GSOMIA破棄を正式通知…「日本が対話拒んだ」と韓国

8月23日韓国の外務省に入った日本の長嶺駐韓大使に書面で正式に通知されたGSOMIAの破棄。

両国の亀裂がさらに深まることになった文在寅政権による新たな決定。

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安倍首相は23日「国と国との信頼関係を損なう対応が残念ながら続いている、韓国に対しては約束をまず守ってもらいたい」と遺憾の意を示し、いわゆる“徴用工問題”をめぐり韓国が日韓請求権協定に違反していることを改めて指摘した。

また韓国に対し、これまで再三にわたってGSOMIAを延長するように求めてきたアメリカ政府も、まさかの事態に反応。ポンペオ国務長官は「韓国のGSOMIAに関する決断に失望した」と「失望」という強い表現で不満を表明した。

一方の韓国大統領府は、23日開かれた記者会見で「日本政府は従来の主張をくり返しながら、対話に全く真摯に臨もうとせず、韓国側が先に是正措置を取るべきだと言いながら要求し続けていた」として、日本に対話を求めたが応じなかったと主張。

また、22日に「アメリカ政府も理解している」と説明していたことについては、「アメリカは韓国にGSOMIA延長を希望したのが事実」だと話し、22日の説明が事実ではなかったことを認めた。

韓国の異例の決定の裏に一体何が?

異例の事態となった、GSOMIA破棄の決定…その“舞台裏”では一体何が起こっていたのだろうか?

木村拓也キャスター:
GSOMIA破棄を韓国側が発表する直前に、韓国の康京和外相から日本の河野外相に破棄を知らせるメールが届いていたといいます。この破棄の発表自体は韓国国内でも予想外だったというふうに言いますけれども、発表の際、韓国内はどのような状況だったんでしょうか?

フジテレビ・鴨下ひろみ国際取材部長:
NSCの会議が開かれる前に、結論は出ていなかったんです。まさに、会議を始めてみないとどういう結果か分からなくて、終わった直後に大統領府のプレス担当者が記者たちに「輪転機を止めたほうがいいよ」というふうに伝えたというぐらい、思いがけない結果が出たよと暗に伝えたんじゃないかって言われています

木村拓也キャスター:
それだけバタバタした、予想外だった、というのがその通りだと思うんですが、第一報をお聞きになってどんな印象でしたか?

外交評論家・宮家邦彦氏:
私はショックだったけど、実は驚かなかったんですよ。政府レベルでこれだけ拳を振り上げて下ろせないですよね、国内的な状況を考えたら。そうすると、どうしても「どっちかが降りたら支持率が下がる」という悪循環になるから、行くところまで行くんじゃないかと思っていたら案の定…ショックですけど驚きませんでした

政権揺るがす“対日批判の急先鋒”のスキャンダル

なぜ、韓国は予想外の決断に至ったのか。その背景には、内政、外交面で“爆弾”を抱えた文在寅大統領の状況が関係しているという。

まず、内政面では、最低賃金引き上げなどで引き起こされた経済の低迷
外交面では、北朝鮮から「再び対座する考えはない」などと宣言され、また日本とも輸出管理をめぐる対立が続くなど、進む孤立化の問題があった。

こうした“爆弾”に加え、現在、韓国国内では文大統領の最側近であるチョ・グク前民情首席秘書官をめぐり、政権を揺るがす大スキャンダルが起こっているのだという。

加藤綾子キャスター:
文大統領の側近であるチョ・グク氏に数々の疑惑が出てきたということですが、この人物はどういった人物なのでしょうか?

鴨下ひろみ国際取材部長:
チョ・グク氏はソウル大の教授なんですけど、文在寅大統領のブレーン中のブレーンといった方で、非常に頼りにされています。この人を法務大臣に起用して、検察改革を任せようということで、今回、韓国が予定している内閣改造の目玉中の目玉だったんですね。その人物のスキャンダル、色々ありますが中でも韓国の世論が最も反発しているのが、娘さんが大学不正入学をしていたんじゃないか、息子さんが兵役で不正をしていたんじゃないかという疑惑が持たれていて、ここに非常に反発が大きく出ているんです。この疑惑が噴出してから、世論調査で文在寅大統領の支持率が支持と不支持が逆転してしまうといったような現象も出ていて、非常に大きなダメージが出ているとみられています

“次期法相”候補であるチョ・グク氏には、自身の娘の大学不正入学息子の兵役逃れ、また、不動産の偽装売買、巨額の財産隠しなど、多くの疑惑がかけられているというが…

加藤綾子キャスター:
スキャンダルの火消しのために今回、GSOMIA破棄っていう大きな決断をしたと考えられるんですか?

鴨下ひろみ国際取材部長:
韓国の野党や保守系のメディアからはまさに「火消しのため、チョ・グクさんの疑惑を隠すためにGSOMIAを破棄したんじゃないか」という指摘が出て、批判の渦中にあります

宮家邦彦氏:
だけどGSOMIAを仮に破棄しても、これだけ(疑惑が)あれば相当尾を引くんじゃないですか?

鴨下ひろみ国際取材部長:
これから聴聞会というところで検証を行うわけですが、チョ・グクさんはそこを正面突破するということで、「説明をきちんとして理解を得ます」という姿勢を示しているんですけど、韓国の世論がどう判断するか非常に注目されるところだと思います

加藤綾子キャスター:
もちろん、破棄には反対の意見もあったわけですよね?

鴨下ひろみ国際取材部長:
政権の中には「これは維持したほうがいい」という意見もありました。決める前に何を一番気にしたかというと国民の世論です。毎日世論調査をやって、反日をどう扱うか、GSOMIAをどう扱うかという意見を見ていました。それと文政権はもうひとつ、アメリカがどう対応するか、受け止めるかという点を非常に気にしていたんですが、やはり、最後は国民感情。「日本に侮辱された」という国民感情を回復するというところに主眼を置いて決定をしたというふうに見るしかないかなと思います

加藤綾子キャスター:
日韓関係だけではなくて、日米韓の安全保障に対する問題っていうことになってくるので、アメリカを気にして、破棄ということにはならないかなと私は思っていたんですけど

宮家邦彦氏:
普通だったらそうですよね。各国には外交安全保障の専門家がちゃんといて、恐らく外相も含めて「そんなことをやったら大変になる」「韓国にとってはよくない」ってことは分かってると思うんですよ。分かってると思うけど、先ほど鴨下さんがおっしゃったように、国内の圧力、もしくは国内の利益を考えて対外関係を犠牲にしたという意味では非常に悪い前例になると思いますね

国民の意見も真っ二つ「愚かなこと」VS「最善のカード」

一方、韓国国内でもGSOMIA破棄に対し、国民の意見は真っ二つに。

破棄反対派男性A:
間違っている。一人で生きているのか、韓国は。他の国と国防や経済で協力しなければいけない

破棄反対派男性B:
愚かなことだ、とても愚かなことだと思う

破棄賛成派女性:
日本政府が先に“ホワイト国”から除外したので、我が国の立場では最善の選択をしたと考えています。韓国政府もアメリカの同意なしでGSOMIA破棄を決定しないだろうし、アメリカ側も私たちの政治的立場を尊重し、私たちができる最善のカードを出したと…

木村拓也キャスター:
22日を振り返ってみますと、韓国の大統領府の関係者は「アメリカはこの破棄に関して理解をしている」というような発表をしたんです。ただ、アメリカ政府関係者は理解しているというのは事実ではないと抗議、23日の会見で韓国は「実は、アメリカはGSOMIA延長を希望したのが事実です」と。つじつまが合わない、むしろ反対のことを言っている感じがしますよね。

加藤綾子キャスター:
これは、外交官の立場としてはどうですか?

宮家邦彦氏:
これは外交じゃないよね、表でしか交渉していない。本来であれば、もっと水面下で十分根回しをした上でなんとかやるっていうのが…これ、どうもガチンコで、公的な部分だけでやっていると思うんですよね。こんな外交成功するはずがないですよ

加藤綾子キャスター:
あと心配なのが、日米韓のごたごたが北朝鮮にとってはどう見えるかということですよね

宮家邦彦氏:
北朝鮮は喜んでいるはずですよ


新たな一線を越えた。韓国の対日姿勢。泥沼化する日韓の対立はどこに向かうのだろうか。

(「Live News it!」8月23日放送分より)