便利な一方で、使い方を誤ると落とし穴にはまってしまうスマホ。

写真撮影、スケジュール管理、メモ帳、音楽、さまざまな用途で使えるアプリや情報がスマホの中にあり、特に毎日のように使われているのがSNSだろう。

最近、こうしたSNSによって、少年少女が犯罪に巻き込まれてしまうケースが多発している。

警察庁は、2018年の1年間にSNSを通じて犯罪被害に遭った18歳未満の子どもの数が1811人だったと今年の3月に発表している。2009年と比べると700人近く増えていることになるが、こうしたデータの被害人数は「氷山の一角でしかない」と、青少年のネット・スマホ事情に詳しいジャーナリストの石川結貴さんは言う。

TwitterやLINEなどを問題視している時点で甘い

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まず、「SNSを通じた犯罪被害」と聞いて、あなたはどんなSNSを思い浮かべるだろうか。

Twitter、Facebook、LINE、Instagram…こうした有名なSNSの名前は出てくるかもしれないが、今の中高生は大人が聞いたことも見たこともないSNSを使っている。

例えば、「学生限定」などを宣伝しているあるSNSは、学生限定と言いながらも、大人が学生になりすまして会員となっているのが現状だ。また、「声」でつながるトークアプリは、同時間帯にアプリを利用している人とつながり、話ができるアプリで、年齢や性別の垣根を越え、知らない人と簡単につながることができる。

特に「声」でつながるトークアプリは、「SNS疲れを起こしている中高生に人気」と石川さんが言うが、「ユーザー同士は互いにどこの誰ともわからず声だけでつながる。そのため電話を切ると相手とは二度と話せないという心理に陥りやすく、自撮り画像やSNSのアカウントなどを交換してしまう子どももいます」と、その危険性を指摘する。「知らない人と話せる」という子どもの好奇心や興味をそそるようなアプリ利用がきっかけで、自撮り被害や性犯罪に巻き込まれる可能性もある。

こうしたSNSは、子どもたちが手にするスマホによって、「簡単に大人の世界に介入できる」というきっかけを作ってしまう。そして、「何のプロテクターを付けずに大人と同じ世界に入った子どもたちを、悪意のある大人達が狙っていることを知らなくてはならない」と話した。

さらに、石川さんは「大人はTwitterやLINEの心配ばかりししますが、その程度の認識では甘いと言わざるを得ません。親や教師など大人にはわからない、知らないアプリがたくさんあり、そこに知識も社会経験も未熟な子どもたちがダイレクトにつながっている。だからこそ危ないんです」と警鐘を鳴らした。

実感して欲しい“スマホの向こう側”

そもそも、子どもたちはなぜ、知らない人とつながることができるのか。抵抗はないのだろうか。

この疑問について石川さんは「SNSだから」と前置きし、「スマホなどの機械を通して見ている世界なので現実感が薄く、現実の怖さを感じにくいことが挙げられます」とした。

「性犯罪だけでなく、自らお小遣いほしさに性的な画像を撮って売ったり、LIVEチャットなどで男性と話してお小遣いをもらっている子も実際にはいます。しかし、その子たちに、『リアルな場で知らない男性と1時間話したり、洋服脱げますか?』と聞くと、『脱げない、無理』と言います。スマホに向かってならいいけれど、現実ではできない。実際にはネットの世界は「架空」ではなく、そこには現実の、生身の人が関わっている。リアルと同様に悪意のある大人が存在しているということを、子どもたちに実感させる必要があります。つまり、リアルで嫌なことはネットでも嫌、リアルでできないことはネットでもしない、そんな風にリアルの価値観とネットの価値観を同一にする教育が大切なのです」

こうした現実を現実として受け止めない、スマホの中に広がる世界に現実感を持てないことが今の子どもたちの根底にあるという。そして、「彼らはよく『SNSに出てたから、知っている』『ネットで見たから知っている』と言います。しかし、彼らの見ている世界はSNSの世界なのです」と、現実の世界に触れる機会の少なさを懸念した。

リアルな世界の体験をもっと

そこで大人が、親ができることは「子どもたちをリアルの世界に引き戻すこと」だと石川さんは言う。

「お皿洗いや掃除、洗濯でもいいので、家で働かせたり、あとは親のリアルな体験を話してあげてください。ネットがすべて、ネットにはどんな情報もあると思っている子たちに、『あなたの親の人生はネットに載っていますか?』と質問すると少し考えるんですね。ネットに載っていないこと、調べても出てこないことがあるということを実感させる、それが自分にとって一番身近な大人であればなおさらです。いかにリアルな世界に引き戻してあげられるか、そしてリアルでも嫌だと思えることを、ネットで感じてもらうことも重要です」

ネットやSNSのリテラシーについて家庭や学校で教育していく必要があるが、それが追いつかないほどネットの世界は進んでしまっている。もちろん、ネットに関する危機管理を学ぶことが大切だが、子どもたちには現実の世界で味わえる怖さや悲しさ、楽しさも知る必要があるのかもしれない。

石川結貴
家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材するジャーナリスト。新聞連載やテレビ出演、講演会など幅広く活動。著書に『スマホ廃人』(文藝春秋社、『『子どもとスマホ~おとなの知らない子どもの現実』(花伝社)など。


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プライムオンライン編集部
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