赤ちゃんの輸血には「16、17歳の血がいい」ってホント? 話題の投稿を赤十字社に聞いてみた

カテゴリ:国内

  • 「赤ちゃんの輸血には16、17歳の血が使われる」というSNS投稿が注目される
  • 献血の条件について、日本赤十字社に聞いた
  • 「若い血」の方がやっぱり健康? 年齢と血液の質についても聞いた

赤ちゃんには「若い血」が必要?

皆さんは献血をしたことがあるだろうか?
定期的に行っている人、あるいは興味を持っている…という人もいるだろうが、実は献血には細かな条件があって、年齢だけでなく、体重や一年に献血できる回数などが定められているのだが…そんな「献血の条件」についての投稿が、SNS上で話題となった。

投稿を要約すると「献血に行った際、16歳と17歳に限定した募集があり、それは“若い人の血が望ましい”とされる赤ちゃんへの輸血に使われるらしいので、ぜひ若者は献血に行ってほしい」というもの。

この情報には「初めて知った!献血行かなきゃ」「高齢者の血じゃダメなのか…」などの反応があった一方、「聞いたことないけど、本当?」という声も挙がっていた。

出典:日本赤十字社

前述のとおり、献血には可能な年齢や体重といった制限があるが、16歳と17歳のわずか2年の間に絞った募集条件に覚えがない、という人も多いだろう。
日本赤十字社の公式サイトを見てみると、献血可能な年齢幅が最も広い「200mL献血」では、16~69歳までが献血可能。
その他の項目を見てみると、たとえば血中から必要な成分だけを抜き出す「成分献血」の中の「血小板成分献血」などでは「女性の場合18~54歳」と、多少年齢の幅が狭くなる条件はあるが…「16歳と17歳に限る」という条件のものは見当たらない。

確かに、若い人の血の方がなんとなく健康的かも、というイメージはあるが、16歳と17歳限定という献血の条件は実際のところあるのだろうか?
たとえば献血可能な年齢ギリギリの69歳の人が献血した血は、赤ちゃんの輸血には一切使われないのだろうか?
日本赤十字社にお話を伺った。

「若い血液が良い」というのは誤解

――「16歳と17歳の血に限る」という条件は存在する?

200mL献血については、16歳からご協力いただけますが、「16歳と17歳の血に限る」といった基準はございません。

赤ちゃんの輸血に特殊な条件としましては、とても限られた条件となりますが、「母体のCMV(サイトメガロウイルス)抗体の有無が確認されていない場合に胎児や新生児へ輸血用血液製剤を投与する場合は、可能であればCMV抗体陰性の輸血用血液製剤の投与を推奨する」ことや「採血後2週間未満の赤血球液を使用することが望まれる」ことが『血液製剤の使用指針』(厚生労働省医薬・生活衛生局平成30年3月)に示されております。


――ではなぜこのような誤解が生まれた?

輸血を必要とする患者さんの多くは成人であるため、400mL全血由来の輸血用血液製剤の需要(医療機関からの依頼)が大きく、献血者の方にはその需要にあわせる形で全血献血へのご協力をお願いしております。
ご来場いただく献血者の方には、基本的な説明として「200mL献血は、そのほとんどが需要の少ない小児医療に使用されているため、(200mL献血しかできない)16歳の男女や17歳の女性に主にお願いしています」とお話しておりますが、こちらの説明にいたらぬところがあった可能性があり「赤ちゃんの輸血には16歳、17歳の若い血液が良い」という誤解を与えてしまったものと推察いたします。

日本赤十字社によると「16・17歳に限った献血を呼びかけることはない」とのこと。
さらに、赤ちゃんの輸血に使われる血液も決して「若い血が好ましいというわけではない」という。

そして、このような誤解が生まれたのは、若者が献血できる「血液量」が影響したのではないかとの分析。

体が小さく、また比較的需要の少ない新生児の輸血には小さいサイズの200mLの血液を使用するが、200mLサイズの上は400mLのものがある。
400mLの献血ができるのは男性で17歳以上・女性で18歳以上となっているため、16歳の男性と16・17歳の女性は、必然的に赤ちゃんが使うサイズと重なる「200mL」の献血をすることになる。
これが転じて「赤ちゃんの輸血には16・17歳の若い血が良い」という誤解が生まれたのではないか、とのことだ。

もちろん、16・17歳以外にも医療機関からの依頼(の予測)に応じて、200mLの献血を呼びかけることもある。
また、輸血用血液製剤には有効期間があるため、血液の確保状況によっては、献血会場ごとに献血種類の相談をする場合もあるそうだ。


――全ての献血を200mLに統一したらわかりやすいのでは?

成人の患者さんにも200mL全血採血由来の血液製剤を輸血すれば良いのではないかとお考えになられるかも知れませんが、例えば、400mL全血由来の赤血球製剤を1バッグ使用するのと200mL由来のものを2バッグ使用するのでは、提供者(献血者)が2倍になることで副作用のリスクが2倍になります。輸血用血液製剤の安全性は高くなりましたが、輸血副作用をゼロにすることは不可能であり、できるだけ高単位の血液製剤を使用し、提供者(献血者)の数を少なくすることは、副作用防止の観点からとても重要です。

高齢者の血が“劣化している”という証拠はない

「16・17歳限定の献血がある」という誤解がうまれた原因や、赤ちゃんへの輸血が「若い人からの献血によるものとは限らない」ということはわかったが、「高齢者の血よりも“若い血”の方がやっぱりいいのでは?」という、年齢と血液の質についての素朴な疑問も聞いてみた。


――高齢者の血が若者の血に対して“劣化”することはある?

臨床上の証拠は存在しません。


――「20代の患者には20代の人の血を輸血した方がいい」など、“望ましい年齢の組み合わせ”はある?

臨床上の優位性に関する証拠は存在しません。


赤十字社によると、高齢者の血よりも若者の血が“健康”であるという証拠はなく、また献血する人と輸血される人の年齢に“望ましい組み合わせがある”という証拠もないという。


「若い世代のご協力がとても重要」

また、SNS上では「若者の血は赤ちゃんに役立つ」というワードをきっかけにして、「若いときに献血に行けばよかった」など、献血に興味を持ったユーザーたちの声も多く挙がっていた。
最後に、献血の現状や要望などを改めて語ってもらった。

――投稿は若者の献血を呼びかけていましたが、現状は?

近年の若年層の献血者数については、10代は直近の2年間ではやや増加している一方、20代、30代の献血者については、依然として減少傾向にあります。

若い頃に初回献血を経験している献血者は、複数回献血者になっていただける可能性が高いという調査結果があり、将来にわたり安定的に献血血液を確保するためには、若い世代のご協力をいただくことがとても重要です。


――投稿をきっかけに献血に興味を持った人に…

皆様からの善意によりいただいた血液は、輸血用血液製剤や血漿分画製剤となって、必要とされる患者さんのもとへ届けられます。有効期間がある貴重な善意の献血血液を無駄なく最大限に活用するため、一時期に偏ることのない、継続した献血へのご協力をいただければ幸いです。

また、日本赤十字社では、諸般のご事情により献血にご協力いただけない方におかれましても、日常生活の範囲内で啓発や広報を行っていただくなど、様々な面でお力添えをいただいていることから、実際の献血経験の有無に関わらず、皆様が血液事業の大切なご協力者であると考えておりますので、今後も変わらぬご支援のほどよろしくお願いいたします。