犯罪の”加害者”を支援する… 全国初の条例を施行した明石市、その「支援現場」を取材

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  • 兵庫県明石市が全国で初めて施行した、犯罪加害者の更生支援の条例
  • 社会からの孤立を防ぐことで、再犯につながる負の連鎖を防ぐのが目的
  • その支援現場を取材。加えて明石に住む「被害者遺族」にも話を聞いた。

長男を殺した犯人…精神疾患で不起訴に

何度も犯罪を繰り返してしまう、知的障害や精神疾患のある人などの更生を支援するという全国初の条例が兵庫県明石市で施行された

今回、再犯を防ぐための支援の現場を取材。加えて精神疾患の男が起こした事件で、長男を亡くした遺族は、この条例をどう捉えているのか、話を伺った。

兵庫県明石市で50年以上続く、老舗割烹料理店「いそざかな いっとく」

『鯛とシマアジと鰈です』

次男と共に、店を切り盛りするのは曽我部とし子さん(73)。
地元で愛されてきたこの店は、20年以上前、ある出来事をきっかけに閉店の危機にさらされた。

曽我部とし子さん:
白昼、息子は市街地を歩いていて、背後から刺されて。病院に駆け付けた時にはすでに亡くなってた。

1996年6月9日、明石駅前の路上で長男の雅生(まさお)さんが男に刃物で刺され亡くなった。

曽我部さん:
24歳でしたので、職人さんのあとについて色々、料理の事とか教えてもらったり、ぼちぼち、ちゃんとして(板前として)ものになりかけたような。

とし子さんは生きる気力を失い、店の経営はみるみるうちに悪化していった。

曽我部さん:
(事件後しばらくして)いきなりね、怒りが出てきて…。調理道具のボウルをアイスピックで、がーッとたたいてみたりね。

そして事件から半年がたったある日、とし子さんに追い打ちをかけるように、非情な知らせが届く。

曽我部さん:
検事さんから電話がありまして、無罪(不起訴処分)です、と。病院に入りますと、電話で連絡がありました。

容疑者の男には精神疾患があり、不起訴になった。

裁判も開かれず…真実知る機会も失う

『心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する』

日本の刑法39条には、精神疾患や知的障害などで、行動の善悪を判断できない人が犯した罪は刑罰に問えない、もしくは刑罰を軽くすると定めた条文がある。

この法律によって、雅生さんを刺した犯人の男は不起訴処分になり、裁判は開かれなかったのだ。

とし子さんは犯人に罪を償うことを求める権利も、裁判で真実を知る機会も奪われた。

曽我部さん:
泣けて、泣けてしょうがなくなって、頭がまっしろになりました。

再犯防止へ…「加害者」を支援する条例

事件のあった明石市では今年、ある条例が施行された。

泉房穂 明石市長:
明石市更生支援及び、再犯防止等に関する条例が本日制定となりました。

この条例は、知的障害や精神疾患などを抱え、繰り返し罪を犯してしまう人などを対象に、適切な行政サービスなどを受けることが出来るように、支援することが目的だ。

明石市更生支援担当職員:
過去に罪を犯してしまった人も刑事手続きを終えれば地域に帰ってくるわけなんですが、そこでまた孤立してしまうと生活に困る、生き辛さにつながって、再び犯罪をしてしまうかもしれない。そういった方が地域で立ち直るために、必要な行政サービスを適切に提供する。

法務省の資料によると、近年、犯罪の検挙人数は減少傾向にありますが、再犯者の人数は、ほとんど減っていないため、検挙された人数に占める再犯者の割合は高くなっている。

孤立を防ぐことで、再犯を防止する

再犯を防ぐための加害者支援は、どのように行われているのか。
今回、実務を担当する明石市社会福祉協議会と交渉し、支援の現場に同行できることになった。

社会福祉協議会 社会福祉士 佐藤寛士さん:
ちょっと(支援対象者と)話してきていいですか。

Aさんは窃盗の罪で、過去2度の受刑歴がある40代の女性。

知的障害と精神疾患を抱えているが、出所後の更生を見守る保護者がいなかったため、今年の2月から生活保護費の手続きや、病院の手配など、身の回りのサポートを、社会福祉士の佐藤さんが続けている。

社会福祉協議会 佐藤さん:
とりあえず予定なんやけど、7月4日に神戸に一緒に行こう。得意なとことか苦手なところを、検査してもらう。

Aさん(2度の受刑歴):
4日ね。

社会福祉協議会 佐藤さん:
2時から、鑑別所。1時くらいに迎えに来るよ。

――なぜ犯罪を犯してしまった?

Aさん(2度の受刑歴):
その日、(内縁の夫と)喧嘩をしてしまって、イライラして、もうどうでもいいやと思ってやってしまって、万引きGメンに捕まったんです。

精神疾患などを抱えて罪を犯した人は、保護者や配偶者との関係が切れて孤立しているケースが多く、再び犯罪に手を染めてしまう負の循環に陥ることが多いのが現状だ。

Aさん(2度の受刑歴):
まず(出所の時)迎えに来てくれたことがすごく嬉しかったんですよね。市役所の手続きとか、生活保護の手続きとか、家賃はどうやって払ったらいいのかとか、そんなことも分らなかったし。(障害者)手帳持ってたのは、持ってたんですけど、一人で買い物行くのも不安だったし。

明石市の更生支援の基本は、対象者を孤立させないこと。
人との関係を作り、地域社会がその存在を受け入れることで、再犯の防止に繋げている。

Aさんの現状について尋ねると…

社会福祉協議会 佐藤さん:
内縁の夫に会いに行くと言って、私たちを騙してお金をできるだけ欲しいと言ったり…。なので、(Aさんの更正を)信じて待ちながら騙されつつ(支援します)。

――加害者の支援は批判も多いが?

新たな被害者を生まないということが一番かなと思いますし、小さいとこから芽を摘んでいくことによって、家族の関係を調整することによって、大きな犯罪って防げるところもあるとおもうので。

新たな被害者を生まないために

被害者遺族の目に、加害者の更生支援は、どう映るのだろうか。

曽我部とし子さん:
決してそれを、やっていることを否定はしません。やってくださいって思います。でも、片一方では、何度も何度も犯罪を繰り返す、そういう人も、そういう人生しか送れない人もあるんやなぁと思います。地べた這うように、何度も何度も支援してても、裏切られるようなことが起きると思うんですよね。それでもこれでもかと、あきらめずに息長く続けていってほしいと思います。

被害者と加害者と、そして私たちが同じ世の中で、どう生きていくか。
新たな被害者を生まないために、社会全体で考えなくてはならない。

(関西テレビ)

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