身近な薬が保険適用外に?

湿布など身近な薬が処方されなくなるかもしれない。
健康保険組合連合会は病院で処方される薬のうち湿布・花粉症の治療薬など市販薬で代用できるものは保険適用外とする案を8月23日に発表する。

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健康保険組合連合会・幸野庄司理事:
市販品で対処できる薬を医療保険から除外すれば医療費全体で大きく削減が期待できる

年間2126億円の医療費が削減できるといい、その分は現在は自己負担となっている高額な治療に保険をあてることも可能になるという。

健康保険組合連合会の案に対して街の人は…
「自分の子供たちが病気になった時のことを考えたら、それはいいこと」(85歳女性)

しかし、その一方で…
「3割負担が10割になったら、ひどい話だと思いますね」(60歳代女性)と身近な薬が医療機関で処方されなくなる恐れがあることに不安の声があがった。

そこで、今回の「ニュースのミカタ」は「身近な薬が保険適用外?医療費2126億円の削減に賛否」を取り上げる。

病院で処方される市販品と同じ有効成分をもつ医薬品の総額は年間5000億円以上

健保連が保険適用外を提言しているのは湿布・ビタミン剤・保湿剤・花粉症治療薬といった市販品で代用できるもの。

医薬品には薬局などで買える市販薬と医師の処方せんを持参して購入する医療用医薬品がある。医療機関で処方されると保険が適用され、患者は1割から3割負担で済むのに対し、薬局などで買うと全額自己負担となる。厚生労働省の調査では市販品と同じ有効成分をもつ医薬品では湿布薬が最も処方されているという結果となった。病院で処方される市販品と同じ有効成分をもつ医薬品の総額は年間5000億円以上にも上る。

実際、医療現場では現在、1回の診察で処方できる上限70枚の湿布をもらう患者もいるという。

一体、なぜ医療用医薬品にこだわるのか?
「町で買うと湿布すごく高いんですよね。お医者さんでもらう方が安かったりする」(女性)

ある湿布薬は医療機関なら3割負担で96円だが、店によって違いはあるものの同じ有効成分を含む市販薬は2551円と高額にとなっている。

医療関係者たちの見解は

久我山整形外科ペインクリニックでは約8割の患者に湿布を処方しているという。

久我山整形外科ペインクリニック・佐々木政幸院長:
病院に来ないで薬局でという方もふえるのではないか。様子を見ることによって、悪くなってしまうという方も可能性としてはある。

医師からは患者に初期判断を任せることを危ぶむ声。薬を処方する調剤薬局では…

恵愛薬局経堂北口店・岩田恵局長:
売り上げが減ってしまうんではないかという懸念があるかもしれないんですけど、処方箋なしでもお薬をご購入していただける。逆に伸びしろができるんじゃないかなって思います。

また、市販薬を売る薬局は…

ケイポートホテルエクセレント店・内野隆一店長:
お客様が増えるので売り上げが上がるというのは見込まれるかなと思います。 今まで病院に行っていたお客様がこちらに来る可能性が高くなりますのでより濃い接客が求められるのかなと思います。

10割負担にすることのメリット

一部の処方薬を保険適用外とすることにどんなメリットがあるのか?その1つが増え続ける保険料の軽減だ。健保連によると、団塊世代が75歳に差し掛かる2020年以降、保険財政が危機的な状況になる可能性があるという。高齢者の医療への支出が大幅に増え、国民が支払う年間保険料が1人あたり5万円の負担増になると試算している。その負担を少しでも軽減できるということだ。

さらに高額な保険治療が可能にとなるこも理由の一つだ。その一例が2019年5月に保険適用が決まった白血病治療薬キムリア。
1回の治療で3349万円かかる治療費のうち年収に応じて違いはあるものの、約3300万円が公的保険で賄われることになる。このような保険を使った治療の財源にもなるとみられている。

医療費に詳しい専門家は…

医療ジャーナリスト・田辺功氏:
保険制度が続いていくためには医療費の財政的な面からの削減というのは仕方がないのかなとは思いますね。

生田竜聖アナウンサー:
健保連は近く厚生労働省の諮問機関に導入に向けて検討するよう要望するとしていますが厚労省は医療保険部会などの開催はまだ決まっていないということです。

(「めざましテレビ」8月23日放送分より)