すでに川崎市は“国保”の催告でAI活用

仙台市が、住民税や固定資産税といった市税の滞納者からの徴収に、AI(人工知能)を活用することが分かった。

滞納者の職業や滞納額、納付の状況などをAIが分析し、滞納者が電話に出やすい時間帯を推測。それを基に職員が催促する仕組みで、早ければ11月頃に導入する見込みなのだという。

また、川崎市は昨年11月から、国民健康保険の電話催告業務にAIを活用している。

未納者の属性を基に、電話応答率の最も高い時間帯や、固定電話と携帯電話のどちらが適しているかを予測して、リスト化。
電話応答率を高めることで、効率的な徴収につなげるのだという。

仙台市は市税の滞納者へ、川崎市は国民健康保険の保険料の未納者への催告に、AIを活用することには、それぞれどのような背景があるのか?
また、どのようにして、滞納者・未納者が電話に出やすい時間帯を予測するのか?

まずは、仙台市の担当者に話を聞いた。

滞納者に接触するタイミングは“職員の経験”による部分が大きい

――市税の滞納者からの徴収にAIを活用、この背景は?

市税の滞納整理業務の手順などについては、仙台市の「市税滞納整理マニュアル」で定めているところなのですが、滞納者への接触手段やタイミングの判断は担当職員の経験による部分が大きく、客観的な指針などにより、これらの判断を行うのが困難であるという課題があります。

AIの予測により、催告の優先順位や最適な接触手段が見えるようになれば、課題解決に役立つものと考え、導入することにしました。


――どうやって電話に出やすい時間帯を推測するの?

事業者によって分析方法は異なりますので、現在のところ、仙台市として示せるものではありません。


――AIを活用することによって、どのようなことが期待できる?

収入率の向上につながることはもちろん期待していますし、多数の少額案件を効率的に処理できることで、難しい案件に対して、よりリソース(経営資源)を割くことができ、全体として業務が効率化できるものと考えています。

また、職員の経験によらない催告などができるようになるため、定例的な人事異動などによる影響も比較的、少なくなり、これによって業務の平準化が期待できます。

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未納者との接触率向上が課題となっていた

つづいて、国民健康保険の電話催告業務にAIを活用している、川崎市の担当者にAI活用の背景を聞いた。

――国民健康保険の電話催告業務にAIを活用している。その背景は?

コールセンターによる電話催告業務は、初期未納者を、電話をかける対象としていることから、接触ができれば、納付の可能性が高いことが想定されています。

また、接触率の向上が従来からの課題となっていたため、導入しました。


――どのようにして電話応答率の高い時間帯を予測するの?

事前にデータアナリストが、電話応答に影響しそうな滞納者の情報(性別・年齢等)を特定します。

その後、機械学習をベースとしたAIアルゴリズムを活用し、特定した情報と予測したい過去の時間帯別の電話応答実績を学習データとしてAIに学習させています。

その結果として特定した情報から、時間帯別の電話応答予測が求められ、その予測を基に電話をかけています。

AI導入後、最初の電話でつながるケースが増えてきた

――導入前と後を比べると、電話の応答率や保険料の収入率は上がった?

昨年11月から導入したため、対前年同月比などの具体的な数値分析ができておらず、どの程度、収入率の向上につながったかについては、回答できません。

ただし、導入当初、コールセンターのオペレーターから、AIの導入後、最初の電話でつながるケースや電話で相手としっかり話ができるケースが体感的に増えてきたという声がありました。

また、AIが作成する電話応答予測によって、単身者や家族世帯、高齢者世帯などの属性に応じて、接触率が高い時間帯に違いが表れていることも分かりました。


すでに導入している川崎市は、体感としてAI導入の効果があるということだった。
こうした業務にAIを活用して、税金や保険料の収入率が高まるだけでなく、全体としての業務の効率化にもつながって、よりよい行政サービスになることを期待したい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。