人口流出にともなう過疎化などにより、厳しい状況におかれる地方だが、「ふるさと納税」の寄付金集めやインバウンドの誘致など活性化のためにさまざまな取り組みをしていることをニュースで目にする機会もあるだろう。

そんな中、8月26日に河野太郎外務大臣(@konotarogomame)が投稿した、 青森県の三村申吾知事に関するツイートに注目が集まった。そこには、まさに知事が先頭を切って県のPRをすることを体現したような姿があった。
それが、こちら!



青森県の三村知事、縄文遺跡群の件で来訪。外国への青森産品の売り込みに使うスーツで来てくださいました

というコメントとともに投稿されたのは、笑顔でこちらに向かって手を振るスーツ姿の三村知事の写真。

一見普通にみえるが、三村知事がスーツを脱ぐと、その裏地がすごかった。
「奥入瀬渓流」と書かれた緑美しい渓流、巨大な土偶、そして青森ねぶたのイラストが描かれていたのだ! よく見ると、はっぴを着た三村知事自身の姿も!
青森県を代表するものばかりが並んだカラフルなド派手裏地だ。

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誰もが目を奪われるスーツに対し、「両脇だけかと思ったら、背中の土偶でコーヒー噴いた」「すいませんかわいいと思ってしまいました」「三村知事の本気度がカッコいい! 青森県の特級セールスマン! 青森愛がストレートに感じる!!」との声が寄せられ、約2万8000の「いいね!」が集まった。(8月30日現在)

ツイッター上でも青森愛が好評の三村知事は、東京大学卒業で出版社勤務を経て政界に進出。2000年の衆院選に初当選、2003年6月には衆院議員を辞職し、青森県知事選に当選して以来、現在5期目を務める63歳。地元ではアピール上手でちょっとお調子者の知事との評判だそうだ。

5期目ということは、似たようなスーツをもっと持っているのではないか?そして、実際に外国への売り込みに効果はあったのか?
青森県庁・企画政策部広報広聴課の担当者に詳しい話を聞いてみた。

はい。知事の発案です

ーーこのスーツはいつ、どこで作られたもの?

このスーツは、今年の半ばに作ったもので、県に縫製工場を持つ誘致企業に依頼しています。

ーースーツの制作は知事の発案?

はい。先の企業が持つ技術で、さまざまな裏地の作成が可能だということを知り、県をPRするためのツールとして使えるのではないかと発案しました。
なお、裏地に使用するコンテンツやデザインなどは、県産品をPRする部局の職員らと相談しながら決めています。

ーー改めて、スーツの裏地に描かれているものは何?

写真の左側が、十和田湖エリアの「奥入瀬渓流」。
中央が、つがる市亀ヶ岡石器時代遺跡出土の「遮光器土偶」(通称「しゃこちゃん」)。
右側は、夏の火祭りとして有名な「青森ねぶた」(知事のねぶたもあり)です。

ーーこのスーツを作った目的は?

県では、知事自らが参加し、県産品のセールスや観光PRなど、国内外での積極的な営業活動を展開しております。その際、知事が直接、県をPRするツールとして活用できるのではないかとの考えから作りました。
実際、さまざまな場面で披露していますが、県について興味・関心を持ってもらう一つのきっかけになればいいと考えています。


ーー今回、河野外務大臣にこのスーツを披露した理由は?

7月末、計17カ所から成る「北海道・北東北の縄文遺跡群」が、今年度の世界文化遺産登録の国内推薦候補に選定されました。
そこで上京する機会をとらえ、国会議員時代の知人である河野外務大臣にお会いし、縄文遺跡群の世界遺産登録への後押しと、県の国外へのPRもお願いするため披露させていただいた次第です。

現在5着持っている

実は、河野外務大臣と三村知事のこうしたやり取りは、これが初めてではない。
2018年10月にも、河野外相のもとを三村知事が「りんごとホタテとニンニク」を裏地に描いたスーツを着用し訪問する姿をツイートしているのだ。
では、一体何着もっているのかを聞いてみた。



ーー知事は「りんごとホタテとニンニク」を裏地にしたスーツも着用していたが、何着持っている?

最初のスーツは3年ほど前に作成しており、現在では5着を所持しています(これまでは農林水産品が中心だった)。
なお、今回のものは最新作にあたります。

ーー新たなスーツを、今作成中だったりする?

現在、次の作品について検討中です。

ーーこのスーツを県内外で購入することはできる?

スーツはオーダーメイド製品で、知事が自費で購入しています。裏地の費用はプラス5000円程度です。
同様のスーツ(裏地)を作りたい場合は、この企業に直接頼むか、企業と提携している大手量販店を通じても購入することができます。

来訪したアジア諸国では「総じて好評」

ーー知事がこのスーツで外国を来訪した経験は?

この夏も台湾をはじめ、アジア諸国で本県のプロモーション活動を行ってきましたが、その際に披露させていただいております。


ーー先方の反応は?

総じて好評であった
と感じています。

ーー県側では知事のこうした姿勢をどう捉えている?

知事自らが先頭に立って、県のPRを積極的に行っていることにより、以降の円滑な事業などの展開につながっているものと考えています。

ーーでは、県民は、知事のこうした行動をどう感じている?

こうした知事の姿勢については、県民の皆さまにもご理解いただいているものと思っています。

ーーこのスーツによる効果は出ている?

まず、はじめにインパクトを与えることで、知事がお会いするさまざまな方との人脈の構築や、県に対する興味・関心をもっていただく一つのきっかけになっているものかと思っています。
スーツ自体は、県のPRツールの一つに過ぎません。しかし、ネットワークの構築など地道な取り組みも含め、トータルとしての積極的な営業活動を通じて、県産品の販売額や輸出額は着実に伸びています。また、外国人観光客が大幅に増えるなど、各方面で成果が現れているところです。

たまに、オシャレとしてスーツの裏地にこだわりをみせる人がいるが、三村知事の場合はそのインパクトで県のPRとして、しっかり成果をあげているようだった。
新作も気になるところだが、最後に知事本人からのメッセージもいただいた。

「本県は、世界自然遺産白神山地や、奥入瀬渓流、種差海岸などの美しい自然、三内丸山遺跡など世界文化遺産登録を目指す縄文遺跡群、りんごやホタテ、マグロ、特A米『青天の霹靂』などのおいしい食、ねぶた・ねぷた・立佞武多・八戸三社大祭などの夏祭り、豊富な温泉など、多くの魅力に溢れています。
こうした本県の魅力を、今後とも積極的に売り込んでいきたいと思いますので、皆さまも青森県にぜひお越しください。」

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。