東京出身の若者が農家を目指す!
トマトの収穫に精を出す湯本翔大さん。東京出身の19歳だ。
湯本翔大さん:
これぐらいの量を作業するとなると収穫するまでは大変だった。やっと取れてきたなと
1人で本格的にトマトを栽培したのは今年がはじめて。来年春には農家として独立できるよう、経験を積んでいる真っ最中だ。
県農業大学校・松代キャンパス。長野県内外から集まった70人以上が専門的な農業技術などを学んでいる。
湯本さんはその「実践経営者コース」の2年生。すぐに就農できるよう実践重視のプログラムを受けている。
午前6時、湯本さんが向かったのは長野市松代の清野地区。ここで「生産」から「販売」まで実践的な「模擬実習」をしている。
湯本翔大さん:
実践ということで畑に出て自分で作って販売も経験できて、経営についても幅広く勉強できるんですごくいいなと思った
両親が会社員の家庭で育った湯本さん。農業に興味をもったきっかけは、中学生の時の体験学習だったという。その後、都内の農業高校に進学。農家になりたいという気持ちが強まり、父親が松本市出身ということで県農業大学校に入った。
湯本翔大さん:
(農業は)奥深いなと思って。品種もいろいろ調べるとあって面白い。自分で生産して売っていく農家がいいなと。両親は「行ってこい」とポジティブに送り出してくれて感謝している
湯本さんが志しているのはトマト農家。
湯本翔大さん:
トマトは手入れをしないと、実もつかない。根もどんどん伸びてきてうまく育てられない。そこが逆に自分にとって面白いなと思って
地元農家 関川晃さん:
春にトマト作って、抑制(栽培)はキュウリ、キュウリもトマトも値段が上がる。そうすると、経営的にも楽になる
周りの人に支えられて…
湯本さんがトマト栽培の「師」と仰ぐ地元の農家・関川晃さん。去年、100日間に渡り、栽培の基礎や農業経営のノウハウまで学んだ。
地元農家 関川晃さん:
都会育ちなので、こんな田舎で大丈夫かなと思ったんですが、非常にまじめで、なんでも吸収していく意欲があって、のみこみが早くて手が早くて農家に向いているなと思った
湯本翔大さん:
朝ご飯、昼ご飯も出してもらって、夕方も5時半ごろまで生活の中に入り込む、そうしているうちに栽培以外のこと、農家(の生活)も見せてもらったので、将来的にも自分のためというか勉強になった
今井慶一さんも湯本さんをサポートする地域住民のひとりだ。
今井慶一さん:
はじめからやるんだから大変
卒業後も清野地区に残って農家としてやっていけるよう、使用していない農業用ハウスを無償で貸し出した。
湯本翔大さん:
(農業)法人に入ってから独立を考えていたので、今井さんが貸してくれなかったら独立というのはなかったので感謝もしているし、うれしい
今井さんは若者の挑戦をうれしく思う反面、今後のことがやはり心配…
今井慶一さん:
いいことだけど、できるかできないかだ。心配だな
湯本翔大さん:
それしかないというか、そのために来た感じなので、やっていくしかない
農業大学校への進学に賛成していた両親も「独立は早すぎる」と懸念していたという。
湯本翔大さん:
最初は(農業)法人に入ればと言っていたが、関川さんを紹介して、農業で生活しているというのを見てもらって、そこで、いろんな勉強をさせてもらっている話をして、やっと自分の将来が具体的に決まっているんだなと、わかってもらって
若者らしい一面も
朝から夕方まで農業漬けの生活。ちょっと一息つけるのが寮での生活。
19歳らしく「おしゃれ」にも気を使っている。今は革靴がお気に入りだ。
湯本翔大さん:
革の素材がすごく良くて、使い込めば使いこむほど良くなっていくというか、そういうのが好きですね
「おしゃれ」好きな今どきの若者。でも、頭の中は「就農」のことでいっぱい。寝る前には「経営」の授業のレジュメに目を通している。
いよいよ出荷の日
育てたトマトの出荷の日を迎えた。傷の有無や大きさを確認し丁寧に箱や袋に詰めて、まずJAの集荷場へ。
続いて向かったのは小売店。湯本さん自ら交渉して開拓した取引先だ。
グリーンファーム 坂口大さん:
販売という形になると、まだまだなので袋の入れ方にしろ、商品の見せ方にしろ随時、アドバイスさせてもらっている
湯本翔大さん:
教えてもらって、隙間がなくかっちりはいるようになって、お客さんに見てもらうときに生産者はしっかりしているなと思ってもらえると
販売にも気を配れるようになり、今では湯本さんのトマトを目当てに買いに来る客もできたという。
就農に向け「実践」を学んできた1年半。実は失敗も重ねてきた。
湯本翔大さん:
肥料を与えすぎて、茎が太くなっちゃって、最初のころに歯がこれぐらいまで生い茂って、作業が滞った
手入れが行き届かず、葉が生い茂ってしまい、この時期10箱ほど出荷する予定だったが、かなり少なくなってしまった。農業の厳しさを痛感している。
湯本翔大さん:
できれば避けたかった。ここで経験して分かった。失敗の大変さというか、これを来年やったらアウトなんで
それでも湯本さんには心強い味方がいる。卒業後、就農する予定の清野地区は高齢化が進み、農家も後継者不足。地域ぐるみで若者の挑戦をサポートしようとしている。
地元農家 関川晃さん:
地域全体で支える環境があるので、湯本くんもやりやすくなると思う。若い発想で、今までの固定概念はやぶってもらい、新しい農業を進めて清野地区、長野県の農業を引っ張っていってもらいたい
東京から長野へ…地域住民に支えられ、夢に向かって一歩を踏み出した湯本さん。
来年春からが本当の挑戦だ。
湯本翔大さん:
すぐに恩返しはできないと思いますが、5年後、10年後とか先に、ここで続けていくことが恩返しになるんじゃないかと思って。自分でやってやろうという気持ちと、もっと大きくしていける自信はあります
(長野放送)