“真っ白な胡蝶蘭”が意味するもの
参院選の投開票がいよいよ今週末21日に迫る中、同じく大詰めを迎えている場所がある。
「Live News days」島田彩夏アナウンサーと共に向かうと、ビニールハウスの中に一面ずらっと並んだ胡蝶蘭が。
奥では、出荷に向けてずいぶん忙しそうな従業員が作業中だ。
私達が取材したのは、さいたま市にある胡蝶蘭農園「らんや」。
ビニールハウス28棟、およそ1ヘクタール(2800坪)の敷地で、常時16万株の胡蝶蘭を栽培している全国屈指の胡蝶蘭農園だ。
胡蝶蘭の花言葉は「幸福が飛んでくる」。
また、鉢植えには「根付く」という意味があることから、胡蝶蘭は「やってきた幸福が根付く縁起物」として、当選した議員に送られるお祝いの花の定番となっている。
そのため、選挙前のこの時期は注文の増加が見込まれることから、約90人の従業員が慌ただしく準備にあたっている。
「黒臼洋蘭園」専務の新井務さん曰く、「普段より1.5倍近くの注文が入っている。2か月前から花を取っておかないと足りなくなってしまうので、今から鉢を作ってキープしている。」との事。
売れ筋の相場は、3万5000円から5万円程だそうだ。
選挙ならではの事情もある。
本来、胡蝶蘭にはピンク・黄色・白など様々な色があるのだが、当選議員に贈られる胡蝶蘭は“誠実さ”や“潔白さ”を表現するために、「白」が圧倒的に多く、ピンクなど他の色の注文はほとんどないという。
実は大変!胡蝶蘭が“あの形”になるまで
胡蝶蘭の出荷に向けた準備は、花を栽培するだけではない。
実は、よく街中で見かけるような形にするために、様々な過程を経ているのだ。
①曲げ
開花した胡蝶蘭が一番美しく見えるよう、1本1本、手作業で支柱に合わせてクリップで固定していく。
②組み
曲げられた胡蝶蘭の仕立てが美しく見えるように、花の輪数や咲き具合、高さがちょうどいい組み合わせを数万本の中から選ぶ。
③植え込み
鉢底の水はけが良くなるよう底材を敷いたり、間に発泡スチロールを詰めて通気性を良くするとともに、株が動かないよう固定。
④補強
見た目の調整及び、宅配の時にも花がふらつかないようにしっかり固定する。
これらの1から4の作業が終わり、和紙やビニールでラッピングして配達できる状態にするまでに、1株あたり30分近くかかるという。
それが、選挙後には多くて2000鉢もの注文が入るため、従業員は時に休日を返上して仕事に取り組むことになる。
記録的日照不足が悩みのタネ
また、今年は東京都心で過去最長の「日照時間が3時間未満」の日が続き、記録的日照不足を記録していることから、胡蝶蘭の生育の遅れや質の低下にも悩まされているという。
胡蝶蘭のように「地に足つけて頑張って」
そんな大変な状況の中で、手塩にかけて育てた胡蝶蘭を送ることになる当選議員に望むことを聞いてみると、「胡蝶蘭は根を張って長くきれいに咲く花なので、地に足をしっかり着けて、日本が世界に誇れる国になるために頑張ってもらいたいと思います。」(「黒臼洋蘭園」新井務専務)という答えが返ってきた。
今回の参議院選挙では、当選議員の他に、彼らたちに贈られる胡蝶蘭の美しさと、その裏にある多くの努力にも注目していただきたいと願う。
(執筆:フジテレビ報道局「Live News days」ディレクター 石竹爽馬)