介護施設のメニューを高校生とコラボ
島根県浜田市にある介護事業所「あいおいの家」。
毎朝10時になると、昼食の準備が始まる。施設内で調理するのではなく、市内の会社から調理済みの食材が届けられ、それらを温めてから盛り付け、利用者に提供している。
施設側にとっては、人件費や労力などの節減につながっている一方で…
介護事業所あいおいの家 澁谷園子さん:
メニューの品数は揃っているんですけど、長いスパンで見たら、同じものが出てきたり季節感がなかったりするので、楽しみとしては薄いかなと思っている。
メニューに利用者が飽きてしまうという課題を抱えていた。その課題を解消しようと食材を提供する会社「齋藤アルケン工業」が取り組んだのが、新メニューの開発だ。
介護施設で提供される食事のメニュー開発。新たな視点を取り入れようとタッグを組んだのは女子高生だった。食のコンテストなどで受賞歴もある、浜田水産高校食品流通科の生徒たちに協力を依頼した。
その後 アイデアを寄せ合う開発会議を経て、試食会を開いた。
味の決め手となるのはサバ缶だった。
浜田水産高校3年 濱頭美咲さん:
皮と骨を除く作業をしています。
浜田水産高校3年 佐藤うららさん:
おじいちゃんおばあちゃんが食べやすいように切ってます。
食べやすさへの工夫を凝らし、出来上がったのは…
生徒たちが実習で作ったサバの缶詰をアレンジしたピザとカレーパン。
水産高校らしさを盛り込んだ。
浜田水産高校3年 島田香菜さん:
ちょっとドキドキしてるけど、おいしいと言ってもらえるように頑張りたい。
そして…
サバ入りカレーパン提供の日
介護事業所あいおいの家 澁谷園子さん:
水産高校の生徒さんがね、パンを作ってくださるよ。楽しみだね。
いよいよ新メニューを提供する日。
採用されたのは、食べやすさを考慮したサバ入りのカレーパンだ。改良を重ねたカレーパン作りに黙々と励む。
ーーどうぞ召し上がってください
利用者:
いつもはご飯だから、また変わったものでおいしい。
利用者:
いつも決まった食事だからたまにはいいですね。
ーーみなさん美味しいって言ってましたね。
浜田水産高校3年 佐藤うららさん:
めっちゃうれしかったです。
浜田水産高校3年 前田朋美さん:
最初は不安でいっぱいだったけど、おいしいと言って笑って食べてくれたのでよかったです。
介護事業所あいおいの家 澁谷園子さん:
喜んでもらえたのが何よりです。元気をいっぱいもらいました。
厚生労働省によると介護が必要な人の数は、2019年4月時点で島根県で約4万8000人。
鳥取県で約3万5000人。
高齢化により年々増え続ける一方で、介護をする側の人材不足も依然叫ばれている。
そうした中、今後さらに需要が見込まれるのが、介護食の提供事業と見られている。
今回の新メニュー開発に他社との差別化を図る意味でも期待を寄せている。
齋藤アルケン工業 齋藤憲嗣代表取締役:
新しい取り組みをしながら新しいアイディアで、より多くの介護施設さんに活用して頂いて少しでもお役に立てればなと思っている。
介護食にもっと楽しみを。
高校生たちと一緒に考案したメニューは、今後他の介護施設へも提供できるように検討。
こうした民間企業の奮闘も介護の現場を支えているといえる。
(山陰中央テレビ)