吉本興業の元“伝説のマネージャー”が語る今回の騒動…契約書は夢見る若手芸人にとってマイナス?

  • 吉本興業の元“伝説のマネージャー”大谷由里子さんが生出演で語る「今の吉本興業」
  • 大谷由里子さん「吉本が変わるだけでなくタレント側も変わるべき」と苦言
  • 芸人と個別に契約書を結ぶことを吉本が発表…売れない芸人にとって実はマイナス? 

元吉本興業プロデューサーが語るお家騒動

7月25日の「直撃LIVEグッディ!」に、元吉本興業プロデューサーの大谷由里子さんが生出演した。

大谷さんは、横山やすしさんなど多くの芸人を売り出した“伝説のマネージャー”と呼ばれていて、現在は吉本での経験を生かし、人材育成のため全国で研修・講演活動を行っている。

今回の吉本興業“お家騒動”について、大谷さんの感じたことを語っていただいた。

安藤優子:
率直に、ここまでの一連の騒動の広がりについて、大谷さんにはどのように見えているんでしょうか?

大谷由里子氏:
(吉本興業は)ちょっと初期対応がまずかったかもしれないですね。ナベプロさんのタレントも(同じ“闇営業”に)出ているんですよね。でも、謝罪・原因調査・改善・処遇を伝えるという、初期対応をきちんとやっているんです。

安藤優子:
初期の対応を間違ったがために、騒動がここまで広がったんじゃないかということですね。

大谷由里子氏:
吉本は、もうちょっと調査しようと考えていたと思うんですね。きちんと裏を取ろうと思っていた間に、「俺らも謝らなきゃあかん」ということで先走ったというのはあるんじゃないかなと思います。

安藤優子:
亮さんらが会見で泣きながら「『本当のことを言って謝りたい』と言ったが止められた」と話していました。これについてはどう思われますか?

大谷由里子氏:
裏を取ろうというのは絶対にあったと思うんです。「うちらはこういうことをしているから今はちょっと待て」と…、もうちょっとコミュニケーションを取れていたら良かったかなとは思います。それから、かつてはインターネットテレビによる記者会見とかなかったわけじゃないですか。時代が変わっていたということを、吉本が読み取れていなかったんじゃないかと。

安藤:
吉本サイドとしては、インターネットテレビで会見するとは思わなかったということですか。

大谷由里子氏:
思わなかったと思います。昔は(会見をするときは)テレビ局と「いつにしましょう」みたいなものがありましたから。それをやっている間に(2人が)先走って会見をやってしまったんじゃないかなって。

大谷由里子氏:
「会社が古い体質だったらアカン」と言うんだったら、私は会社が変わるだけじゃなくて、タレントも変わらなきゃいけないと思います。アメリカなんかは、スクリーンアクターズギルドっていう、俳優さんたちの組合がちゃんとあって、「最低これくらいの賃金はください」などと交渉するんです。会社が変われって言うだけだったら、プロじゃないです。自分たちも変わらなきゃいけないと思う。

安藤優子:
芸人さんたちもそれなりの団体を作って、交渉力を持てということですか。それとは反対に、岡本社長は会見で「吉本はファミリーだから」と言っていました。しかし、若手の人たちからは「俺たちファミリー感ゼロだけど」という反応もありましたよね。なんでも「ファミリー」で蓋をして決着をつけようとするのは、私は古すぎると感じるのですが?

大谷由里子氏:
そうですね。ただ、良いところと悪いところがあるんですよ。ファミリーだから、懐けば仕事をもらえることもあるし、逆に、自分の存在に気付いてもらえなかったら、なかなか仕事がもらえない。

ヨネスケ:
僕らの年代の芸人は、箸にも棒にもかからないやつを救ってくれた、手を差し伸べてくれたのが事務所とかだったんですよ。ヨイショの下手なやつは落っこちていくとか、そういう世界だったんです。芸だけじゃなくて、人間性とかいろんなものをひっくるめて…いわゆる家族とか戦友という形で、助けてくれた。

大谷由里子氏:
吉本は懐くとすごく優しい会社です。横山やすしさんなんてまさにそうで、何度も事件を起こしても、ちゃんと面倒見ていました。

安藤優子:
懐くって…、どうしたらいいんですかね。

ヨネスケ:
それはね、こうしろああしろじゃダメなんですよ。それを自分の感覚で知っていくというのが、厳しい芸人の世界で食べていく方法なんですよ。

安藤優子:
でも、そのたたき上げ世代の芸人さんと、学校を出て芸の道に入ろうとしている若手の人たちの感覚は、ずいぶん違ってきているんじゃないですか?

大谷由里子氏:
私は今、企業研修がメインの仕事なんですが、これは芸人さんだけのことではなくて、今の人たちは「何々してくれない」という人が多すぎるんじゃないかと感じます。「何々してくれない」ではもう通用しない、「自分たちで勝ち取るんだ」と。特に芸能界を選んだ以上は、自分の力でね。

大村正樹フィールドキャスター:
では、こぶしを振り上げてしまった芸人さんたちはどうすればいいと思いますか?急に懐けと言われても、加藤浩次さんは情報番組のキャスターをされていますし、世論がどう見るかっていうのもありますよね。

大谷由里子氏:
そこまでこぶしを上げたんだったら、「ギルドを作る」、それも一つだと思います。最低賃金はどれくらいにするんだ…とかね。でもそこに、誰が入ってくるかなって。

ここで、グッディ!生放送中に、速報が入った。

倉田大誠アナウンサー:
吉本興業が今後、必要とする所属タレントとは契約書を交わす方針を決めたことが分かりました。これまで吉本興業はほとんどのケースで口頭での契約しか交わしていなかったんですが、今回は全員ではなく、ケースバイケースで契約書を結ぶということです。反社会的勢力の排除、体制構築などを目的とした、経営アドバイザリー委員会を設置することも決定。他にはマネジメント体制、ギャランティに関する諸課題についても当たっていくということです。

大村正樹フィールドキャスター:
契約書の話に関しては、ちょうどきのう(24日)、公正取引委員会の山田昭典事務総長がコメントしたばかりです。

公正取引委員会山田昭典事務総長:
契約書がないことが直ちに問題になるわけではない。契約内容が不明確なことで優越的地位の乱用などを誘発する原因になり得る。

軍地彩弓:
「契約書を交わす」と岡本社長が先日の会見のはじめに言えば、この騒動もある程度収まったんじゃないでしょうか。

安藤優子:
こういう体制を取ることによって、少しは理解が進むというか、今回の問題は整理されるんでしょうか?

田村勇人弁護士:
今後は契約書の内容が公平なものなのかとか、契約書の内容が守られるかというところが問題になるので、まだ入り口に過ぎないと思いますね。契約書を結ぶ人と結ばない人が出てくるので、ある程度選別されるということはあるのかなと思います。契約してきちんと最低賃金を払うとなると、それではやってられないタレントは正直生まれてくる。そこが今まで吉本の、法的にはダメだけれど、ファミリーとしてはいい部分でもあったんだと思います。

安藤優子:
なるほど、そういう人たちも一緒に吉本として包括してきた部分は良かったと。

田村勇人弁護士:
ただ、それはもう無理だということで、変わっていくんでしょうね。

安藤優子:
大谷さんは、このことについてどう思いますか?

大谷由里子氏:
私は(契約書を結ぶことは)いいと思います。私は元々吉本上がりなので自分が会社作ったときに口約束でいいやと思っていたら偉い目にあったんですよ。だからやっぱり契約書を作ってかないとあかんなと経験したんで…、契約書を作るっていうのはすごく良いことだと思います。

大谷由里子氏:
私は、売れてない人ほど不安だと思います。吉本って私がいたときからそうなんですけど、“自称吉本”っていうメンバーがいっぱいいるんですよね。仕事を吉本から一個ももらってなくても、芸人さんのまわりにいることによって「ちょっと前説やってみるか」とか。ヨネスケさんはすごくわかると思うんですけど、「ちょっと俺の営業についてこいや」とか、「ちょっと出番やるで」ってお小遣いもらえるメンバーとか。それでも吉本から一個ももらってないメンバーっていっぱいいるんですよね。そんなメンバーが逆に吉本を名乗るなと言われたときにどうなるのかと。彼らは「吉本の芸人です」っていうのが拠り所だったりするんですよね。

安藤優子:
ということは吉本興業を拠り所にしてきた“自称吉本興業”の人たちはもしかしたらそういった居場所を失う可能性もあるということですかね。

大谷由里子氏:
会社名なので勝手に使うなって可能性が出てくることもありますね。

ヨネスケ:
でも、それで芽を摘んでしまうのはもったいないですね。

大谷由里子氏:
私もそう思います。逆にきっちりすることによって、夢は見ているけどまだ全然手に職がない子たちの芽を摘んでしまうということもあると思います。

安藤優子:
そういう風に功罪両方あるんじゃないかというご意見だと思うんですけど、こうなってくるとやっぱり吉本興業は「ファミリーから企業」に転換するってことになるんじゃないでしょうかね。

大谷由里子氏:
多分、今、色んな会社がそうなっているんですよね。本当だったらみんなで、ファミリーで物作ろうといきたいところが「9時~5時で終わらせないといけない」とか、「働き方改革」というのが出てきてますからね。ハリウッドは組合がしっかりしてるから、「8時間以上働かせたらいけない」メイクさんの組合とかいろいろあるんですよ。そうするとプロデューサーがいい画を撮りたくても、キャスティング会社が「もう終わって、巻いて」っていうこともあるんです。

安藤優子:
なるほど。働き方改革って働く人間にとってはすごく大切な部分もあるんですが、それが芸能の世界にうまく親和するかどうかっていうとちょっと難しいかなってとこもありますよね。

安藤優子:
今回は加藤浩次さんが、経営陣に辞めてくれと迫ったわけですが、これについてはどう思いますか?

大谷由里子氏:
私は申し訳ないけど、極楽とんぼを売るのに吉本のマネージャーがどれだけ頑張ってたかっていうのも…。加藤さんは「自分で」と思ってるかもしれないですけど、私たちはマネージャーを見てきたので。もうちょっとちゃんとコミュニケーションをとってお互い原点に戻るって大事じゃないかなって、私は思うんです。いまは感情的になってるかもしれへんけど、一生懸命会社が売っていた時期も私は知ってるので、もうちょっとコミュニケーションをとってもらったらなって。

安藤優子:
その一方でどう喝めいた発言が岡本社長からあったと亮さんや宮迫さんが言っています。岡本社長についてはどう思いますか?

大谷由里子氏:
もともと大阪の会社なので、口が悪いところはあります。ただ、私も大﨑さんにボロカス言われたけど、信頼関係がある時って同じ言葉でもパワハラじゃないんですよね。信頼関係がないと、服を褒めてもセクハラみたいなね。そういうところもあるので、今はお互いがどういう状態なのか、どういう距離なのか、お互いをおもんぱかるのが大事になってくると思います。

安藤優子:
信頼関係があれば、また違ったんじゃないかというご意見ですね。ですが私は、亮さんが謝りたいと言った時に、親として「いい環境で謝りなさい」と言ってあげてほしかったなと思うんですが…。

大谷由里子氏:
だから、コミュニケーションを取れたらなと思うんですよ。どうやって謝るとか、「もうちょっとこれ調べるから待って」とかあれば彼らも安心したと思うし。でも本当にどこの会社も、ジェネレーションギャップや、上司は深い意味で言ってないかもしれないけど部下はパワハラと取るシーンもいっぱいある。だからコミュニケーションって大事だなと私は思っています。

(「直撃LIVE グッディ!」7月25日放送分より)

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