していたか。2018年と2017年の所信表明演説での韓国についての言及は以下の通りだ。

2018年 所信表明演説
日米、日米韓の結束の下、国際社会と連携しながら、朝鮮半島の完全な非核化を目指します

2017年 所信表明演説
日中韓サミットを早期に開催し、三か国の連携を更に深めてまいります

このように、日米韓あるいは日中韓という多国間の枠組みの中でのみ韓国に言及してきたのだ。しかし、さらに前年の2016年には、韓国単独の段落を設けて次のように言及していた。

2016年 所信表明演説
韓国は、戦略的利益を共有する最も重要な隣国であり、未来志向、相互の信頼の下に、新しい時代の協力関係を深化させてまいります

この演説以来3年ぶりとなる、所信表明での韓国単独の段落復活。しかし、その中身が一変していることは言うまでもない。

3年前は「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」だったのが、ただの「重要な隣国」に格下げされた。その後に続く言葉も3年前の「協力」ではなく、いわゆる徴用工問題を念頭に、「国と国との約束を遵守」つまり日韓請求権協定を守り、日本企業への賠償を命じた判決を巡る政府の対応を見直すよう求める、いわば“抗議”となった。

つまり、今回の韓国単独の段落は、安倍政権が“韓国スルー”の方針を取る中とはいえ、「言うべきことは言っておく」ために復活させたものということになる。

徴用工問題などを端に発した韓国のデモ

施政方針演説でも表現の後退は明確。来年の国会でも“抗議”か

ちなみに「所信表明演説」とは別に、年始めの通常国会冒頭に行う様々な政策を網羅した演説「施政方針演説」でも同様のことが起きている。

かつて、例えば2014年の安倍首相の施政方針演説では「韓国は、基本的な価値や利益を共有する最も重要な隣国です。日韓の良好な関係は、両国のみならず、東アジアの平和と繁栄にとって不可欠であり、大局的な観点から協力関係の構築に努めてまいります」と友好ムードだった。

しかし、文在寅政権の成立後の2018年には「韓国の文在寅大統領とは、これまでの両国間の国際約束、相互の信頼の積み重ねの上に、未来志向で、新たな時代の協力関係を深化させてまいります」とやや淡泊な表現になった。

そして関係がさらに悪化した今年2019年の施政方針演説では、単独の段落が消え、北朝鮮をめぐる段落の中で「米国や韓国をはじめ国際社会と緊密に連携してまいります」と国名が登場するだけという“韓国スルー”に近い内容となった。

となると、来年の施政方針演説でも、それまでに韓国が徴用工問題での対応を変更するなどしない限り、今年の施政方針演説のような韓国スルーではなく、今回の所信表明演説のように、単独の段落で抗議の文言を盛り込むようになる可能性が高いかもしれない。

一方で北朝鮮について今回の演説で安倍首相は、このところミサイル発射を続けているにもかかわらず、「現下の北朝鮮情勢については米国と緊密に連携し、国際社会と協力しながら、国民の安全確保に万全を期します」と批判を抑制した上で、拉致問題解決に向け金正恩委員長と向き合う決意を改めて示した。

かつて厳しく批判していた北朝鮮への批判を抑える一方、韓国については厳しい言及となった演説の変化は、トランプ政権の影響もある中、日本・韓国・北朝鮮をめぐる関係が、いかに激しく変化しているかを感じさせる。そして同時に、日本と韓国との関係悪化の出口の見えなさを改めて象徴する現象となった。

(フジテレビ政治部デスク 高田圭太)