お腹ぶよぶよのアジアゾウの「コサラ」

ライオンやキリンなど人気動物など約500種の動物たちに出会える、名古屋市にある東山動植物園。

東山動植物園といえばコアラ!観覧通路からガラス越しでコアラを見ることができるコアラ舎がある。

そして、日本最大級のアジアゾウ舎であり、ゾウのふるさと「スリランカ」をイメージした「ゾージアム。屋内観覧所には歴史や生態の展示があり、学びながらゾウを見ることができる、まさにゾウのミュージアムだ。

そんな東山動植物園にいる1頭のゾウが260キロのダイエットに成功したという。
そのゾウのビフォーアフターがこちら。

左:2018年8月頃撮影(4585キロ) 右:2018年9月30日撮影(4310キロ) 提供:東山動植物園
左:2018年8月頃撮影(4585キロ) 右:2018年9月30日撮影(4310キロ) 提供:東山動植物園
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違いがおわかりだろうか。

写真のゾウはアジアゾウのオス「コサラ」、2004年5月11日生まれで現在は15歳。
左の写真が2018年8月頃に撮影されたもので、お腹や背中、足周りがぶよぶよしてそうにも見える。このときの体重は4585キロ
右の写真が2018年9月30日に撮影されたもので、体重は4310キロだ

数字で見ると短期間でかなり痩せているが、60キロの人間に換算すると、約3.5キロのダイエットなため、写真ではそこまで大きく変わった様子ではないかもしれない。

東山動植物園によると、ダイエットの最終的な成果としては、2018年の春先に4620キロまで増えた体重が、その後順調に減り、約1年で260キロの減量に成功したという。

そもそもは、育ち盛りでよく食べるコサラに、どんどんエサを与えていたら体重が増えすぎて、2017年頃から太ってしまったことが原因だという。

2017年10月撮影 このときの体重は4300キロほど 提供:東山動植物園
2017年10月撮影 このときの体重は4300キロほど 提供:東山動植物園

では、どのようなダイエット生活を送ったのか。それは、例えば食生活を制限するなど大食漢のゾウにとっては涙ぐましい努力だったのか。
「コサラ」を飼育している東山動植物園に聞いてみた。

「こんにゃく作戦」など3つのダイエット法

ーーダイエットをしようと思ったきっかけは?

運動場で足を痛めてしまったためです。大型動物は足を痛めて立てなくなってしまうと、自分の体重で内臓を圧迫してしまい、死に至ります。ですので、足を痛めることは致命傷となります。体重による足への負担を軽減することが重要となるためダイエットを決意しました。

ーー他のゾウは同様に太ってなかった?

他のゾウもぽっちゃりぎみではありますが、すべてメスです。足への影響は体重が重くなるオスの方に出やすいので、コサラでダイエットに取り組みました。

ーーどのようにダイエットした?

ダイエットは単純にエサを減らせば痩せるのですが、ただでさえ野生とは比べものにならない限られた環境で暮らしているのに、食べることすら制限されるのはかわいそうだと思い、ダイエットと採食エンリッチメント(野生本来の採食行動を発現できるよう工夫をすることで、動物福祉と健康を改善するもの)を両立した取り組みを3つ行いました。

1つ目は、「こんにゃく作戦」といい、満腹感がありながら、ローカロリーをヒントにしました。ゾウの場合はカロリーも大切ですが、それ以上にタンパク質を控える必要がありますので、主食である干し草の種類を高タンパク質のものから低タンパク質のものに変更しました。さらに、干し草の量を減らして、その分を食べるのに時間がかかるどんぐりの木に変えました。

2つ目は、「軽いジョギング作戦」です。軽いジョギングなどして運動量を増やすことで、消費エネルギーが増えて、基礎代謝が上がるので、夜間にコサラが利用できる部屋をこれまで1部屋だったのを2部屋にして自由に移動できるようにしました。

3つ目は、「王道!採食エンリッチメント充実作戦!」です。採食エンリッチメントとして、エサの与え方の工夫などを多用しました。具体的にはエサを天井に吊して与えたりしました。
以上の3つの取り組みにより、2018年の春先に4620キロまで増えた体重が、約1年で260キロの減量に成功しました。ダイエット後の現在は足取りが軽くなりました。

天井に吊されたエサを食べるコサラ 2019年6月24日撮影 提供:東山動植物園
天井に吊されたエサを食べるコサラ 2019年6月24日撮影 提供:東山動植物園

リバウンドはしていないが、現在体重は増えている…

ーーリバウンドしていないか?

リバウンドはしていません。コサラは成長期ですので、体格(骨格)自体が大きくなっているので、単純な減量ではなくボディ・コンディション・スコアに照らして適正な体型を維持しています。ですのでリバウンド等ではありません。

ーー今後の課題は?

今後の課題は、閉園後の16時間以上を過ごす寝室の環境を整え、閉園後に仕込んだ採食エンリッチメントを翌朝まで維持できるようにすることです。閉園後に仕込んだエサが、飼育員が出勤する朝までにすべて食べつくされ、暇な時間ができてしまっているのが現状です。この問題を解決する画期的なシステムについては、正直それほどすごいもの!というわけではありませんが、暇な時間を改善できるエサのやり方ができるものを検討しています。恐縮ですが、具体的にはまだお伝えできません。


ーー今後はどうなってほしい?

骨格の成長に合わせて、適した体形を維持していって欲しいです。



コサラは賢くてコミュニケーションが取りやすい性格で、担当者の話によれば、それほど負担をかけずにダイエットに成功し、リバウンドもしていないという。そんなコサラの2019年7月現在の様子がこちら。

2019年7月30日撮影 提供:東山動植物園
2019年7月30日撮影 提供:東山動植物園

2017年や2018年の時よりも、引き締まった体になり、天井に吊されたエサを食べている6月24日よりも、がっしりとした体つきで筋肉質になっているという。

実は、体重は8月2日時点で4615キロあるそうだが、体重が増えているのはリバウンドではなく、まだ成長期にあり、骨格が大きくなっているためだという。

人間界でたとえるならば、某トレーニングジムのように“理想のカラダ”を手に入れたようなので、コサラにはこれからも健康的な姿で来園客を楽しませて欲しい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。