流通しているその地域でしか手に入れることができない「ご当地パン」。ご当地パンだけが特集されている本や雑誌も発売されるほど、今人気を呼んでいる。
愛知県豊川市で限定販売されているご当地パン「たけのこパン」は、地元で「幻のパン」とまで呼ばれている。いったいなぜ幻なのか、メーカーを取材した。
愛知・豊川市の“幻”のご当地パン「たけのこパン」とは…
「たけのこパン」を製造する、愛知県豊川市の「ヤマトパン(株)」。
工場で商品をみせてもらうと、クロワッサンのような生地の中にクリームが入っていて…見た目は割とよく見かけるような普通のパン。
このクリームの中にたけのこが入っているのか、生地の中に練り込まれているのか、そして幻といわれる理由は何なのか…
社長の久世太司さんに聞くと、名前の由来は「見た目」が、皮が重なることで「たけのこに似ているから」で、中にたけのこが入っているわけではなかった。
そして、「幻」のゆえんは…
昔は3日の消費期限…気温上昇で『1日』に
ヤマトパン(株) 代表取締役社長 久世太司さん(4代目):
売られていない期間があるので期間限定になってしまうのと、製造する数が限られていてすぐに売り切れになってしまうため、幻のパンといわれています
たけのこパンは、豊川市と豊橋市の一部のスーパーとJR豊橋駅のキヨスクでしか買うことができず、名古屋にも進出していない。
また、昭和33年から販売されているが、気温が高くなると中に入っているクリームがすぐにたるんでしまうという理由で、毎年10月~4月の約7か月の間のみ製造・販売している。
平日は約800個、多くても1500個までしか作れないため「幻のパン」と呼ばれるようになった。
ヤマトパン(株) 代表取締役社長 久世太司さん(4代目):
(たけのこパンは)昭和33年頃から販売しています。昔は3日の消費期限でしたが、地球温暖化で気温が上昇したことにより、消費期限は1日になりました
11か月に約1万個が売れる「たけのこパン」、その製造方法もみせてもらった。
『たけのこパン』ができるまで
前日に作って寝かせた3層の生地を、円錐型にクルクルと4回巻く。
ポイントは、生地と生地を少し重ねること。そうすることで、仕上がり時にパンが折れにくくなるのと、パンの隙間からクリームを漏れないようにする。
そしてオーブンで約10分かけて焼いていく。現在は、ほとんどの工場がガスオーブンを使っているが、ヤマトパンで使っているのは電気オーブン。機械の製造元から「まだ使っているの?」といわれるほど年季が入っている。
古くても電気オーブンを使うのには理由がある。電気オーブンは、表面となる部分にピンポイントで熱が照射されるので、ガスと比べると、表面がカリカリした仕上がりになるそうだ。
焼きあがったら、冷ましながら1つ1つ円錐型を生地から外し、パンが冷めたところでクリームを詰める。この一連の作業は、すべて手作業だ。
『たけのこパン』以外にも30~40種類の商品も作っているが、これらもすべて手作業。販売数が限られるのも納得だ。
そして、その味はというと…生クリームやホイップクリームの様だが、生クリームほど甘くなく、ホイップクリームよりもあっさりとしていた。
あまりにも時期限定…夏でも売れる『妹分』登場
「たけのこパン」は、販売期間が限られているために“幻”といわれるようになったが、その空白の期間を埋める姉妹品がある。それが『チョコばんぶーShoots』。
ヤマトパン(株) 代表取締役社長 久世さん:
たけのこパンが時期限定のため、それに代わる夏の時季でも売れる商品をと思って、約5年前に作り出した新商品です。塾に通う中高生に、1個でもおなかがいっぱいになるようにと考えて作り、中はチョコレートにしました
商品名の『ばんぶーShoots』は、日本語で「たけのこ」の意味。名前も「元祖」を受け継いでいる。こちらは期間限定ではなく、1年中購入できる。
今秋から“ある変更”で美味しく
現在、原料の小麦粉は輸入小麦を使っているが、今年の秋からは愛知県産の「ゆめあかり」に変える予定。
試作したところ、小麦粉のうま味があっておいしく仕上がったことや、地域の素材を使って恩返しをしたいという思いでリニューアルを決めたという。
秋からはより一層美味しくなった、たけのこパンが楽しめるようになりそうだ。
※たけのこパンは150円、チョコばんぶーは140円(今秋 価格変更の可能性あり)
(東海テレビ)