サボテンが成長しすぎて天井に…

身の回りにある植物が短期間で急成長を遂げる…というのは、普通はおとぎ話やSFの中だけのことだろう。

しかし、事実は小説より奇なりという言葉もあるように、サボテンがあっという間に想像を超える育ち方をした、という現実を我々は目の当たりにすることになる。

そんな「まさか」と思われる場面をとらえたツイートが7月24日につぶやかれ、約3万1000のリツイートと約9万7000の「いいね!」を集めている。(8月1日現在)

それが、こちら!



研究室のサボテン、成長スピードがおかしい 10日で3cmくらいのびてる

というコメントとともにアップされたのは、細長く伸びすぎて今にも天井に届いてしまいそうなサボテンの画像。ひと目見ただけで優に1mを超えていそうだが、私たちが見慣れている、植木鉢の中にこじんまりと収まったサイズのサボテンとは全く違う。少なくとも、屋内でこれほどの大きさのものを目にする機会は、ない。

根元の植木鉢にある付せんには、「天井まであと11.5cm」(6月6日)「天井まであと7cm」(6月20日)と書かれ、サボテンはわずか2週間で4cm以上も伸びたようだ。さらに、「天井着 残りゼロmm」「場所移動しました」(7月8日)との文言もあり、サボテンが一度天井に達してしまったため、やむなく鉢を移動させたこともうかがえる。

研究室で成長し続けるサボテン
研究室で成長し続けるサボテン
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投稿者は、武蔵野美術大学の芸術文化学科研究室に所属している木村桃子(@momo0306mokm)さんだ。
一体どのような育て方をすれば、この驚きの成長スピードで、これほど大きくなるのだろうか?

そのあたりの事情を知るべく、木村さんにまず話を聞いてみた。

購入時は現在の1/3くらいのサイズ

ーーこのサボテンは、研究室にはいつから置いてある?

去年の春頃に教授が購入した、と聞いております。

ーーその時はどのくらいの大きさだった?

現在の1/3くらいのサイズだったそうです。

当初の姿のサボテン
当初の姿のサボテン

ーーサボテンの種類は何?

分かりません。

ーー普段はどう育てている?

週1くらいで水をあげていました。

現在135cm…10日で3cm弱伸びている

ーー目に見えて大きくなり出したのはいつ頃から?

ここに来た当初からよく伸びていたそうです。

ーー現時点でどのくらいの大きさになっている?

土の表面から測って135cm(7月29日現在)です。

ーー今、どのくらいのペースで成長している?

だいたい10日で3cm弱くらいは伸びています

ーー研究室の天井にまた達したらどうする?

本日(29日)、窓辺に移動しましたが、鉢の植え替えも検討しています。

しかし、少し移動しただけでかなり先端がぶるぶる揺れるので、植え替えの際に折れないか心配ではあります。

ーー研究室の人は何と言っている?

今年の春ごろから、「前よりも伸びてる」と話題になっており、付箋で成長記録をつけていました。記録を付けると、本当に短期間でよく伸びているのでみんな驚いています。

木村さんの話によると、普通に育てていたにもかかわらず、サボテンは研究室に置いた当初からぐんぐん大きくなっていたという。となると、原因はどこにあるのだろう?サボテンの種類も関係あるのだろうか?

そこで、中部大学応用生物学部環境生物科学科の講師で、サボテンの研究を行っている堀部貴紀さんにお話を聞いてみた。

柱サボテンの「鬼面角」では

ーーこのサボテンの種類と特徴を教えて?

断定はできませんが、おそらく柱サボテンの鬼面角(きめんかく:Cereus repandus)ではないかと思われます。根拠としては、トゲが短く少ない外見や凌(ひだひだの部分)の数などが挙げられるでしょう。

特徴ですが、分枝して樹木状になること、耐寒性が高く日本でも野外越冬できること、などでしょうか。
鬼面角は非常に大きくなることもあり、支柱などで支えれば折れることなくどんどん大きくなります。

急成長したサボテンと同種とされる柱サボテン
急成長したサボテンと同種とされる柱サボテン

ーーここまで育つのはサボテンではよくあること? またどのくらいまで育つ?

頻繁ではないと思います。あくまで私の主観ですが、鉢植えのサボテンが1.4m程度になっているのを見ることは珍しいです。

どのくらい育つかですが、ほっておけばどこまでも育ちます。10m程度はいくと思いますが、茎が折れないよう注意する必要があります。

ーーこの種類だから成長した? 他の種類も同様のことが起こる?

背が高くなるのは、先に挙げた、柱サボテンと呼ばれるグループとなります。

第一の原因は「光環境」

ーーでは、サボテンがこのようになった原因は何?

細長くなったのは、光や肥料による部分が原因と思われます。

まず第一に光環境です(光が弱いことや波長条件によります)。例えば、野外である植物が他の植物の陰にいるとすると、その植物には光が十分に当たらず、光合成を行う上で不利になります。このように光が不足する場合には、陰にいる植物は縦方向に伸長して光を得ようとするわけです。

また次に肥料でしょうか。肥料不足により、タンパク質の合成が不十分となってしまい、結果として光合成能力も落ちてしまうこともあります。
そのほかにも、多湿条件や与える水の量が多いと徒長しやすい、といわれていますが、光の要素に比べたら影響は小さいと思われます。

ーーこの現象は何という?

言葉としては「徒長」(とちょう)といいます。徒長は植物全体に一般的にみられる現象で、室内に置かれることの多いサボテンや多肉植物ではよく問題になります(玉形のサボテンが徒長して頭が三角になったりします)。徒長した植物は細長いので折れやすかったり、病害虫に弱くなったりと問題点も多くあります。

光の強い場所に移すと徒長は止まり、再び茎が太くなります。ですので、サボテンを「強光」「弱光」「強光」の順番で移動させると、中央部分がくびれた形のものになったりします。

ーーこのまま育ち続けると最終的にどうなる?

自重で茎が曲がるか、途中で折れるのではないかと思います。

対処法は「日当たりのよい場所」への移動

ーー徒長に対するいい対処法があったら教えて?

太くするのであれば、日当たりのよい場所に移動させることです。折れないように支柱を立てることもいいと思います。
短くしたい場合は、途中で切って植え替える(切り戻し)ことが有効です。

ーー天井に到達したらどうしたらいい?

サボテンは天井についても、生長が止まったり死んだりすることはなく、曲がった状態で伸び続けると思います(茎が曲がり、自重で折れるかもしれませんが)。したがって栽培者がどうしたいかによります。短くしたい場合は先の切り戻しがいいです。

ーーサボテンのよい育て方についても聞かせて。

基本的には、日当たりのよい場所に置くこと(光が強すぎると日焼けするので注意が必要)、水をやりすぎないこと(水のやりすぎで枯死することが一番多いと思います)、冬の低温に注意すること(0℃以下に遭遇すると枯死するサボテンは多いです)が挙げられます。

何よりサボテンは、種によって最適な栽培方法が異なるので、育てているサボテンに適した栽培方法を調べることがまず大切だと思います。


話題となった今回のサボテンだが、細長く急成長した原因は、光や肥料の不足によるもので「徒長」という現象だった。
最近、窓際に移動したということなので、専門家の堀部さんの話によれば、今後太くなっていくのではないだろうか。






プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。