お盆休みを直撃しそうな大型の台風10号は、15日に西日本に強い勢力で上陸する可能性が高くなってきている。
そして、直接的な被害だけでなく、通過後の大変な暑さも心配されていて、関東では、17日の最高気温は群馬・前橋で39℃、さらに埼玉・熊谷では40℃という災害レベルの危険な暑さが予想されている。
梅雨明け以降猛暑が続く中、総務省消防庁は、7月29日から8月4日までの1週間の熱中症による救急搬送人数が1万8347人に達したと発表した。これは集計開始の2008年以降で、2番目に多い数字だという。
そして、屋外での熱中症の危険性はよく言われるが、このうち搬送場所の41%は住居なのだ。
「トイレは非常に悪い環境にある」
屋内では、エアコンの活用が推奨されているが、冷気が届かない場所として思い浮かぶのがトイレ。
たいてい狭くて熱がこもりやすく、通気性にも乏しいため、夏にトイレを使用して、汗が止まらなくなったり、頭がぼうっとしたり、という体験をした人もいるだろう。
そこで、今回はトイレに潜む熱中症のリスクについて考えてみたい。大阪府大阪市の泉岡医院の院長で、内科医の泉岡利於(としお)さんにお話を聞いた。
ーーまず、トイレで熱中症になるケースはある?
特に熱中症がトイレに多いとは聞きませんが、環境的に熱中症には温度と湿度が非常に重要です。トイレはそういう意味では非常に悪い環境にあると言えます。
ーーこの熱中症の原因とは?
先ほども挙げた室温(気温)と湿度、この2点です。
ーートイレのような密閉環境だと、内部の温度はどのくらい上昇する?
正確なデータはありませんが、他の室温より上昇することは当然予想されます。
「気張り」による循環器への負担も熱中症につながる
ーー特に気をつけた方がいいトイレの間取りは?
換気扇も窓もなく、狭いようなトイレは非常に条件が悪いといえます。
ーー暑い日、トイレの空間に何分以上いたら危ない?
何分以上という具体的なことはいえないと思います。個々のトイレ環境にもよりますし、本人の体調にもよります。
ーー高齢者にとって夏のトイレはどんな危険がある?
「気張る」という行為は循環器系に負担をかけると言われています。こうした負担が熱中症に結びつくので、特に高齢者では便も硬いものより、軟便がよいとされています。
また腹痛の時などは、副交感神経の刺激により、起立時に低血圧を起こしやすいとされています。トイレで意識消失を起こされる方の多くはこの神経反射によるとみられます。
もちろん、年を重ねることで暑さに対する感覚が鈍くなり、かつ耐性が下がるため、本人が気づかないうちに熱中症にかかる、ということも考えられます。
使用してないときにドアを開放しておく
ーートイレで熱中症にかからないよう、どんな対策が考えられる?
使用していない時にドアを開放して温度と湿度を下げることは重要かと考えます。もちろん一人暮らしの方は使用時もドアを開け放っておくのがよいと思います。
ーー家族がいるなど、ドアを開けられない場合はどうする?
使用時は無理でも、それ以外の時にドアを開放し、常に風通しをよくしておくことがよいでしょう。
ーーでは、便座を冷やすのは有効?
便座を冷やす効果は不明です。便座を冷やすことは難しいですし、どれほど体温を下げてくれるかも分かりません。少なくとも湿度には関係ないので、それほど効果は認められないようにも思います。
ーーうちわなどを持ち込むのは対策としてどう?
うちわに限らず、風通しをよくすることは大変効果的な対策だと考えます。
皆さんは、温度ばかりを気にされますが、熱中症には温度以上に湿度が重要な要素です。
日当たりなど個々の住居の間取りによっても条件は違うが、短時間だからとあなどってはいけない。トイレは必ず使う場所なので、熱中症のリスクを回避するべく、対策として挙げられた風通しには他の場所以上に気を付けたいところだ。