フィギュアを辞めようと思った安藤美姫を立ち上がらせた“見知らぬ女性”の言葉

  • 世界女王になれたのは、声を掛けてくれた女性のおかげ
  • 東京五輪を目指すために、全てを捨ててくれた青学の先輩
  • 「辞めさせてくれなかった」「辞めさせてくれた」ことに感謝

あの人がいたから、今の自分がある。

7月21日放送の「ジャンクSPORTS」(フジテレビ系)では、一流アスリートたちが感謝する大恩人とのエピソードに迫った。

(上段左から)立浪和義さん、和田正人さん、関根勤さん、岡田圭右さん (下段左から)安藤美姫さん、神野大地さん、金藤理絵さん、杉本美香さん、渡辺華奈さん

見知らぬ女性からの言葉に感謝

世界の第一線で闘い続けたフィギュアスケーターの安藤美姫さんは、かつて一度だけフィギュアスケートを辞めようとした時があるという。そんな時安藤さんを救ったのは、見知らぬ女性からのある言葉だった。

安藤さんは高校生で全日本選手権の連覇を達成。世界大会でも活躍していた上に、当時は現役高校生ということもあり、注目度は高かった。

しかし、「隠れて写真を撮る方もいた。中傷的な手紙、メンタルや骨折のケアなど、うまくいかない事があったけど、4回転は自分の代名詞でもあったから、やりたい。それだけは悔いを残したくない」とメディアやファンに囲まれる生活に心を痛めながらも、4回転への意欲は失っていなかった。

そして、2006年にトリノ五輪に出場した安藤さんは、4回転に成功して金メダルを獲得することを目指していたが、ショートプログラムではミスもあり出遅れ、フリーでは4回転に挑戦するも失敗し、結果は15位に終わった。

だが、安藤さんの心の中は悔しさではなく、「やっと解放される。フリーが終われば、全てが終わって、この世界からいなくなれる」と思い、スケートを辞めることを決めていたと当時を振り返った。

競技が終わり、リンクにもいたくないと会場を出た安藤さんに、大会を見に来ていた見知らぬ女性が声を掛けて来た。その女性は「4回転ジャンプに挑戦してくれてありがとうございます。お陰で見に来た甲斐がありました」と告げたという。

安藤美姫さん

当時のことを「 “日本の恥だ”と言われていた中、こういう感じ方をしてくれる。“日本の恥だ”と思わない人がこの世にいるんだって。4回転に挑戦したのは、自分だけの思いじゃなかった、人にも何か伝わる事があると思えた瞬間だった」と話し、「もう一回頑張ろう」と立ち上がったという。

見知らぬ女性からの一言が、閉ざしていた安藤さんの心を救った。その後、一からジャンプを見直し、再び練習に励み、2007年の世界選手権で優勝し、初の世界女王に。

「あの方が声を掛けてくれなかったら、スケートは100%やっていない。感謝度で言ったら、群を抜いてナンバーワン。とにかくお会いしたい」と振り返り、番組で安藤さんの記憶をもとに、似顔絵を作成した。

そして、安藤さんは「心当たりのある方はご連絡ください」と、自身の心を救った見知らぬ女性へメッセージを送った。

自分のために全てを捨てた男に感謝

神野大地選手

青山学院大学時代には箱根駅伝を制覇し、3代目“山の神”として一躍時の人となった神野大地選手。大学卒業後はフルマラソンに挑戦し、今年9月に行われる「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」で2位以内であれば、東京五輪内定するため、この大会に全てを賭けているという。

そんな神野選手が感謝してもしきれないのが、自分のために全てを捨てた男。

その人物は、現在、神野選手の専属マネージャーを務め、大学の先輩である髙木聖也さん。神野選手が「走ることに専念できているのは聖也さんのおかげ」と言うほど、2人には熱い友情があった。

卒業後、実業団で仕事をしながら競技をしていたが、神野選手はおととし、「東京五輪を本気で目指すのであれば、プロになって、全ての時間を陸上に使って後悔のない人生を送りたい」と思い、プロになる決断をした。

しかし、プロとしてやっていくためには、スポンサー探しや練習環境の管理など、神野選手を支える強力なパートナーが不可欠。そんな時、神野選手の中で思い浮かんだ人物が髙木さんだった。

髙木さんは大学時代、けがのため選手を引退し、裏方として青学陸上部を支えていた。神野選手は「目標のために妥協をしない人。一緒にやるなら聖也さんしかいない」と思い、大手銀行に入社し、社会人生活を謳歌していた髙木さんを呼び出し、銀行を辞めて支えて欲しいという無茶なオファーをしたという。

髙木さんにとってはあまりにも大きすぎる決断だったが、悩んだ末に、神野選手と東京五輪を目指すことを決めた。

2018年4月に2人は会社を辞め、五輪を目指して共同生活を開始。さらに2人は、大学の恩師である原晋監督に頼らないと、あえて厳しい道を選んだ。

スポンサーが決まるまでは収入がないため、生活費や合宿費は神野選手の貯金から捻出。そして、髙木さんはスポンサー探しに明け暮れた。苦しい生活が続き、半年が経った頃、「神野選手をサポートしたい」というメールが届く。2人に共感した、現在のスポンサーであるセルソース株式会社の裙本理人社長からのメールだった。

神野選手は「練習に集中できる環境を作ってくれているのも聖也さん。ただただ感謝していますし、僕の思いでプロになりましたけど、今は2人の目標でもある。一緒に東京五輪の切符を取って、最高の喜びを分かち合いたい」と意気込んだ。

神野選手の専属マネージャーを務める髙木聖也さん

スタジオには、髙木さんも登場。番組MCの浜田雅功さんから「(銀行を辞めたこと)後悔していない?」と聞かれた髙木さんは「全く後悔していないです」と強くうなずいた。

ゲストの関根勤さんが「人間は自分のためだけ、ってなると限界があるけど、先輩のためともなれば、もっと頑張れるんじゃない?」と神野選手に尋ねると、「今は(東京五輪が)2人の目標になっている」と明かし、髙木さんも「私の夢も神野と東京五輪でメダルを獲ること」と話した。

さらに、東京五輪後のプランについて「今のところ、ノープラン。できれば原監督の後を聖也さんと2人でやりたい」と答えた神野選手に、浜田さんは「聖也を見捨てんといてや!」と懇願した。

何度も引き留めてくれたコーチに感謝

金藤理絵さん

2016年のリオオリンピック、競泳200メートル平泳ぎで、日本女子24年ぶりの金メダルを獲得した金藤理絵さん。

だが、彼女の素顔はすぐに辞めたがるスイマーだった。そんな金藤さんが、水泳を続けて金メダルを獲れたのは、加藤健志コーチの存在があったからだという。

加藤コーチと出会ったのは、2007年に入学した東海大学。当時18歳の金藤さんは、まだ世界で戦うことなど考えてもいなかったが、加藤コーチは当時の世界記録を超えると断言した。

加藤コーチも「僕の中で彼女は出会ったときから、絶対に世界のトップになれるという確信はあった」と当時を振り返る。

そんな加藤コーチの練習量は想像を超え、金藤さんは「クリスマスイブとクリスマスに30キロ泳いだことは今でも忘れられない」と明かした。

一方、加藤コーチは「これはキツイだろうって時に変身するんです。世界のトップ選手だけが持っている、追い込まれたときに違うスイッチが入る、(金藤は)10年に1人の逸材」と話した。

極限まで追い込む練習により、金藤さんのスピードが覚醒。日本競泳界のエースになったが、2010年に椎間板ヘルニアを発症したことを機に、大きな挫折を味わう。成績は低迷し、自信もなくし、加藤コーチが「(挫折していた)3年間は本当にヒドかった。もう駄々っ子」と言うほど、“辞めたがるスイマー”となってしまった。

「辞めたい」と迫る金藤さんを加藤コーチは引き留め、それは約3年間も続いた。ただ、加藤コーチは「やりたくないとやらせたい、そのギャップが世界一。ただ、絶対に世界一になれると信じていた」と振り返った。

何度も引き留められながらトレーニングを続け、圧倒的なスピードが復活。そして、27歳で迎えた2016年のリオ五輪で、金藤さんは見事金メダルを獲得したのだ。

渡辺華奈選手

一方、渡辺華奈選手は競技を辞めさせてくれたことに感謝しているという。

総合格闘家としてデビュー以来、8戦無敗の渡辺選手。総合格闘技に転向する前は、柔道をやり、強化選手だったほどの実力の持ち主。

そんな彼女が感謝するのは、柔道家としてクビを宣告してくれた人物。

渡辺選手は「実業団で柔道を続けていたんですけど、最後の数年は結果が出ずに、監督とコーチに呼ばれて、会社として競技を続けるのは難しいと言われて。その言葉がなかったら、総合格闘技に転身していないので感謝しています」と話した。

格闘技好きの関根さんは、なぜ総合格闘技を選んだのか質問。渡辺選手は「昔からいつかやりたいなと思っていて」と、意外すぎる転身の理由を明かした。

喝を入れてくれた先輩に感謝

杉本美香さん

ロンドン五輪、柔道女子78キロ超級で銀メダルを獲得した杉本美香さん。彼女の強さを一躍、世界に知らしめたのが、2010年の世界柔道選手権。この大会で、78キロ級超と無差別級に出場した杉本さんは、圧倒的強さで勝ちまくり2階級制覇を達成した。

この快挙の裏には、ある先輩の存在があった。突然キレたその先輩がいたからこそ、大記録を達成し、杉本さんはその先輩に感謝しているという。

その人物はアテネ五輪で金メダルを獲得した塚本真希さん。アテネ、北京と塚田さんに敗れ、五輪出場を逃していた杉本さんにとって、塚田さんは越えなければならない存在だった。

そんな中、2階級制覇した世界選手権の前に行われた全日本選手権で、杉本さんと塚田さんが決勝で激突。杉本さんは塚田さんに1本負け。事件はその直後に起こったという。

試合後、塚田さんににこやかに話し掛けてきた杉本さんに「ヘラヘラ笑っているんじゃない、次はあなたが背負っていくんだから、しっかりしと!」と喝を入れたという。そして、塚田さんは「あの時、実力はすでに杉本の方が上だった。同じステージに立っている意識があれば、そうはならないだろ」と思い、杉本さんの気持ちを入れ替えさせたという。

その言葉に、「腹がくくれた」と振り返る杉本さん。それからトップになることだけ考え、迎えた世界柔道選手権では、オール一本勝ちで優勝を果たし、見事2階級制覇を成し遂げた。

表彰式の直前、杉本さんは塚田さんから、「『重量級は任せた』と言われて、任せられたからには任務を果たさないといけない」と思ったという。

さらに、塚田さんはその時に自らの引退を告げ、重量級のエースの座はこの時杉本さんへ引き継がれた。あの時の塚田さんのげきがなければ、今の自分はなかったという。

そして、8月25日から始まる「世界柔道」。今度は、杉本さんからバトンを引き継いだ重量級の新世代が世界を目指す。杉本さんは注目選手について素根輝選手、朝比奈沙羅選手の名前を挙げた。


『ジャンクSPORTS』毎週日曜日夜7:00~8:00放送(※7月21日の放送は7:00~7:56)

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