「犬に懐かれるのは孤独な人間」って本当!? 話題のツイートを専門家に聞いてみた

カテゴリ:国内

  • 「犬は孤独な人間を見つけると心配してかまいに来る」という投稿が話題
  • 「鼻歌を歌う人」より「泣く人」に近づくという実験結果も
  • 専門家「最近では、人と犬の関係は母子関係に近いと言われている」

犬は孤独な人間を心配してかまいに来る!?

人間のパートナーとして、いまや欠かすことのできない存在となった犬。

これまでも編集部では、足をピーンとして仰向けでお腹を出した状態で寝たり、海岸に打ち上げられたペットボトルを拾って掃除をしたりと様々な顔を見せ、我々の心の支えになってくれる犬を紹介してきた。
(参考記事:お腹まる見えで足がピーン! “仰向け”で寝る無防備な子犬が可愛いすぎる)(拾ったペットボトルは3000本超…高知の海岸でプラごみ“お掃除犬”が活躍中!)

そんな犬に関するある投稿がいま話題になっている。



よく犬に興味を示され、たまに異常なほど懐かれるのを(動物って私がええ人間やということがわかるんや)と思ってたけど、群れで暮らす犬には家族的な存在がいるかどうか見分ける力があり、孤独な人間を見つけると心配してかまいにくると聞いてから微妙な気持ちになってる…これほんまのことなん…

これはなんとも驚きの内容だ。この説が本当なら、見知らぬ犬に良く懐かれるという人は何とも言えない気持ちになることだろう。

にいな のりこ(@niina_noriko)さんが投稿したこの説に対し、Twitterでは「大きい犬が寄り添ってくれるのはそういうことですか」や「多分いい匂いがするだけなんじゃないかと思います」「微妙なきもちになりました」など、賛否の声が上がり、1万9000超のいいねが付いている。(9月13日現在)

でも、本当に犬にはそんな能力が備わっているのか? まずは、投稿者であるにいなさんにお話を伺った。

「孤独な人が見知らぬ犬に懐かれることが見受けられた」

ーー犬は家族がいるかどうかを見分け、孤独な人間を見つけると心配してかまいに来るという説を信じている?

半信半疑です。犬を飼われている家庭で家族の力関係を理解して振る舞うというのは昔から言われていることですし、家族の中で孤立しているときにかまいにくるのはあると思っています。今回のツイートへの反応でも、元気のないときにかまってくれたという声がたくさんありました。

しかし、一緒に住んでいるわけでもない人間の孤独を感じ取れる力があるのかどうかは疑問です。ただ、自分の周りの数少ない例では、人付き合いが苦手で孤独な人(失礼ですが)やその時点で孤独な状態にあった人が見知らぬ犬に猛烈に懐かれることが見受けられました。

ーー誰から聞いたものか?

特に誰というわけでなく、よく言われることだと思っていましたので、バズって驚きました。Twitterでも私以前に同様の発言を見たことがあります。

ーー犬にはよく懐かれる?

どちらかというと懐かれる方です。

ーー今回の説をふまえると、どういう気持ちになった?

犬に限らず動物に懐かれると良い人アピールしたくなりますが、そうではなく慰められてるのだとしたらシュンとしてしまいますね…。

犬に懐かれたら…

孤独な状態にあった人が見知らぬ犬に猛烈に懐かれることが見受けられて「よく言われることだと思っていました」とにいなさんは語ってくれたが、ますます真偽のほどが気になってくる。

犬は本当に家族がいるかどうかを見分け、孤独な人間を見つけると心配してかまいに来るのだろうか。犬のしつけ方教室「スタディ・ドッグ・スクール」を運営しているアニマルライフ・ソリューションズにもお話を伺った。

「鼻歌を歌う人」より「泣く人」に近づくという実験結果も

ーー犬は孤独な人間を見つけると心配してかまいにくるという投稿があるが本当か?

犬が飼い主を助けたり慰めたりするといった話はよく聞きますが、研究の段階では、まだはっきりとはわかっていないようです。飼い主を助けたり慰めるということは、相手の気持ちに対して同情したり、共感する能力が必要となります。人間やいくつかの霊長類で観察されているあくびの伝染が、同情や共感の証と考えられているため、相手に対して共感するかどうか検証する方法では「あくびの伝染」という現象が利用されています。

犬の場合、「『本当のあくびをする人』と『あくびのマネをする人』を接触させたところ、本当のあくびをしているときに伝染が起こったが、ただ単に口を開けてあくびのマネをしているときにこの現象は起こらなかった」「犬に対して人間があくびをする時の声だけを聞かせ、伝染が起こるかどうかを調査した結果、あくびの伝染は起こり、さらに親しい人間のあくびの声を聞いた時の方がより頻繁に起こったことから、同情心が関わっている可能性が示唆された」などといった研究から、犬にも共感する能力があるのではないか?と考えられています。

ただ犬のこのような行動は、無意識に他者のしぐさや癖、振る舞いを模倣してしまうカメレオン効果で、共感をしているのとは違うのでは?という考えもあり、研究の世界でもはっきりとは答えが出ていないようです。


ーー他にも参考になりそうな実験はある?

また、2012年に行われた実験では、人が話したり鼻歌を歌う状況と泣いている状況を見せたとき、それぞれの状況に対し犬がどのようなリアクションを見せるかを観察しました。その結果、犬は泣いている人に対してより積極的に近づく傾向があり、この傾向は実験者が飼い主だろうと、見知らぬ人だろうと変わらなかったようです。

さらに、見知らぬ人間が泣いているふりをしていると、犬は大好きなおやつやおもちゃを取りに行くより、その人に近づいて鼻を擦り付けたり、匂いを嗅ぐといった行動を多く見せたそうです。こうした結果から、泣いている人に近づこうとする犬の行動は同情行動なのではと考えられています。

しかし、この実験の結果でも、ただ単に好奇心で人に近づいたという可能性も考えられるため、本当に慰めたとは断言はできないようです。犬が人に対して共感性をもって慰めるかどうかは、様々な研究が行われて検証中のようですが、最近の研究では、犬は匂いだけで人の感情を読み取ることができたり、犬は飼い主のストレスがうつったりするといった研究結果も出ているので、ある程度、人の感情に共感できる能力はあるかもしれません。

犬は1万5千年前から、最も古く人と共生するようになった動物です。他の動物と比べ今でも人にとって最も身近な動物として共生できているのは、犬が人の気持ちを読み取り、共感する能力を身に付け、寄り添ったことによって、人にとって心の支えとなるかけがえのない存在になったからかもしれません。

人の感情に共感しているかも!?

人と犬の関係は“母子関係”に近いとの指摘も

ーー例えばどのような人になついたり、かまいに来る?

以前は人と犬の関係は上下関係と言われてきましたが、最近では母子関係に近いと言われています。その理由は、犬は飼い主よりも上位に立ちたいのではなく、人間の子供のように養護してもらうことを求めているのではということが様々な研究で分かってきました。

人間の子供が親に求めるように、犬も生きていくために必要となる欲求を満たすことを飼い主に求めます。そのため、十分な食事や運動、安全な寝床などを提供してくれる人には安心して懐いてきます。また、人とのかかわりの中でも脅威を与えず、犬が安心できる触れ合い方をする犬はなつきます。


ーー逆にどのような人が吠えられたり、警戒されやすい?

上述したように、脅威を与えるような触れ合い方をする人に対し、犬は警戒をして自己防衛のために吠えます。脅威を与えるような触れ合い方には、

・大きな声を出して興奮しながら近づいてくる
・勢いよく走って近づいてくる
・目をじっとのぞき込み凝視する
・上から覆いかぶさるように頭をなでる、捕まえようとする
・威圧的な声や態度をとったり、体罰を与える

といった触れ合い方は、犬に脅威を与えやすいです。


犬は「家族のいない人を孤独な人なんだ」とは考えられない

ーー飼い主以外に興味を示したり、懐いたりするのはどういう意味があるのか?

(1)上述したような犬との触れ合い方が上手だったり、犬が楽しむこと(おやつをあげたり遊んでくれるなど)をしてくれる人には飼い主以外でも懐くこともあります。

(2)その犬がもともと人が好きな場合は飼い主以外にも懐きます。特に生後3週齢から12週齢は社会化期と言われ、この時期に触れ合ったものには生涯愛着を示すと言われています。そのため、社会化期に飼い主以外のたくさんの人と関わったことのある犬は、飼い主以外の人との交流も好むようになります。


ーー家族的な存在がいるかどうか見分ける力があるというのも本当か?

犬自体が飼い主を家族(仲間)という認識を持つとは思いますが、家族のいない人を見てこの人は孤独な人なんだとは考えられないと思います。ただ、孤独な人の寂しい気持ちは理解できるかもしれませんが、それが孤独だから寂しいというような解釈はできないと思います。


ーー誰がどの家族に属しているかも見分けることが出来る?

普段一緒にいる家族の人たちが同じコミュニティーの存在であることはわかると思いますが、まったくの他人がどの家族に属しているかというのは、見分けることはできないと思います。

犬は飼い主を家族と認識していて人間の大事なパートナーだ

孤独な人を見つけると心配してかまいにくるかどうかは、まだはっきりとは分かっていないということで「犬に異常に懐かれる」という人は少し安心したのではないだろうか。

真相は分からなかったが、犬は私たちを楽しませてくれたり、癒やしてくれたりと、今後も人間にとって欠かすことのできないパートナーであることに変わりないだろう。

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