犬は飼い主の「うれしい」「怖い」に共感! 短時間の気持ちの変化も察知できるらしい

カテゴリ:暮らし

  • 飼い主の短い間隔の“情動”の変化も犬は察知し共感できる
  • 長く一緒に生活した飼い主と犬は、感情が伝染しやすい!
  • 自分の愛犬が共感しているか、わかる方法を聞いてみた

愛犬と触れあっている時に、「落ち込んでいる自分の気持ちをわかってくれてるな」と感じたことはないだろうか?

これまでの研究で、犬は人間の出すシグナル、例えば指差しや視線などに対して高い反応性を示すだけでなく、「うれしい」「悲しい」「怖い」などの“情動”の変化の違いも認知できることは知られていた。


そして、麻布大などの研究チームによる最近の研究で、短い時間で飼い主の“情動”が移り変わったとしても、犬は察知し共感することがわかったという。また、一緒に生活した期間が長いほどその傾向が強く、オスよりメスの方がより顕著にみられたという。

犬は飼い主に従順なイメージで、何となく気持ちをわかってくれているような気がしていたが、今回の研究はどんな意味を持つのか?
麻布大学の菊水健史教授に詳しく話を聞いてみた。

“情動”とは心の動きの最も原始的なもの

麻布大教授 菊水健史さん

――なぜこの研究をやろうと思った?

イヌとヒトの共生は家畜化の中で最も古く3万5千年ほどといわれており、その間にお互いの感情や情動を読み取ることでその共生がうまくいくだろうと仮説しました。そのため実験を行いました。

――「情動」とは、どういう意味?

心の動きのもっとも原始的なものです。怖い、ストレス、うれしい、など。
きれいとか、おいしいなどは感情であり、複雑です。
また経験や文化によってかなり修得されます。その根源にあるのが情動です。

――飼い主の感情が犬に伝わるかの研究は、これまでどんなことがわかっていた?

これまでの研究は飼い主が泣きまねをすると近づくなどの行動を評価したものがありましたが、近づくからといって、イヌも悲しい気持ちになっているとは限りませんでした。
イヌの情動を評価することが欠けていました。
特に情動は秒単位で変化するものですが、短い時間でのお互いの情動を評価し、比べる研究もありませんでした。

飼い主のストレスを察知し、飼い主を見る行動が増えた

――今回どんな研究を行った?

飼い主の感情が短い時間で変わった時、その感情が犬に伝わるかどうかを調べました。

――その方法は?

13組の犬と飼い主で実験を行いました。
飼い主が、犬の見える位置に座り、「リラックスした状態」と暗算や専門的な文章の内容を説明させるなどの「ストレス状態」を体験。飼い主と犬の心拍を計測して、犬のほうの行動はビデオで解析しました。

実験に参加した犬 提供:研究チーム

――飼い主が強いストレスを感じた時、犬はそれを察知してどんな行動する?

今回の実験では、イヌの行動は制限していました。飼い主に触れたりできない状況です。
その場面では、飼い主を見る行動が増えました。

――逆に、飼い主がリラックス状態の時、犬はそれを察知してどんな行動する?

飼い主を見る時間が短く、休息するような行動が認められました。

“情動”が伝染することは、ヒトとイヌの共生に役立っていた

――今回の研究でわかった新たなことは何?

15秒という短い時間ごとに飼い主の感情が変わっても、犬は察知できることがわかりました。
そしてその飼い主の情動の変化と同期する能力は、イヌとヒトが生活する時間が長くなるほど強くなることがわかりました。
これは情動伝染(情動が移ること)の進化理論にも一致した結果でした。

――短い時間で飼い主の感情を犬が察知できると、何がすごい?

情動の機能は短い時間で変化することにあります。例えば天敵が近づいてきたことによる緊張、群れでの狩りにおけるターゲットの共有や、仕留める際の興奮など。
そのような状況で適切に情動が伝染することは、ヒトとイヌの共生においても役立ったと考えられます。

――現代でいうと、どんな場面で犬の感情の察知をみることができる?

例えば、盲導犬は今こそ訓練しますが、もともとは、弱視の方がイヌを連れて歩くと歩きやすいというのが発端です。その場合、飼い主が交差点や不安があると、それを犬が察知して、行動を変えたことによると思われます。
現在の盲導犬も、そのようなユーザーの変化を感じ取っていると思います。

また、病院で活躍するファシリティードッグでも、患者の気持ちに合わせた行動をとります。
悲しみや苦痛にある患者さんのそばでは静かに寄り添い、外で遊びたいけど遊べない子供と接するときには少しやんちゃな行動を示します。

――犬が飼い主を助けるニュースをたまにみかけるが、 これも犬が飼い主の気持ちがわかるから?

まだ議論の余地はありますが、その可能性はあると思います。

――メス犬のほうが察知する能力が高いという結果があるがなぜ?

これはイヌに限らず、共感性に関する能力には性差がありメスの方が高いことが知られています。
その背景は、メカニズム的にはエストロゲンとオキシトシンが関与するだろうといわれています。

自分の愛犬が共感しているか、わかる方法は?

――自分の犬が感情を察知できるか簡単にチェックする方法はある?

今回は心拍計という特殊なものを使いました。
ただ、これは通常は難しいので、例えば、飼い主さんの気持ちの変化の際にイヌがみているかとか近づいてくるか、などでもいいかもしれません。

――飼い主がTVでスポーツ観戦中に歓喜した時、犬も喜ぶとか、 失恋して元気がない時、犬も元気がないとか。 こういう場合も感情を察知していると考えてよい?

絶対とは言えませんが、その可能性はあると思います。

――教授も犬を飼っているそうですが、教授の愛犬は、教授の気持ちわかる?

飼っています。スタンダードプードル2頭です。特に10歳のメスはとても上手に私の気持ちを理解してくれていると実感します。スポーツ観戦時に私が興奮すると、イヌも楽しそうに遊び始めたりします。
仕事がたまって、ストレスを感じていると、足元で静かに寝てくれます。そういうことは多々ありました。

――今回の研究結果を受けて、この先、どんな研究をする予定?

まだ具体的には決めていませんが、ヒトとイヌの共同作業能力などを知りたいと思っています。
つまり、一緒にいることでのお互いの利益は何か、を探るような実験です。

イヌとヒトの共生は3万5千年ほど。
今回の研究で、飼い主の気持ちを犬が察知できていたから、ここまで長く人と犬がうまく付き合ってこられたということを裏付けたようだ。

一緒に生活している時間が長い飼い主ほど「そうだと思ってた」という人は多いかもしれないが、言葉にしなくても通じ合える存在がいるというのは心強いものだ。


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