校門前で副校長が女子生徒の顔をゴシゴシ

この記事の画像(5枚)

「ほら、そこ!目の周りが赤いぞ。今年の流行だな」
中国が新学期を迎えた9月の朝、貴州省の高校の校門前で学校のスタッフが生徒をチェックしていた。男性副校長がバケツに水を入れて待っており、登校してきた女子生徒を呼び、濡らしたタオルで顔を拭き始めた。副校長はその後もタオルを洗って絞り、時には笑いながら並ぶ女子生徒の顔を拭っていった。副校長は生徒の化粧を無理矢理拭き取っていたのだ。化粧禁止の指導を生徒達が守らないため、やむなく初めてこのような対応に出たという。

現地メディアの取材に対し学校側は、「一部の生徒が化粧をするようになっています。状況は深刻です。少しやり過ぎだと思いますが、私たちは子供に責任を負っています。今は生徒も理解するようになり、状況は改善しています」と主張した。

背景に『留守児童』

ただ背景として、「外部からは分からないと思いますが、経済が落ち込み、生徒の80~90%は親が出稼ぎに行っている『留守児童』です。親がそばで教育する機会が少なく子供の価値観が偏ります。他の生徒を巻き込む状況もあります」と、家庭環境による悪影響を指摘した。

中国では、内陸部の農村などは仕事がなく、上海など沿海部の大都市に出稼ぎに行く親が多い。両親とも出稼ぎに出て祖父母などと暮らす子供は『留守児童』と呼ばれる。親とは年に数回しか合わない子供も多く、教育面や精神面で様々な問題が起きている。

ネット上には「不衛生だ」「これが教師か?生徒への最低限の尊重がない」「わいせつ行為だ」と批判がある一方で、「次は化粧落とし液を使おう」「学校が責任を負うのはその通り。この年代は注意しても聞かないから有効なやり方だ」「全国の学校に広めよう」と賛同する声もある。

スマホ見つけたら即破壊~生徒に金属探知機

山西省のある有名高校では、新学期の生徒が入り口で先生による“安全検査”を受けることに。金属探知機で持ち物をチェックされ、スマホが見つかると、即、破壊されるか、水を張ったバケツに放り込まれるという。服装も“変わったもの”はダメ、髪の毛も「後ろ髪は21センチを超えてはいけない」と厳しくチェックされた。この日は2台のスマホが壊され200人ほどの女子生徒が髪を切るよう“勧め”られたという。

学校は「スマホを壊すのが目的ではなく、持ち込みは禁止だと示すためです。髪の毛は長いと手間がかかるし、勉強に集中させるためです」と説明している。

天然パーマだと証明せよと学校に言われ・・・(ウエイボより)
天然パーマだと証明せよと学校に言われ・・・(ウエイボより)

このほか福建省アモイ市の専門学校では、パーマや髪染めを禁止する学校が、天然パーマの女子生徒に“天然であるという医療機関の証明書”を提出するか、髪をストレートにするか、と求めたケースもあった。医療機関ではそんな検査や証明が出来ず、女子生徒は美容関係の団体から発行してもらい、提出したという。

メディアで問題が報じられると、「理髪店に聞けば天然パーマだと分かる」「ストレートパーマあてるのは、パーマだ」「まず自分たちが学校だと証明しろ」などと批判が起きた。

すると学校側は一転、現地メディアに対し「天然パーマや薄い色の髪は自然な生理現象で、親が説明するか子供の頃の写真を提出すれば良い」と見解を変えた。

「この人は天然パーマだと証明します」(ウエイボより)
「この人は天然パーマだと証明します」(ウエイボより)

日本でもよく見られたびっくり校則や様々な学校の“取り締まり”だが、中国では時に想像を超えるものが登場する。学校としては「良かれと思って」やっているのかもしれないが、どこか感覚がずれていると感じることは少なくない。ネットには「出発点は良いのだがやり方は間違っている」という声が見られ、よく言えば「生徒を思う熱心さの空回り」、悪く言えば「学校・教師ファーストの発想」で動いているのかなとも感じる。とりあえずやってみてダメなら(批判されたら)考えよう、という中国的な発想があるのかもしれないが・・・・。

【執筆:FNN上海支局 城戸隆宏】

「中国トンデモ事件簿」すべての記事を読む
「中国トンデモ事件簿」すべての記事を読む
城戸隆宏
城戸隆宏

FNN上海支局長