「負けられるなら負けてみてくれ!」

AI関連事業を行う会社「AVILEN」が、オセロに“勝つ”のではなく、“負ける”ことに長けている「世界最弱のオセロAI」を開発し、話題になっている。

Twitterでは開発者の吉田拓真さんが「負けられるなら負けてみてくれ!」とツイート。

このAIを使ったゲームが、7月25日の夜に公開された「最弱オセロ」。

PCやスマホで遊ぶことができるゲームで、プレイヤーは、オセロで“勝つことを目指す”のではなく、“負けることを目指す”わけなのだが、これが、なかなか負けさせてくれない。

リリースされてから間もない、7月25日の22時52分時点では「5勝2110勝4引き分け」と、AIが圧倒的に負けている。

そして、公開されてから約7日経った、8月1日の19時00分時点では「1729勝465804敗73引き分け」と、勝ち数は増えたものの、圧倒的に負けている。

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それにしても、囲碁AIの「アルファ碁」のように“強いAI”を作る理由は分かるが、“弱いAI”を作る理由はよく分からないし、想像すらできない。一体、何のために作ったのか?

「最弱オセロ」の開発者でAVILENのCTO、吉田拓真さんに開発した理由を聞いた。

開発理由は「ディープラーニングの勉強のため」

――「最弱オセロ」は何のために開発した?

大学時代に抱いた興味をきっかけに、勉強のために開発しました。
当時、囲碁AI「アルファ碁」が出てきて、自分も同じようなものを作りたいと思い、興味を持ちました。
それに加え、ディープラーニング(深層学習)の勉強もしたかった、という面もあります。


――“勝つ”ではなく“負ける”AIに目をつけた理由は?

強いAIもつくっていたのですが、YouTubeで「負けようとしてくるオセロ」の動画を見て、それが面白いと思ったのがきっかけです。

その動画もAIを使っていて、そのAIは負けようとはしてくるのですが、それほど弱くはなかったため、もっと弱いAIを作ろうと考えました。

石を少なくとるための最善の手を打つAI

――オセロに負けることに長けているAI。これはどんなしくみ?

YouTubeの動画「負けようとしてくるオセロ」は、“そのときに打つべき一番悪い手を打つAI”なのに対し、私が開発したAIは“石を少なくとるための最善の手を打つAI”です。

――やってみたが、なかなか負けられない。負けるコツはある?

まず前提として、「最弱オセロ」が打つ手は、一手一手すべてに意味があるので、最初の一手から考えて打つ必要があります。

コツとしては、あくまでも私の予想ですが、相手の打てる場所を減らすように打っていくことです。

オセロは相手が打てる場所を減らすことが大事で、そうすると、終盤、自分が好きな場所に打てるようになるかもしれません。

あとは、相手になるべく角をとらせることでしょうか。

「人間では負けられないと思っていた」

――「最弱」と謳ってはいるが、意外と勝ってしまっているのでは?

ほとんど勝たないと思っていたので、この結果にはかなり驚いています。
「最弱オセロ」に人間では負けられないと思っていました。

理由は定かではありませんが、公開した日(7月25日)の夜から多くの人に広まり、オセロの有段者がプレーしていて、「最弱オセロ」がかなり研究されているようなんです。

有段者に何度もやって研究されると、人間が「最弱オセロ」の弱さを上回ってしまうということだと思います。

「最弱オセロ」が勝ってしまっていることについては、私はとても興奮していて、みなさんが楽しんでくれているとプラスに捉えています。

――今後はもっと弱くすることも考えている?

一時的なイベントとして、7月29日の午前11時にバージョンアップし、さらに弱くしました。
あくまでも一時的なので、今は元に戻しています。

――どうやって弱くした?

方法は3つありまして、1つは、「book」と呼ばれる“手順暗記本”のようなものを作ったこと。
2つ目は、AI自体を学習させたこと。
3つ目は、「何手先まで読む」という設定を変えたことです。元々は7手先だったのを9手先にしました。

――一時的ということは、今後は弱くすることは考えていない?

今後は少しずつ「弱く」して、バージョンアップしていく予定です。

「AI時代の可能性を感じました」

――ネットで話題になっていることはどう受け止めている?

こんなにも多くの人が、オセロが好きで、AIについて関心があることに驚きました。


――負けることに長けたAI。どんなことに応用しようと考えている?

正直なところ、あまり考えていません。あくまでも会社全体での遊び、エンタメです。
ただ、「最弱オセロ」によって、AI時代の可能性を感じました。

「最弱オセロ」に負けるコツは教わったので頑張って負けてみよう。
そして、吉田さんの開発理由は「ディープラーニングの勉強」のためということだったので、今回の反響を糧に、世界を驚かすようなAIを開発してくれることを期待したい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。