被災者は何から情報を得ている? 選択肢が増えた情報媒体の“使い分け”で命を守る

カテゴリ:国内

  • 2011年東日本大震災と2016年熊本地震で情報収集の手段に変化
  • 災害の状況・種類によって情報媒体を使い分けるべき
  • 命を守るため知ってほしい情報収集の3つのポイント

災害対策において心がけたいことの一つが、適切な情報の共有だ。
今いる場所は安全なのか。避難すべきなのか。ライフラインは大丈夫なのか。津波や洪水などが起きた場合、移動経路をひとつ間違えたり、初動が少し遅れるだけでも、生命が危険にさらされる可能性が高まる。

九州北部を襲った大雨の様子

8月下旬に九州北部を襲った記録的大雨においても、1時間に100ミリを超える局地的な降雨が観測されている。「何とかなるだろう」と楽観的に考えていると、いざという時にどう動けば良いか分からない状態に陥ってしまうかもしれない。

しかし、その情報を収集するにしてもさまざまな選択肢がある。以前はテレビやラジオ、防災無線が頼りだったが、今はSNSの書き込みや防災アプリの通知も加わった。

災害情報の収集手段は「スマホ・SNS」に変わりつつある

災害時にネットで得られる情報やサービスは増えているが、実際に被災者はどのような手段で情報を手に入れているのだろうか。
総務省が2016年にまとめた「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」では、東日本大震災(2011年)と熊本地震(2016年)のケースで変化がみられている

この調査の一つでは、災害の期間を「発災時」「応急対応期」「復旧期」に分けて、それぞれの段階で情報収集に用いた手段をアンケート形式で調べた。そうしたところ、東日本大震災では、発災時はラジオ、テレビ、携帯ワンセグの順に利用者が多かったが、熊本地震では、発災時のスマホ利用者で見ると携帯通話、SNS、テレビの順となった

災害時における情報収集手段(提供:総務省)

特に目立ったのがSNS利用率の変化で、東日本大震災では、発災時0.9%、応急対応期0.6%、復旧期2.5%にとどまったが、熊本地震のスマホ利用者では、発災時47.6%、応急対応期51.7%、復旧期43.1%に上昇した。災害規模や通信網の状況などが異なるため、単純比較はできないが、スマートフォンでの情報収集が主流になっていると言えるだろう。

災害時における情報収集の手段は、なぜ変化したのだろうか?
そして命を守るためには、数多ある情報媒体をどう使いこなせば良いのだろうか?
災害被害の軽減を研究する国立研究開発法人「防災科学技術研究所」に話を伺った。

SNSや防災アプリでの情報収集が増えている

――災害時の情報収集に変化などはみられる?

スマートフォンの普及とともに、SNSや防災アプリで災害情報を収集する層が増えていると思います。自分の状況をすぐ確認できますし、「プッシュ通知」のように、情報を自動的に教えてくれるサービスもあります。ラジオやテレビなど、その他の比重が下がっているというよりは、これまでの媒体に選択肢が加わったと考えるべきでしょう。
防災は予防策の積み重ねなので、総合的にはプラスの影響があると思います。


――情報収集の媒体によって、防災面メリット・デメリットなどはある?

情報伝達のくくりで考えると、テレビやラジオは発信者と受信者という立場です。同じ情報を受け取れることはメリットですが、一方的な情報発信となる可能性もあります。その点では、SNSなどは自分が知りたい情報をすぐに入手できます。ただ、情報量が多すぎて本当に必要なのか迷ったり、不必要な情報まで受け取ることもあるでしょう。


災害の状況・種類によって情報媒体を使い分けるべき

――災害にもさまざまなものがある。情報収集ではどう対応するべき?

災害にも発生直後から避難所生活まで、さまざまな段階があります。個々の状況でも必要な情報は変わるため、複数の情報媒体を使い分けることも必要です。例えば、テレビ・ラジオでは日本全国の状況などが理解しやすく、細部の情報把握にはネットが役立ちます。自分が置かれた状態を軸に考え、自主的に情報を得る姿勢も求められます。

災害の種類にも注目です。台風や大雨などの気象災害は予測できるため、被害予測などを調べることで事前に警戒することができます。これに対して、地震や津波は発生後の対応となるので、起きたときに何ができるのかを理解しておくことが大切です。家具の耐震状況を確認したり、家族との集合先を決めておくなどの対策も必要でしょう。


ライフラインの確保につながる情報は知っておくべきだろう

――災害に備えて、情報収集しておくと良いことはある?

災害に遭遇したとき、どんな被害を受けるのか。それに対して何ができるのか。そのためにはどんな情報が必要なのか。これらの情報を平常時に調べておくことをお勧めします。
災害への対策は急にできません。例えば、大雨が発生したときも、事前にハザードマップの存在を知っておけば、水害に見舞われる可能性があるかは理解できます。災害に備えるためにはどんな行動を取る必要があるのか、考えておくべきではないでしょうか。


大雨警戒レベルの概要

――災害時の情報収集において、解決すべき課題などはある?

個人ができること、社会ができること、それぞれに課題があると思います。
個人としての課題は、情報収集の手段が増え続けていることです。SNSやアプリなどが加わったことで、情報量の多さに拒否反応を示してしまうことがあるかもしれません。自分が受け入れられる範囲で利用しても良いですが、その場合、受け取った情報が災害の全てを伝えているわけではないことを認識しておく必要があるでしょう。

社会としての課題は、発信される情報に共通化されていない部分があることでしょう。例えば、2019年に創設された「大雨警戒レベル」(気象警報や避難勧告などを5段階に分類したもの)でも、警戒レベルを表現する色はテレビとアプリで違います。子どもたちには「レベル1...レベル2...」と教えるよりも、「○色だと危険」などと教えた方が伝わりやすいはずです。このような情報を統一していくのも、社会の役割だと思います。


命を守るため知ってほしい3つのポイント

――個人が情報の発信者になれる時代だが、この点で思うことはある?

情報を発信するにしても、安全が大前提です。危険を冒すような行動は避けてください。また、災害時の写真や動画の発信は、災害状況を伝えるうえでは大切ですが、自分が直接確認した内容にとどめておくべきでしょう。知人レベルの連絡ならまだしも、安易にリツイートしたりすると、間違いを拡散してしまうことにつながりかねません。


――災害から命を守るため、私たちは情報に対してどんな考えを持つべき?

3つ、知ってほしいポイントがあります。
1つ目は「情報は断片で、災害の全てを伝えているわけではない」ということです。内容に抜けがあることもありますし、古い情報は現状と違うことも多々あります。公開されている情報が完璧なものではないという前提で、情報に向き合ってほしいです。

2つ目は「自分の身は自分で守る意識」を持つことです。ここなら必ず安全という保証はできないので、「もしかしたら安全ではないかも」と考えることも必要です。

3つ目は「災害に備える練習を日頃からしてほしい」ということです。九州北部の大雨のような災害は、日本中で起きる可能性があります。災害情報を見たら、自分のところで起きたらどうなるのか、起きたらどうするべきなのかを想定しておくべきでしょう。

9月は各地で防災訓練も行われるので、そちらにも参加していただければと思います。


スマホやSNSの普及によって、情報収集の仕方は大きく変化した。
ただ、災害時には多くの媒体から大量の情報が発信されるようになったことで、その時、自分がほしい情報をどこから得るのがいいのか、そして事前に知っておくべき情報は何があるのか、もしもの時に備えてシミュレーションしておくことがますます大事になってくるのだろう。

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