「イマドキの若手社員」というワードを聞いて、あなたはどんなイメージを抱くだろうか。

そんなイメージ自体がステレオタイプだ!というお叱りも飛んできそうだが、やはり若い世代には「我が道を行ってるなあ…」という感想を抱いている上司・先輩世代も多いのでは。
しかし、ついつい「最近の若い者は…」とため息をこぼせば、周りからは白い目…パワハラにも気をつけなければいけないこのご時世、上司側もなかなかやりにくい雰囲気があるはずだ。

そんな悩める上司・先輩世代へのヒントになるかもしれない調査結果が、株式会社日本能率協会マネジメントセンターから発表された。

この調査は、2018~19年に入社した新入社員404名、新入社員の育成に関わる上司・先輩社員621名を対象にしたもの(全国インターネット調査、2019年6月調べ)。
その中から、データをいくつか見ていきたい。

“イマドキ新入社員”は「仕事環境の心地よさ」を重視

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まず、「働く価値観」についての調査。
若手社員は日々、何を考えて仕事に臨んでいるのか?「自分らしい生活を送る」「社会に認めてもらう」などの様々な条件の中から「仕事に求めていること」の上位3つを聞いてみた。


【新入社員が仕事に求めること】
・仕事環境の心地よさ(57.6%)
・お金を多く稼ぎ、よい生活を送る(49.2%)
・自分の能力が発揮できる(39.6%)

【上司・先輩世代が仕事に求めること】
・自分の能力が発揮できる(55.2%)
・お金を多く稼ぎ、よい生活を送る(50.7%)
・自分らしい生活を送る(34.2%)


これによると、新入社員が最も重要視しているのは「仕事環境の心地よさ」
一方、上司・先輩世代が最も重視しているのは「自分の能力が発揮できる」こと。

「仕事環境の心地よさ」を重視するのは新入社員の半数以上なのに対し、上司・先輩世代ではわずか3割ほど。
上司・先輩世代が重視する「自分の能力が発揮できる」ことは、新入社員も3番目に大事にしているという結果から決して軽視しているわけではなさそうだが、上司・先輩世代とは15%ほどの開きがある。

また「業務時間外についてどのような考えを持っているか?」という質問には、2017年からの3年連続で約7割の新入社員が「プライベートな時間なので、会社からあまり関与されたくない」と回答。

さらに、「自分自身が成長すること」について、「一時的に業務の負荷や労働時間が増えても挑戦したい」を選択した新入社員は45.8%と半数以下だったのに対し、上司・先輩社員は61.4%。

また、「仕事で失敗したくない」ということに上司・先輩世代は65.7%が「そう思う」と回答したのに対し、新入社員は82.3%が「そう思う」と回答している。


この結果だけを見ると、上司・先輩世代は「やる気がないのだろうか…」とやきもきしてしまうだろう。
しかし、それを否定する調査結果も出ている。

半数以上が「責任ある大きな仕事を任せてほしい」

「仕事を一人で担当していけるようになったらどのような仕事を任せてほしいか」という質問には、「失敗したくないので責任ある大きな仕事は任されたくない(47.8%)」よりも「やりがいを得るために責任ある大きな仕事を任せてほしい(52.2%)」と答えた新入社員が多いという結果が。
2017、2018年の調査結果と比べて、わずかではあるものの「責任ある仕事がしたい」という積極的な新入社員が増えているのだ。

また「失敗すること」についても、3年連続で「失敗から学ぶことは多いので、恐れずに取り組むことが大切」と答える若手社員が7割超と、そのチャレンジ精神を見せている。

今回の調査結果を見ていくと、新入社員には職場に「居心地の良さ」や「無理のない範囲での業務」を望む安定志向な面と、「責任ある仕事がしたい」というとても積極的な面、二つの顔があることが見えてきた。

また、新入社員たちへの「今、人生が充実しているか」という質問には52.7%が「はい」と答えるなど、社会人生活に満足している実感はあるものの、実に55.0%が「人生100年時代と聞いて、自分の将来に不安を感じる」と回答し、将来については上司・先輩世代よりも強く不安を感じながら過ごしていることもわかった。


さて、ここまでの調査結果を見た上司・先輩世代の皆さんはどう感じただろうか?
「失敗から学ぶことがある」と思う一方で、実際に仕事で失敗することを恐れている、という複雑な心境も垣間見える新入社員たちとどのように接し、どう育てていくのがいいのだろうか?
調査を実施した、日本能率協会マネジメントセンターにお話を伺った。

新入社員には「ゴールを明確に」

――若手社員と接する際、理解しておきたいポイントは?

ポイントとして、若手社員は他の世代(バブル世代、氷河期世代など)に比べ、「働く環境の心地よさ」「プライベートの時間」「自分らしさ」を大切にしている傾向がみられます。指導者が新入社員時代に経験した成功体験や上司・先輩の言動が必ずしも適用できる訳でないという前提に立って新人と向き合うことをお奨めします。また、新人の働く価値観も弊社調査では「二極化傾向」が進んでいるため、関わる新人ひとりひとりの個性に寄り添うことが大切と考えています。


――上司・先輩がしてはいけない「NGアドバイス」は?

マッチしない、NGなアドバイスは「あいまい」「決めつけ」「押し付け」などです。

【あいまい】
「とりあえず、やってみようか」「まずは自分で考えてみて」「わからないことがあれば教えるから」 など。

【決めつけ】
「今の若い子は○○○なんでしょ」何でもスマホで済ます、褒められたい、とりあえず「いいね」ボタンを押す、本を読まない、ゆとり世代、など。

【押し付け】
「電話はすべて新入社員が取るものだ」「私が新入社員の頃はこうやって育ってきた」「私が新入社員の頃は言われたことはまずやってきた」「仕事は成果を出して一人前だ」「人の役に立つことができなければ駄目だ」など。 ※ここでは「仕事の指示」だけでなく「考え方」も押し付けと捉えています。


また、目的や意図を伝えないアドバイスはマイナスになります。その意味では「一度失敗すると覚える」というアドバイスはできる限り避けたいです。
ただし、新人も「失敗しつつ成長すること」自体はマイナスにはならないことは調査結果で明らかになっており、7割以上の方が、失敗から学ぶことを肯定的にとらえている結果となりました。一方、指導育成に対し、新入社員は、取り組む意図をきちんと説明してもらうこと、丁寧な指導をしてもらうことを期待する姿がみられました。

その意味で、期待と目的を伝えることで新人も十分活動ができます。大切なのは期待や目的を伝えた後に最終結果まで放任せず、進捗確認などを通じて悩みなどを共有する関わりやフォローアップをすることと考えます。

万全なバックアップが新入社員の安心につながる(イメージ)
万全なバックアップが新入社員の安心につながる(イメージ)

――反対に、新入社員が知っておくべき上司・先輩世代との接し方は?

新入社員と上司・先輩世代とでは育ってきた時代環境により労働価値観などが大きく異なります。「違い」は「間違い」ではないため、新人側からも上司・先輩がどのような思いで仕事をしているかを理解しようとする姿勢が必要です(もちろん、上司・先輩側がしっかり働きかけをすることが前提ですが)。

仕事の取り組み方としては、新入社員研修で学ぶような仕事の基本要素を「知っている」から「している」レベルまで引き上げることです。調査の中で「新入社員へ期待すること・できていないこと」の質問について、体調管理や5S、報連相、社会のルールや人との約束を守ることなどの基本的な行動ほど、上司・先輩は評価していない(若手社員が思っているほどできていない)状態でした。

時間が経つにつれ、「時間管理」や「やり抜く」など高い要求が求められ始めてそちらに意識が向きがちですが、まずは基本行動を大切にすること意識し、場合によっては自ら周囲へフィードバックを求めていくことが必要と考えます。



日本能率協会マネジメントセンターによると、新入社員への接し方で大切なのは「指導者自身が通ってきた指導法や成功経験に頼らず、ひとりひとりの個性を見て、期待と目的を明確に伝えること」

「今の若い子は…」といった決めつけをして新入社員を見ることや「私が新入社員の頃はこうしていた」といったアドバイス、また、曖昧な「とりあえずやってみて」などという指示もNG。
新入社員が抱えている「失敗から学ぶことはあるけれど、失敗はしたくない…」という複雑な心境は、明確な指示がないことで起きてしまう無意味な失敗を避けたい、という気持ちから生まれているのだろう。

日本能率協会マネジメントセンターが提案しているのは「ゴールに導くための仕組みを提供する」こと。
万全なフォロー態勢を敷いた上で「入社後のありたい姿」「具体的な仕事のイメージ」の意識づけをすることで成長意欲が高まり、はじめて新入社員の持つ積極的な面が活かせるのだ。

意外と考えをまとめるときは“アナログ派”

そんな新入社員だが、意外なデータがもうひとつある。
新入社員の67.3%が「情報収集の大半がスマートフォンやパソコンなどのデジタル媒体経由」とした一方で、「考えをまとめたり深く物事を考えるとき」は半数以上となる62.9%が「ノートに手書きする」と答えたのだ。

対して、手書きすると答えた上司・先輩世代は45.6%。
実は、デジタル世代のはずの新入社員の方が、上司たちよりもアナログな面がある、という結果が出た。これについては、情報収集はデジタル、考えをまとめるのはアナログと意識的に使い分けているのではないかと分析している。

そして、この意外にも思えるアナログな一面は、指導の面でも生かすことができると指摘する。


――若手社員のアナログな面はどう活かせる?


「経験から学ぶ力」や「考える力」の強化に活かすことができます。
本調査のまとめでも、継続的な成長のためには「リフレクション(振り返り)」が大切と伝えています。この振り返りを充実させるポイントは、行動や結果の事実や感情を言語化・可視化することです。

・書くことで、理解度がわかる、考えが整理される、ヌケモレがわかる
・具体的に書くことで、すぐに行動に移せるレベルまで考えが及ぶ
・行動レベルまで具体化されると、指導のバラツキも出にくい


などの効果があります。
指導者側は、上記のようなメリットを改めて理解し、若手社員の成長支援に向き合っていただきたいと思います。



今回の調査結果を通して見えてきた、繊細なイマドキの若手社員心。
日本能率協会マネジメントセンターでは、こうした若手社員に対する理解度や適切な対応をチェックできるはたらく若者検定というサイトを9月24日に開設した。
「イマドキの若者は…」とこぼす前に、一度自分が若手社員にマッチした環境を作れているか、チェックしてみてほしい。


(画像出典:株式会社日本能率協会マネジメントセンター『イマドキ若手社員の仕事に対する意識調査2019』※無断転載禁止)

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。