24時間365日いつでもどこでも…今の子どもたちが直面する“ネットいじめ”

カテゴリ:暮らし

  • ネットいじめの大きな問題は24時間365日いじめられること
  • 生身の人間に言う感覚が薄くなるためスマホで暴言を言いやすい
  • 「常に不安の中にいる」ネットいじめのターゲットはある日突然…

調べ物をしたい時、誰かと連絡取りたい時、何でもできてしまうスマホ。

今や小学生も欠かせないものになっているが、最近ではスマホを使ったネットいじめが深刻な問題となっている。

子どもの使用について親が四六時中見守るわけにもいかない。そこで、青少年のネット・スマホ事情に詳しいジャーナリストの石川結貴さんにネットいじめの現状について聞いた。

2種類ある「ネットいじめ」

まず、ネットいじめについて石川さんは、「SNSを通じたもの」と「スマホというデバイスを使ったもの」の2種類を挙げる。スマホはいつでもどこにいても手元にあり、便利な一方で、簡単にネットにつながり、拡散力が強いからこそ、悪意のある使われ方をすると子どもたちを苦しめるものになってしまうという。

「ある中学生から、同時刻に何通も同級生から『しね』というメッセージが届くという相談を受けました。これがSNSを使ったいじめの一つです。メッセージを受け取った時間は夜。24時間365日、場所も時間も問わずいじめられてしまうことがネットいじめの大きな問題です」

もう一つ、スマホを使ったいじめについては、盗撮による拡散が問題になっているとし、ある少年が受けた事例を挙げた。

その少年はトイレで排泄していた姿を撮影され、「LINEでばらまく。嫌なら学校に来るな」と脅されたことで学校を休んでいたところ、撮影した少年から「削除する。口で言っても信じないと思うから会おう」と言われる。そして、会いに行くと「削除料1万円よこせ」と脅され、お金を渡してしまう。しかし、別の子から「俺もコピーがあるから削除して欲しければ5千円よこせ」と言われ、この少年はこのままではエンドレスにたかられてしまうと恐怖を覚えたという。

こうした事例の問題点について、「被害回復が非常に難しいこと」が懸念されると石川さんは言う。「ネットやSNSのいじめは、一度拡散してしまうと被害回復には時間も手間もかかる。その後の進学や就職など将来的な影響の可能性もあります」。

今、各地の教育委員会ではLINEを使ったいじめ相談の窓口を設ける動きが出ている。そこでは主に精神面のサポートが行われているが、こういったいじめの現状を考えると、拡散された画像、撮影された動画をどう削除するかといった技術的な面でのサポートも必要とされている。

現実では危険信号が出るのに、SNSでは…

そして、石川さんは、「今の中高生は、現実感覚が非常に希薄。SNSに出ている人の名前や画像や情報をそのまま信じてしまいます」と話した。

全国各地で生徒らに講演活動をしている石川さんは、「SNSでつながった人から会いたいと言われたらどうする?」と問いかけたことで見えてきた、今の子たちの感覚があるという。

「中高校生たちに、『SNSで仲良くなった人と会いたいと思うか』と聞くと、『何回かやりとりしてよさそうだったら会う』や『名前と顔を出している人だったら大丈夫』という答えが返ってきます。しかし、『家にいるときに、近所に引っ越してきたという知らない男性が訪ねてきて、話をしていく中で、家にあがらせてもらってもいいですかと聞かれたらどうする?』と質問すると、『絶対に家に入れない』と言います。その理由は『引っ越してきたのは嘘かもしれない』『名前が本当かどうか分からない』といった答えです」

リアルの世界では、知らない人に対して危機意識を持つが、SNSの世界でその感覚を反映できず、そこで出ている情報などを鵜呑みにしてしまっているという。「現実では危険信号が出るのに、SNSでは真に受ける、そういったSNSでの現実感覚の希薄さがあります」。

そして、スマホといったデバイスを通じて、容易に暴言を言えてしまうことにが「ネットいじめ」につながっていると石川さんは分析する。「目の前にいる人に暴言は言えないけれど、スマホを使って、SNSを通じて言うことで、生身の人間に言っているという感覚がなくなってしまう」ことが、いじめの根底のひとつと指摘する。

コミュニケーションによる行き違いもいじめになり得る。ある男子中学生は、SNSのやりとりの中で友人と遊びに行く話になり、別の友人を誘っていいかと聞いてきた子に対し、「あいつ、なんで来るの?」とメッセージを送ったところ、他の子から「こいつ、上から目線だからハブろう(仲間はずれにしよう)」という展開になってしまった。

だが、「なんで来るの?」は来るのを嫌がったのでなく、電車か自転車で来るのかという質問だった。リアルでは表情やしぐさなどから会話の意味を捉えられるが、文字だけのやりとりとなるSNSでは互いに真意を探ることができず、いじめに発展していってしまうのも、ネットいじめの怖いところだという。

ネットいじめのターゲットは誰でも

こうしたネットいじめの対象について、石川さんは「誰がどういう理由でターゲットになるのかがわかりにくいため、今の子どもたちは常に不安の中にいます」とした。

基本的には、勉強ができて親切な子や話題が豊富でみんなを楽しませてくれる聞き上手な子たちが、SNSの中では人気だといい、自己中な子は敬遠されてしまうという。ただ、「分かりやすく“あの子はいじめられても仕方ない”といった明確な理由もなく、ある日突然いじめられるので、次は自分かもしれないとおびえ、必死に空気を読んでいるのが現状です」と話した。

そんな苦しい現状であれば、いっそのことスマホやSNSをやめてしまえばと思ってしまうが、「子どもにとって友達や学校の存在はものすごく大きい。大人は逃げ道もあるので、簡単にやめればと言いますが、学校に行くという現実を変えられない子どもたちにとって、スマホを手放すと言うことは難しいです。子どもたちとSNSのつながりは切っても切れないのです」と、スマホを取り巻く子どもたちの現状を明かした。

不安を抱くのであれば調べよう

こうした実態を知ると、いつ自分の子どもが巻き込まれてしまうのかと不安になってしまうが、そんな時に親はどうすればいいのだろうか。

石川さんは「子どもと一緒に調べることが大切です」とアドバイスをくれた。

「よく『自分の子どもがいじめられたらどうすれば…』という質問を頂きます。しかし、不安に感じているのであれば、そうなったときのことを調べておくのが親の責任だと考えています。今の時代、スマホで何でも調べられ、いじめなどに関する相談窓口も必ずあります。子どもと一緒に調べ、親は『何かあったらここに行けば、相談すればいい。『あなたに何かあったら全力で守るから』と告げることも重要です。最近では、LINEとかSNSとかよく分からないから、と突き放す親もいますが、親が力になってくれるという姿勢も見せてください」

スマホを子どもに持たせるのは親の責任。だからこそ、まずは身近な大人たちが子どもたちを取り巻く環境を理解し、“いつでも子どもの力になる”というスタンスを見せていくことが大切なのだろう。

石川結貴
家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材するジャーナリスト。新聞連載やテレビ出演、講演会など幅広く活動。著書に『スマホ廃人』(文藝春秋社)、『『子どもとスマホ~おとなの知らない子どもの現実』(花伝社)など。

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