政治は永田町だけじゃない!現場で起きているんだ!? ひよっこ番記者が初同行した“政治家の現場視察”

カテゴリ:国内

  • 政治家は永田町の外でどんな仕事をしている?
  • モノづくりを支える町工場とベンチャー企業の声
  • 「政治」と「暮らしの現場」とのつながり

意外に実態を知る機会のない、“政治家”の永田町を離れた仕事

「政治といえば永田町。国会で議論することが政治家の仕事」

「政治家」という職業について、この7月に政治部記者になったばかりの私はこれまで、こんな印象を持っていました。政治は私たちとは離れた永田町のもので、政治家はパリッとしたスーツを身にまとって国会で議論を戦わせているイメージ。実際の私たちの生活に、政治がどのように関わっているのか深く考える機会はあまりありませんでした。

そんな折、私が取材を担当する西村康稔内閣官房副長官が「ベンチャー企業の視察」として東京都内の企業を視察するとの知らせを受け、永田町にとどまらない「政治家の現場視察」の実態を見てみようと同行取材しました。すると日本のモノづくりの将来を担う現場の声と共に、政治との関係性の一端が見えてきました。

下請け企業をテクノロジーで救うベンチャー企業

8月9日、西村副長官が訪れたのは、昔ながらの問屋街である東京の下町、台東区蔵前。1つめの視察先は、ここに本社を構え、日本の製造業の常識をテクノロジーで変える事業を展開中だと注目されているという、「キャディ」というベンチャー企業でした。

最近移転したばかりの「キャディ」のオフィス 東京・台東区

「中小企業にはそれぞれ長所があり、それをデータ化して会社同士をフラットにつなげたい」

こう語ったのは、東大卒でまだ20代だという「キャディ」の加藤勇志郎代表でした。

全国に約2万社あるとされる板金工場のうち、約8割は従業員が9人以下。そんな下請け零細の町工場の負担になっていることの1つが「見積り」なのだといいます。例えばある企業が中小の町工場にネジを発注したい場合、発注者側は「相(あい)見積もり」といって、複数の町工場に「見積り」の提示を求めます。並行してコストカットも要請し、その中で「一番安い」町工場に発注するのです。

すると、中小の町工場にとっては、たとえ時間をかけて見積もりを作っても、受注できなかった場合は、その見積もりにかけた手間とコストが無駄となってしまうのです。

話を聞く西村官房副長官(左)と事業内容を説明する「キャディ」の加藤代表(右)

そこでキャディが考えたのが、データを使った受発注の効率化だったといいます。キャディでは、板金加工会社を中心に中小企業約150社の原材料のコストや製造過程、納期までの日数などのデータを算出し、蓄積しています。

オフィス内の壁の装飾や机などは取引先の町工場が製作したもの

そして企業からの発注があれば、コンピューターがそのデータベースを元に、「相見積もり」なしに最適な町工場を見つけ出し、受注先として提示するという、「瞬時のマッチング」を行っているというのです。

大企業から中小の町工場への発注というピラミッド型ではなく、フラットに企業と企業をつなぐ点で、町工場にとっても、買いたたかれて赤字となる心配もなく黒字を前提に受注ができるそうです。そして町工場にとっては、無駄な見積もりに時間を取らなくていいことなどから「モノづくりに専念できる環境ができる」として評判だということでした。

板金加工会社の“昔ながら”からの変化

精密板金加工会社「フクムラ」1Fは作業場 2Fは事務所になっていた

西村副長官の「キャディ」視察は、約30分と限られた時間でした。私は、画期的な取り組みだと感じつつも、まだイメージが十分掴めなかったため、視察に同行後、「キャディ」の協力会社である町工場を訪ねることにしました。パソコンなどの半導体関係の板金加工を得意とする、東京・足立区の「フクムラ」です。約50年前から三代にわたってこの工場を営んでいて、現在の従業員は6人です。

板金加工業の実情を話してくれた専務取締役の福村さん

キャディに登録をしたのは去年。昔ながらの付き合いの取引先が多い中、ちょうど仕事の
閑散期にキャディとの出会いが重なり、登録に至ったといいます。

「できる範囲の見積もりはこれまで自社で行っていましたが、相見積もりの後に成約するのは2~3割程度しかありませんでした」

キャディに登録後は、見積もりにかかる手間も時間も減少。それまでの仕事に加え、新規の受注も増えて、仕事の効率化に成功しているといいます。「キャディと仕事をする前まではベンチャー企業に少し不安を感じていた」というものの、そんな当初の不安は今や払しょくされたそうです。

頼りになったのは「ものづくり補助金」

工場内を見渡すと、2つの大きな機械が目に入りました。一つは板金の型を取る機械、もう一つはレーザーで自在に型を作れる機械だということです。値段は1台につき約5000万円。中小企業庁(経産省の外局)による「ものづくり補助金」に応募して得た助成金を元に購入したものだということでした。「ものづくり補助金」とは景気対策の一環として2013年から開始された中小企業に設備投資を促すための助成制度です。

「ものづくり補助金」で購入した機械にはその旨の表示が必須だという

「ただでさえ利益を出すのが大変な状況で、小さい町工場が補助金なしに新規の設備投資はとてもできませんでした」

こう補助金のありがたみを語ってくれましたが、実際に受給するまでの道のりは大変なよう。一度目は審査に落ち、二度目の審査で通ったそうで、申請のために準備すべき書類は多岐にわたり、手数料を払って外注業者に申請を任せる町工場も多く、結局審査に通らない町工場も少なくないといいます。

また申請が通ったとしても、支払われる補助金は1000万円。購入額の残り4000万円は自らの手でローンを組むなどしてかき集める必要があり、「国の補助はありがたい、けれどそれなりの手間とリスクはとてもある」とのことでした。

この「ものづくり補助金」、中小企業にとって大変助かる制度であることは確かなものの、効果がしっかりあがっているか、企業にリスクを抱えさせていないか、バラマキになっていないかなどの課題は常につきまとっているようです。

パソコンに組み込まれるという放熱性のあるアルミ部品

視察や調査から政治家が何を得て何につなげるか

西村副長官はこの日、「キャディ」のほかに、完全キャッシュレスでセルフレジ式のカフェの視察も行いました。2か所の視察先はどちらも、テクノロジーを最大限利用した「効率化」「省力化」に特化していることが特色でした。

今回の視察は、働き方改革によって迫られる労働の効率化や、10月に予定されている消費税の増税にともなう経済対策に向けて、テクノロジーによるイノベーションを推進していくための一環という視点で行われたようです。

西村副長官は視察後、ツイッターに 2つの視察先について「大企業が働き方改革を進めるしわ寄せがいかないよう進める中、有益な取組み」「現在軽減税率への対応取組中。若い起業家のこうしたチャレンジを歓迎」などと書き込みました。

視察先のカフェでセルフ決済をする西村官房副長官 東京・中央区

視察など現場の声や課題をどう政策につなげるか

今回に限らず、政治家が各地の施設や企業などを回って自身の目で現状を把握することは大事なことでしょうし、普段から地元民1人1人の声を聴くのもまた大事なことなのだと思います。そしてそれ以上に大事なのは、現場で見聞きした課題を、先のステップである政策立案や法案づくりにいかに適切につなげるかなのだと感じます。

一方で、今回の取材で関係した方々に「政治に期待すること」を尋ねてみたりもしましたが、「難しい質問ですね」と困った表情をされることもありました。中には「正直、政治をあまり考えたことがない」との答えも。本来は必ずつながっているはずの「政治」と「私たちの生活」ですが、その関わりを意識する機会もつい先日までの私と同様、少ないのかもと感じました。あるいは政治に期待してもしょせん…という空気さえ社会に広がっているのかもしれません。

そんな時代だからこそ、それぞれの現場や市井の声、あるいは表に出てこない声なき声についても、政治家がどう受け止めそれを国会審議や政策に反映させるのかに注目しつつ、今後の政治をしっかりと取材し発信していければ、と感じた初の視察同行取材でした。

(フジテレビ政治部 官邸クラブ 亀岡晃伸)

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