「あれは僕が名付けたんだよ…」 星の名前を募集中! 国立天文台と発見者に“ヒント”を聞いてみた

カテゴリ:国内

  • 星の名前を一般から募集する世界的なキャンペーンが開催中
  • 名前を募集するのは恒星と惑星で、国立天文台は日本語・アイヌ語・琉球語などを推奨
  • 惑星の発見者「みんなが呼びやすい名前になってほしい」

星の名前を決めよう

これからの季節は花火大会などで、夏の夜空を見上げる機会も多くなるだろう。
そんな時、例えば恋人同士のロマンチックな場面で「あの星の名前知ってる?僕がつけたんだよ」なんて歯の浮くセリフを言えるチャンスがくるかもしれない。

今、星の名前を提案して、名前を永久に残すことができるキャンペーンが行われているのだ。

それは「太陽系外惑星 命名キャンペーン IAU100 NameExoWorlds」
世界中の国と地域に、一つの太陽系外惑星系(恒星とそれを公転する惑星)を命名する機会を提供する国際天文学連合(IAU)の「IAU100 NameExoWorldsプロジェクト」の日本でのキャンペーンだ。

このキャンペーンの目的は、世界中すべての国が参加することによって、世界全体で天文学の発展と天文学的知識の普及を共に目指していくことにあり、1919年に創設された国際天文学連合の創設100年を記念して行われる。

2015年に最初の太陽系外惑星命名キャンペーンが行われ、2回目となる今回は、それぞれの国や地域に一つずつ太陽系外惑星系を割り振り、恒星と惑星の名称を一般で募集して命名するという。日本の場合、名前の応募は国立天文台のホームページから応募することができる。

今回、日本に割り当てられた太陽系外惑星系は、かんむり座の方向、距離として410光年にある恒星「HD 145457」とそれを公転していて、2010年に東京工業大学の佐藤文衛准教授が発見した巨大ガス惑星「HD 145457 b」だ。

惑星イメージ 提供:国立天文台

名付け親になれたら嬉しいが、なんでもいいわけではない。名前を提案するにあたりいくつかの決まりがある。

名前は恒星と惑星の2つの名前を一組として提案することになっていて、2つの名前の間には、一続きの関連性(命名テーマ)が必要で、その理由を説明する日本語の文章も求められる。

名前として提案できるのは、文化・歴史・地理などにおいて深い意義を持ち、天体に付けるに値すると認められる物や人物や土地などの名前で、天空や天文学に由来する名前、太陽系外惑星系が属している星座に関連する名前を提案することも可能だ。

そして、提案する名前の具体的な決まりとしては、
1.ラテンアルファベットの表記で4字以上16字以内であること(空白や句読点も文字数に含む)。
2.なるべく一語であること。
3.(ある言語において)発音可能であること。
4.不快な意味・印象を与える名前でないこと。
5.既に存在する天体名と同一でないこと、あるいはそれに似すぎていないこと
が挙げられる。

また、好ましくない名前としては、営利的な性質しか持たない名前や存命の人物の名前、ペットの名前、新語、造語などがあげられている。

ルールがたくさんあり、名付け親になるのは簡単ではないようだが、選ばれる可能性をあげるためにはどうしたらいいのか?
応募を受け付けている国立天文台にお話を伺った。

日本語、アイヌ語、琉球語などを推奨

ーーなぜ日本に恒星HD 145457と惑星HD 145457 bが割り当てられた?

日本人研究者によって発見された惑星系であり、かつ日本から見やすい位置にあるからです。


ーー日本のキャンペーンの倍率はどれくらいになりそう?2015年の時の倍率は?

数千件の応募を期待しています。2015年は、20の惑星系に対して、全世界からの名前提案数が300程度でした。キャンペーンがすべて英語ベースだったこと、名前を提案できるのは団体だけだったこと、プロセスが複雑であったことなどの反省点があり、今回は改善して多数の名前提案をいただこうと企画しました。(応募や選考のプロセスは国・地域ごとに異なります。)


ーーどうのような名前が選ばれやすい?

選ばれやすいかどうかはわかりませんが、提案理由がわかりやすく、広く受け入れられるものが良いと考えています。


ーーどのような名前になって欲しい?

前回は全世界でひとつのキャンペーンだったためか、日本からも海外の文化をベースにした提案が多くあり、また採用されました。今回は国・地域別のキャンペーンですので、ぜひ現地の文化をベースにした名前が付けられることを期待しています。名称は、日本語、アイヌ語、琉球語などであることを推奨しています。

クレジット:大西浩次氏

もう少しヒント下さい…

ーー恒星HD 145457と惑星HD 145457 bの名前を提案するにあたり関連する「キーワード」であったり「事象」はあるか?

そこは提案者の創意工夫が活かされるところですので、ぜひさまざまにご提案ください。広く理解され共感されやすい理由が重要でしょう。


ーー通常、星の命名権は誰にある?

太陽系外の天体は通常は命名されません。研究者が勝手に名称をつけることも推奨されません。天体の名称は国際天文学連合がリストアップしており、そのリストに今回のキャンペーンで命名される名称も加えられるという形です。


ーー通常、星の名前を決めるときには何か由来を元に決めるのか?

その天体によって千差万別です。恒星に付けられた伝統的な固有名(ベガとかアルタイルとか)は、星座のなかでの星の並びなどがベースになっています。ガス状の天体(星雲)などは、その形を基に呼ばれる場合や、位置する星座を基に呼ばれることがあります。


ーー賞金など名前が採用されたら何か出る?

日本では何も出ません。提案者も特定されません。


ーーキャンペーンを通して一般の人にどのようなことを伝えたい?

太陽系以外にも惑星が見つかっていて、それらの研究が進められていること、国際天文学連合は天文学の発展と普及、そして世界の発展に天文学を活用しているこを知っていただくとともに、天文学そのものにも親しんでほしいと考えています。


国立天文台は日本語、アイヌ語、琉球語などを推奨していて、日本の文化をベースにした名前というのがヒントのようだが、そこからの創意工夫が必要なようだ。

また、今回のキャンペーンで名前を付けられる惑星「HD 145457 b」を発見した東京工業大学の佐藤文衛准教授は、どんな名前がいいと考えているのかお話を伺った。

自分が見つけた惑星に注目してもらえるのはうれしい

ーーご自身が見つけられた惑星の名前を募集して命名してもらうことについて受け止めは?

自分が見つけた惑星に注目してもらえるのはうれしいです。今回のキャンペーンを通して系外惑星、天文学、日本の天文観測施設等に関心をもってもらえればさらにうれしいです。

黄色の丸の星が恒星HD145457 クレジット:戸田博之氏

ーー惑星HD 145457 bはどのようにして見つけたか?

恒星HD145457は元々知られている恒星で、今回新たに見つけたのはその周りを回る惑星HD145457bです。この惑星系は、すばる望遠鏡と岡山天体物理観測所(現ハワイ観測所岡山分室)188cm反射望遠鏡を使って発見した惑星系です。惑星は暗くて見えないので、恒星が惑星の引力を受けてわずかに運動する様子を観測することによって発見しました。

まず、すばる望遠鏡の大口径を生かして数百個の恒星をそれぞれ3回ずつ観測し、その中から惑星をもっていそうな恒星を選び出しました。その後、これらの恒星を188cm反射望遠鏡を使って2年間継続観測し、その運動が周期的であること等を確認しました。このような一連の観測によって、HD145457系が確かに惑星系であることを確認しました。

すばる望遠鏡は競争倍率が高く観測夜数が限られますが、口径が大きいので短時間にたくさんの天体を観測することができます。一方、188cm反射望遠鏡の口径は小さいのですが、長期間に渡ってたくさんの観測夜数を確保することができます。HD145457系の発見は、このように2つの望遠鏡のそれぞれの強みを生かすことによってなされたものです。

すばる望遠鏡 提供:国立天文台
188cm反射望遠鏡 提供:佐藤文衛准教授

ーー恒星HD 145457と惑星HD 145457 bの特徴は?

恒星HD145457は「巨星」に分類される大きな恒星で、半径は太陽の約10倍、質量は太陽の約1.9倍です。中心部での水素の核融合反応を終えて、一生の終わりへ向けた進化の途中にある恒星です。(太陽も約50億年後には大きく膨張し巨星へと進化します。)

惑星HD145457bは、木星の約2.9倍の質量をもつ巨大ガス惑星だと考えられます。恒星HD145457からの距離は約0.76天文単位(地球―太陽間の距離の0.76倍)で、公転周期は約176日です。この惑星は暗くて見えないので、惑星の大きさや表面の様子など詳しいことは分かりませんが、残念ながら生命が住める環境にはないと考えられます。


ーーどのような名前になって欲しい?

子供も大人もみんなが呼びやすい名前になって欲しいです。

最終結果は12月に発表

国立天文台、そして佐藤准教授にお話しを伺ったが、両者ともこのキャンペーンを通して天文学に興味を持ってもらいたいという思いが伝わってきた。

応募の受付は9月4日正午まで国立天文台のホームページで受け付けていて、日本天文協議会メンバーで構成される一次選考委員会で一次選考を行う。
その後、ソフトバンクホークス会長の王貞治さんや宇宙飛行士の山崎直子さんらで構成される特別選考委員会で最終選考を行い、11月に国際天文学連合へ日本の提案を報告する。

最終結果は今年の12月に国際天文学連合から発表される予定だ。

日本から見やすい位置にある星で、自分が付けた名前が永久に使い続けられるチャンスではあるので、気になった人は応募してみてはどうか。夜空を見上げながらじっくりと考えて欲しい。