8月10日、常磐道であおり運転をして、無理矢理車を停止させたうえ相手の男性を複数回殴るなどした疑いで公開手配された43歳の男が、18日、大阪市東住吉区で身柄を確保し逮捕された。そして、同乗していた交際相手の女も、犯人蔵匿隠避の疑いで逮捕された。

「殴ったのは間違いない」などと、男は容疑を認めているというが、報道された動画を見て、あおり運転の末、ものすごい剣幕で車から降りるきて暴行される恐怖と、それがいつ自分の身にふりかかってもおかしくないと感じた人も多いだろう。

あおり運転含む「車間距離不保持」の取締りは増加

2017年6月、神奈川県大井町の東名高速で、悪質なあおり運転の末に夫婦が死亡した事件以降、あおり運転が社会問題となっているが、摘発件数はどのように推移しているのだろうか。

警察庁交通局が毎年公表している統計「交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況について」の中の、「高速道路における道路交通法違反の取締り状況」における「車間距離不保持」の数値に、あおり運転は含まれていてる。

高速道路においては、全体の道路交通法違反の取締り件数は近年減少している一方で、「車間距離不保持」の取締り件数は2018年から急激に増加している。
広報担当者の話によると、「車間距離不保持」の中にはあおり運転以外のものも含まれているそうだが、取締りが強化された結果であることは推察される。

平成26年~30年中、令和元年上半期の「交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況について」を編集抜粋
平成26年~30年中、令和元年上半期の「交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況について」を編集抜粋
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では、あおり運転に遭わないためには?そして、もし運悪く遭ってしまったらどう対処したらいいのだろうか?
ジャーナリスト、ノンフィクション作家で、交通事故などをテーマに取材執筆を行う柳原三佳さんに詳しい話を聞くことにした。

あおり運転に巻き込まれがちな運転の特徴は?

柳原三佳さん
柳原三佳さん

ーーまず、あおり運転は増えている?

走行中に遭遇するあおり運転は立証が難しく、件数を把握することは不可能です。最近はドライブレコーダーの映像によって、重大事故の原因が「あおり運転」であったことが裏付けられるケースも出てきています。

ーーあおり運転に巻き込まれがちな運転の特徴はある?

追い越し車線を低速で走り続ける、後方をしっかり確認せず突然車線変更をする・・・。「あおられる」という体験をしょっちゅうしているという人は、自身の運転に問題がないかどうか、今一度振り返る必要があるかもしれません。

「窓を絶対に開けてはいけません」

ーーもしあおり運転に遭ってしまったら、どう対応するのがいい?

自身の車を減速させ、あおってきた車を先に行かせる。高速道路の場合はすみやかに左の路肩に停止させれば、相手は簡単に戻ってこられません。
パーキングエリアやコンビニなどに入るなどの対応も、人目の多いところなら効果的でしょう。ドライブレコーダーをつけている場合は、即、映像の記録ボタンを押すことも忘れずに。

「あおり返す」「張り合う」「追い越しや追い抜きを繰り返す」といった行為は絶対にやめましょう。

ーー車を止めざるを得ない状況になってしまった場合は?

高速道路や自動車専用道路の真ん中はきわめて危険ですので、ハザードをつけて路肩に停止してください。

ーーこの時、やってはいけないことは?

相手が車を降りて近づいてくるようなことが起こっても、窓を絶対に開けてはいけません。車外に出てもいけません。

ーー常磐自動車道の事件では、窓を開けてしまったが?

繰り返しますが、絶対に窓を開けてはいけません。車のウインドウは人間のこぶしでは簡単に割れませんので、安心してろう城すべきです。

あおり運転を受け、停止させられた時点で、既に「暴力沙汰」

ーー先方の運転手がすでに冷静さを失っていたらどうする?

相手にならずとにかく無視することです。携帯を持っているなら、すぐに車内から警察に通報してください。

ーー暴力沙汰に発展する前に、警察へ連絡するのは有効?

あおり運転を受け、車を停止させられた時点で、既に「暴力沙汰」です
。ちゅうちょせず、警察に通報してください。

ーードライブレコーダーが普及する中、あおり運転はなぜなくならない?

世の中には順法精神のない人が存在します。
平気で法を犯し、自分の身勝手で他人の身体や生命に傷をつける人がいます。
これはもはや「あおり運転」だけの問題ではありません。突き詰めれば、「決まりを守る」「命を大切にする」などを徹底する、幼少期からの教育が何より大切なのではないかと感じます。

ーーあおり運転に遭わないため、常日頃から何に気をつけておくべき?

相手からあおられるような、無理な追い越しや割り込みをしないよう心掛けること。速度の速い車が迫ってきたら、道をふさがず、速やかに前に行かせること。万一、挙動のおかしな車を見つけたら、そうした車とは大きく距離を取って避けるべきです。



無理のない運転を普段から心がけることはもちろんだが、それだけではあおり運転のリスクを完全には防げないのが難しいところだ。
もし運悪く、あおり運転に巻き込まれた場合は、相手と対峙しようとは絶対に考えず、すぐさま警察に助けを求めてほしい。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

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