気象庁は31日、東北北部の梅雨明けを発表し、梅雨のない北海道を除くすべての地方で梅雨明けとなった。
ようやく夏本番が到来ということで、早速ビアガーデンを予約した人がいるかもしれないが、そんな飲食業界では予約したのに来ない「無断キャンセル」が長年の問題になっている。

「無断キャンセル」は、飲食店の予約を客側が忘れたり、別の予約を優先したりするなど勝手な理由で連絡もせず一方的に破ってしまうことを言い、他に「ノーショー」「ドタキャン」などとも呼ばれていて、この問題は編集部でも度々取り上げてきた。

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これまでなかなか有効な解決策が見つからない中、7月13日に登場した新サービスが注目されている。
その名は「ノーキャンドットコム」と言い、「無断キャンセル」で発生したキャンセル料を弁護士が代行回収するという。

「ノーキャンドットコム」公式サイト
「ノーキャンドットコム」公式サイト
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「無断キャンセル」被害は年間2,000億円

2018年に経済産業省が発表した「対策レポート」によると、「無断キャンセル」による飲食店の被害は年間2,000億円。
債務不履行や不法行為で店舗側が客側を訴えることができるとしているが、このレポート自体には強制力や法的な効力はまったくなかった。


こうした状況の中、弁護士が飲食店に代わって「無断キャンセル」の予防や債権の回収を代行する業界初のサービスとなるのが「ノーキャンドットコム」だ。

いよいよこの問題に弁護士が参入するということで解決への期待が膨らむが、まずは手順を見てみる。
店舗は事前に無料の会員登録を行い、キャンセル料などをまとめた「キャンセルポリシー」をグルメサイトなどで告示しておく。
無断キャンセルが発生したら、店舗は「ノーキャンドットコム」に債務回収を申し込む。
「ノーキャンドットコム」は、無断キャンセルした客から代金を回収し、30%の手数料(および消費税)を差し引いた金額を店舗に支払う

手順としては簡単で、無断キャンセルした客を探したり、裁判所に訴えたり、面倒くさそうな手間は一切ない。
「ノーキャンドットコム」は、客の名前と携帯番号が分かれば請求可能で、日本全国に対応しているという。
しかも料金は成果報酬のみで、申し込みはWeb上で完了する。

いいサービスに思えるが、気になるのはいったいどんな方法で回収するのか、ということ。
何人体制なのか?そして、無断キャンセル撲滅にどの程度効果があると考えているのか?
同サービスを始めた、東京弁護士会所属の北周士弁護士に聞いてみた。

飲食店はもの凄く気軽にドタキャンされている

北周士弁護士
北周士弁護士

――どうやって回収するの?

基本的には「飲食店が把握している情報」を使用して弁護士名義での「督促」を送付する形になります。

――客が支払わなかったらどうなるの?

お店が希望する場合は訴訟等の手続も可能ですが、その場合は別途料金がかかります。

――でも大口予約でないと採算が合わないのでは?

小口であっても採算があう形でシステムを組んでおりますのでその点は問題ありません。
例えば3000円の回収依頼でも可能です。

――ノーキャンドットコムを始めたきっかけは?

元々は「なぜ飲食店だけこんなに気軽にドタキャンが発生するのだろうか?」という疑問から誕生しました。
私自身飲食が大好きであり、日々色々なお店に食事に行っています。
日本には素晴らしい飲食店が多く、とても美味しい食事を、極めてリーズナブルな価格で体験することができます。

しかしながら、ネット上のニュースを見ても、飲食店はもの凄く気軽にドタキャンがされているように感じています。
この損失を放置してしまうと、飲食業界の健全な発展が妨げられるだけでなく、飲食業界で働く人達の適正な給与等にも非常な悪影響が発生してしまい、結果として日本の飲食業界が発展しないのではないかと思い、1人の飲食好きとして飲食業界の発展の一助になれればなと思い開始しました。

――「弁護士が回収する」とアピールするのは抑止力になにかプラスがある?

はい、あるのではないかと思っています。
また法律上も適切に債権回収を代理できるのは弁護士を含めた一部の資格職のみなのでその点でも意義があると思っております。

お店の損害を証明する「キャンセルポリシー」

――「ノーキャンドットコム」は「キャンセルポリシー」の作成サポートもしているが、そもそも「キャンセルポリシー」とは?

予約者に対して「無断でキャンセルした場合には損害賠償としてこの金額をいただきます」という表記になります。

――「キャンセルポリシー」がないと回収はできないの?

必ずしもそうではないのですが、損害の立証等が困難になる可能性がありますので、可能な限りキャンセルポリシーは掲載していただくのが望ましくあります。

――見本のような「良い例」があったら見せてほしいが…

私が作成したものは別に特殊なものではありませんが、一応 店舗が登録した特典として配布しているものですので公開につきましては避けさせていただきます。

――では、逆に「ダメ」なキャンセルポリシーとはどんなもの?

例えば「コース料金」と「席のみ予約」の記載が分けていない場合、ダメとまでは言えないのですが、損害の計算が異なる可能性があるため、この2つは分けておいた方が良いと思います。
また、「席のみ予約」の場合は、明確に1人いくらと記載しておいた方がよいでしょう。

――例えば「キャンセルしたら100万円頂きます!」とかでもいい?

あくまでドタキャンによって発生した損害を補填するものに過ぎないため、コース料金であればコース料金相当額等に限定されます。

――「キャンセルポリシー」を出すことで無断キャンセルは減る?

キャンセルポリシーの明示だけでは抑止までは難しいと思います。それに伴う請求と合わさって抑止になるのではないかと思います。
「ノーキャンドットコム」のサービス内容としては、やはり無断キャンセルをした場合には実際に請求をされ、取り立てられるという部分が抑止につながると思っています。
後に請求をされるのであれば、無断キャンセルも減るかと思います。

このサービスだけで「撲滅」は難しいが…

――何人くらい弁護士がいる?

現状私のみです。
もちろんシステムの維持管理については外注しております。

――公式サイトの弁護士っぽい人はスタッフではない?

はい、モデルさんです。(笑)

――協力を希望する弁護士や、弁護士事務所があったら連携する?

はい。
私と連携でもいいですし、個々の弁護士が自分でやるのもよいと思っています。
プレイヤーが多い方が問題解決に近づきますので。

――このサービスで無断キャンセルは撲滅できる?また、どうすれば撲滅できる?

このサービスだけで「撲滅」は難しいと思いますがその一助になりたいとは考えております。
本当に撲滅するのであれば「事前決済システム」、「クレジットカードの登録」、「キャンセルの場合の回収システム」等が複合的に組み合わさる必要があると考えております。


実際に弁護士が請求することは一定の抑止力にはなりそうだが、北弁護士が言う通り、「無断キャンセル」を撲滅するためには他の施策も複合的に考えることが必要なのかもしれない。
本を正せば、予約した側がキャンセル連絡をすればいいだけのことではあるが、こうした輪が広がって、飲食店が店側も客側も心地いい空間になることを願いたい。


プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。