知らない人もいる時代に…
世の中がどんどん効率的になるにつれ、その便利さに思わぬところで足をすくわれてしまう場面もまたみられるようになってきた。
スマートフォンに慣れ親しんだ若者たちが、会社のパソコンのキーボードを使いこなせなかったり、公衆電話のかけ方がわからなかったりする現象もそのひとつだろう。
そんな状況の中、私たちの目を点にしてしまうようなポスターが登場した。
それが、こちら!
「きっぷってなに? No.1」
という驚くべきタイトルと大きなきっぷの画のポスターが掲示されているのは、JR武蔵野線・越谷レイクタウン駅(埼玉・越谷市)の券売機の一画。
内容を見てみると、
・当駅から乗車する際のみ利用可能なきっぷ
・購入した当日のみ利用可能
・途中駅での下車は出来ません。(下車する場合、差額分は収受し過剰分はお返ししません。)
などと、その使用方法が丁寧に記載されている。
明らかに「きっぷの使い方が分からない人」に向けたものだが、対象は子どもではなく、「きっぷ」というものに身近で接したことがない人たちをターゲットにしているものとみられる。
代表的なIC乗車券のSuicaが導入されたのが2001年で、考えてみればきっぷを手にする機会は激減した。
しかし、とうとうきっぷの使い方が分からない層が出てくるとは、にわかに信じがたいが、こうした状況は一体いつからなのだろうか?
また、「No.1」と銘打つからには、第2弾のポスターも今後予定しているのだろうか? 越谷レイクタウン駅の事業を管轄するJR東日本大宮支社の担当者に詳しい話を聞いた。
IC運賃の新設が増加のきっかけに
ーーポスターを今回設置することにしたきっかけは?
IC乗車券が普及している中、きっぷの使い方を知らないお客さまが多いことを受けて作成しました。
ーーポスターの掲載はいつから?
今年4月ごろから、券売機付近に掲出しております。終了予定は未定です。
ーーきっぷが何か分からない、といったケースはいつ頃からみられた?
以前からありましたが、消費税8%に伴うIC運賃が新設されてから、IC乗車券利用のお客さまが特に増え、多く見受けられるようになりました。
2014年4月に消費税が5%から8%に引き上げられる際に、IC乗車券の「1円単位運賃」が導入され、きっぷを現金で購入するよりお得となったことから、きっぷ離れが加速したということのようだ。
では、きっぷが何か分からない人はどんな間違った使い方をするのだろうか?
誤って「入場券」を購入して乗車…
ーーきっぷが何か分からない人は増えている?
増えている傾向にあります。
ーー きっぷが何か分からない人は、どんな使い方をする?
「きっぷのかわりに誤って『入場券』を購入して乗車してしまう」、「往復乗車されるお客さまが乗車駅で、帰りに使えると思って同じ切符を2枚購入してしまう」、「途中下車のできない乗車券で途中下車したいと申し出る」などがこれまでにありました。
ーーポスターには「購入した当日のみ利用可能」などとあるが、実際に起きたことを反映している?
反映しています。
ーー 年齢や性別などの傾向はある?
駅の近くに大型商業施設があり、利用者が多いことも影響してか、若年層の女性に多く見受けられます。
ーー きっぷ自体の利用数はどのくらい減っている?
あくまで感覚ですが、お客さまの10人のうち9人程度は、IC乗車券利用のように見受けられます。
「買い間違いが減れば幸いです」
ーーポスターはSNS上でも話題になったが、こうした反応をどう受け止めている?
駅での問い合わせ件数は通常月に1~2件であり、それに比べて反響が多いことに正直驚いています。これを機にきっぷの買い間違いなどが減れば幸いです。
ーーポスター設置後、具体的な効果は出ている?
もともと問い合わせ件数が通常月で月1~2件とそう多くなく、現在のところ、その問合せ件数が目に見えて減ったとまでは言いきれません。しかし、今回の反響が大きかったことも含め、間違いが減ればいいと考えています。
ーーポスターには現在「No.1」とあるが、今後も続く予定? またどんな内容になる?
検討はしておりますが、いつ追加するかなどは現時点で未定です。
IC乗車券のようなデジタル化によって、私たちの生活は格段に便利となった反面、今回のようなことが起こるのもまた時代の流れだ。さて、次に使い方がわからなくなるものは何なのだろうか。