当たり前のことを褒めてくれるアプリ案が話題
大人になると、子どもの頃に比べて褒められる機会はどうしても減ってしまう。しかし、何歳になっても褒められて嬉しくない人はいないだろう。
「家事と仕事を両立させているのはすごい!」「難しい仕事をよく頑張った」などと声を掛けられれば、表面上は平静を装っていても内心ではきっと喜んでいるはず。「もっと褒められたい」という欲求を抱えた人は、意外と多いかもしれない。
そんな欲求に応えるアプリのプロトタイプがTwitterで話題となっている。それがこちらだ!
「朝起きた」「電車乗った」とかであっても一つ一つ褒めてくれるアプリが欲しくて自分でプロトタイプを作ってみました。社会人、学生、主婦などの日常タスクや他にも「10分歩いた」「原稿1枚描いた」とか自分が毎日どれだけ頑張ってるか視覚化して自己肯定力を身につける…そんなアプリです。
欲しい… pic.twitter.com/KuQrtPm8XJ— 清水めりぃ@モフ田Tw連載中 (@zatta_shimizu) August 29, 2019
「朝起きた」「電車乗った」とかであっても一つ一つ褒めてくれるアプリが欲しくて自分でプロトタイプを作ってみました。社会人、学生、主婦などの日常タスクや他にも「10分歩いた」「原稿1枚描いた」とか自分が毎日どれだけ頑張ってるか視覚化して自己肯定力を身につける…そんなアプリです。
欲しい…。
Twitterには、このような紹介とともにアプリを説明する動画を添付。動画ではその日の時系列ごとに「8時 朝起きた」「9時 電車に乗った」「10時 出社してPCをつけて頑張った」などと、日常の何気ない行動が褒められる項目として設定されている。
使い方は、その行動を達成したらその項目をタップ。すると画面に猫が表示され、「えらい!」や「すごい神!」と褒めてくれるというのだ。
このアプリのプロトタイプを作ったのは清水めりぃ@モフ田Tw連載中(@zatta_shimizu)さん。元々アプリゲームやツールのデザイナーをしており、今もアプリ専門ではないもののいろいろなデザインをしている会社員だという。
また、漫画家としても活動し、『ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話』1巻・『ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話』2巻などいろいろな猫漫画を制作し、Twitterに掲載している。また10月4日には単行本の2巻が出版される予定だ。
Twitterでは「とても素敵なアプリ!すごくほしいです。」「私も褒められたい。」などの声があり、約1万件のリツイート、約2万3千件のいいねがつき、動画は42万4千回も再生され、大きな反響となっている。(9月4日現在)
確かにこのようなアプリがあったら使ってみたい。でもなぜこのようなアプリを思いついたのだろうか? 開発予定は? 投稿者である清水さんに話を聞いた。
友人とのグループチャットがきっかけ
ーーアプリのプロトタイプを作ろうと思ったきっかけは?
友人たちと毎日のようにグループチャットをしているのですが、「頑張って出社した」「仕事終わらせた」などと誰かが書き込むとそれを見たメンバーが「えらい!」とか「すごい!」とか答えていて、すごく良い事だなと思ったのがきっかけです。
たまたま使ってみたいツールがあったのでせっかくだしプロトタイプをそのツールで作ってみようと思いました。思いつくとすぐ作ったり描きたくなってしまう性分なんです。とはいえ自分はただのデザイナーでアプリとして組むことが出来ないため動画として公開しようと思いました。
ーーアプリのプロトタイプを作ったのはいつ?
作ったのはツイートした前日です。アイデアのラフはその前の日とかにその友人たちに見せていて「こんなアプリどうかな」って相談していました。その時もやっぱり「すごい!」とか言って貰えてすごく嬉しかったです。
ーー開発期間はどれくらい?
プロトタイプですし開発期間というほどではないのですが、大体1日くらいです。UIパーツやイラスト部分やアニメーション、画面作りなど全部込みでも時間で言ったら10時間はかかっていないと思います。コア体験部分だけサクッと作ってツイートしてみようと思いました。
ーー制作する上での苦労は?
元々似たツールは使っていたのですが、今回初めて使うツールでアニメーションの機能で困ったり、上手くいかなかったりで少し苦労しました。
困った時は公式のチュートリアル動画を見たりしましたがツールが外国のものなのでチュートリアル動画も全部英語で何を言ってるのか理解するのが結構大変でした。
褒めてくれる言葉は「えらい!」「すごい!」「神!」の3ワード
ーーブラック企業をテーマにしたモフ田くんの漫画もアプリ考案のきっかけのひとつ?
きっかけのひとつかはわかりませんが、日本人は頑張りすぎだと思うんです。特に社会人なんて通勤、仕事、人間関係、仕事の勉強、趣味、副業…親だったら子育てもここに追加されたり。それ以外にも健康維持とか家事とか細かいタスクが山ほどあって必死に生きてるのに大人になればなるほど褒めてくれる人が減るってすごく切ないことだと思っています。余裕もなく理解もして貰えない。社会人がギスギスしていたり辛いと嘆いてもそれは当然なのでは?と…。
私は漫画を描いていてすごく良いネタが思いついた時や早く原稿が終わった時などは「自分天才では?」と自らを褒めるようにしているのですが、すごく自信がつくというか、前向きな気持ちになって「よし!次も良いものを描こう!」とモチベーションに繋がっています。なので自分の体験を踏まえ、もっとたくさん頑張ってる人が自信を持つきっかけになって欲しくて作りました。
ーー「朝起きた」などの褒めてもらう項目は自由に追加できる?
自分のルーティーンワークを自由に追加登録できるイメージです。その他期限や時刻に制限のない項目はルーティン外のリストにまとめられるイメージで、褒められたいと思うことやほんのわずかな生活の一部であっても自分で好きなように登録できるのが一番かなと考えています。
でも面倒にならないよう、できれば簡単に入力できるようなシステムだと便利でいいなと思っています。私の場合は「原稿のネームを終えた」「原稿を1枚描いた」「原稿を送った」とか入れておきたい項目ですね。
ーーでは褒めてくれる言葉の方は?
褒めてくれる内容は設定されています。最初、キャラクターは「えらい!」「すごい!」「神!」など単純な褒め言葉しか使えません。
でも毎日「えらいポイント」を貯めていくと褒める語彙力と交換できる、というイメージです。例えば「そんなに頑張って…無茶すんなよ」とか「偉すぎるでしょ…偉人になるつもりか?」とか。でも、単純に「えらい!」とか率直な返答をしてほしい人もいると思うので語彙力を交換したくない人はしなくていいと思っています。
自由に追加出来るのも良いと思いますが、あまり複雑なアプリにすると今度はそれを理解することが「苦労」になって「ただでさえ疲れてるのにさらに疲れてしまう」と思います。なので最初は単純なアプリがいいと思っています。SNSっぽく、頑張ったタスクを飛ばすと、誰かが褒めてくれるとかも良いなと思っています。実現は難しいかもですが。
ーー褒めてくれるパターンを全て教えて
私と友人が褒め言葉を考えた時は「えらい!」「すごい!」「神!」しか出てきませんでした(笑)。みんな社会人で疲れているので語彙力が落ちているのは仕方のないことです。
反響が多い反面、褒められたい人が多いことに少し切ない
ーー自己評価が低い人が多いと感じている?
たまに感じることがあります。すごく頑張っているし仕事が出来るのに自己評価が低い人は結構いるな、と。
「私なんて…」とか「周りと比べて…」とか言う人が結構いるんですが、周囲や他人から見えているその人の頑張りなんて氷山の一角だと思うんですよね。自分が頑張ってるのは自分自身が一番わかっているはずなので、「疲れた。しんどい」を「自分頑張りすぎてる、偉すぎる」に置き換えたり、今回のプロトタイプのように頑張ったことを視覚化するだけでも自分自身を労わろうって気持ちも出るんじゃないかなあと思ったりもします。
ーーちなみに、清水さんが最近褒められたことは?
ツイッターでこのアプリのプロトタイプをアップしたらたくさんリプライや引用RTで褒めてもらいました。すごく嬉しかったですし、なんて優しい世界なんだろうと思いました。やっぱり人を褒めたり褒められたりするのって気持ちがいいものだなと改めて実感しましたし、褒めて下さった皆様にはありがとうの気持ちでいっぱいです。
ーーアプリを作りたいという正式な申し出はあった?
リプライでは数人から作りたいという声がありましたが、ちゃんとした希望者は現れていません。私も前職とかではかなりの数のアプリを作っていた身なので多面的に考えていろいろ難しいだろうなあ、という気持ちではいます(笑)。
とはいえ、もし作りたい名乗り上げてくれる会社さんが現れた際にはコア部分以外のUI設計やその他、ツイートには載せられなかったアイデアなども共有させて頂きたいなと思っています。
ーー反響は?
思っていた以上にありました。とても嬉しい反面、褒められたい人はやはり多いんだなという少し切ない気持ちでいます。
もっと人を褒めたり褒められたりする優しい社会になって欲しいですね。良いところを褒められて伸びる人もたくさんいると思います。
それに今回作っていてとても面白かったのでまた何か思いついたら原稿と仕事の合間にでも新たなプロトタイプを作りたいなと思っています。
反響の大きさから「褒めてもらいたい欲求」を抱え、アプリのリリースを待っている人の多さを感じる。現段階ではアプリ開発の予定はないということなので、まずは自身が褒めてもらう前に他人を褒めることをはじめてはいかがだろうか。