“あの名所”が栃木・足利市に

東京・渋谷区のJR渋谷駅のほど近くにある、「渋谷スクランブル交差点」。
周辺には商業施設が軒を連ね、数え切れないほどの歩行者が行き交う様子は、日本の首都を象徴する光景として紹介されることが多く、また、ハロウィーンや大晦日などイベント時にはお祭り騒ぎをする場所として、ある意味風物詩にもなっている。

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実際に歩いてみると観光よりも他人と肩がぶつからないよう、すれ違うのが精一杯...という状況で、地方や海外から訪れた人たちにとってはインパクトのある場所でもあるようだ。

そんな「渋谷スクランブル交差点」にまつわる、驚きの話題が世間をにぎわせている。
栃木・足利市に、本物さながらの「渋谷スクランブル交差点」のセットが建設されるというのだ。

巨大セットで渋谷そのものを再現

建設場所となるのは、足利市五十部町にある「足利競馬場跡地」。以前は「足利競馬場」として市営競馬が開催されていたが、2003年に閉鎖され、近年は市保有の多目的広場として、スポーツやイベントなどが開催されてきた。

「渋谷スクランブル交差点」の予想図(提供:ヌーヴェルヴァーグ)
「渋谷スクランブル交差点」の予想図(提供:ヌーヴェルヴァーグ)

建設を担当する、映像美術会社「ヌーヴェルヴァーグ」(東京都)によると、撮影用セットは2019年7月から建設が始まり、9月ごろに完成予定。大きさは約120メートル×約110メートル超の巨大規模となり、道路や周辺施設は実寸大で再現されるという。

渋谷は「ハチ公前広場」や「渋谷センター街」などが立ち並ぶ、若者の聖地でもある。今回の試みも注目を集め、SNSでは「中心で寝っ転がりたい」「セットじゃなくて街中に作っちゃえばいいのに」という反応も見られた。

なぜ、足利市で再現セットを建設することになったのか。足利市・映像のまち推進課の担当者に伺った。

足利市は「映像のまち」

――「渋谷スクランブル交差点」がなぜ足利市に?

足利市では、映像による町おこし「映像のまち構想」を推進していて、映像撮影には積極的に協力しています。今回の取り組みも支援活動の一つです。

今回は「ヌーヴェルヴァーグ」さんから「渋谷スクランブル交差点を再現できる場所がないか」という話をいただいたのがきっかけで、市有地かつ広大な、足利競馬場跡地を提案したところ、選んでいただきました。


――映像に力を注ぐ理由は?足利市が選ばれるのはなぜ?

もともとは、1991年に放送された大河ドラマの撮影地となったのがきっかけです。その際、撮影が成功するように、市や市民が全面的にバックアップしました。

この評判が映像業界に広まり、映画・ドラマ・CMなどの撮影地に選ばれることが増えたと聞いています。弊課も支援のために創設されました。

近年では、映画「バンクーバーの朝日」のロケ地などにもなり、ここ5年で250本以上の映像作品が撮影されています。

一般見学の予定はなし

――「渋谷スクランブル交差点」はどんな形で再現される?

市はあくまで場所を提供しているだけなので、セットの再現内容についてはお答えできません。「渋谷スクランブル交差点と取り巻く町並みを再現する」というお話は聞きました。


――使用期間は2019年7月~12月とあるが、完成後はどうなる?

完成後は映画撮影の場所として使われ、期間終了後は元の広場に戻す予定です。なぜ?と思われるかもしれませんが、市は場所を提供しているだけで、建設をするわけではありません。

市民からは「足利の新名所ができたね」という声もあるので、残念ではありますが、ご容赦をお願いします。一般見学などのお話も、現段階では出ていません。


足利市では、建設される撮影用セットの内容までは分からないとのことだった。では、「渋谷スクランブル交差点」はどのように再現されるのだろうか。そして、すでにどのくらい撮影予定があるのか、「ヌーヴェルヴァーグ」にも話を伺った。

本物の「渋谷スクランブル交差点」では許可が出ない

――なぜ「渋谷スクランブル交差点」の撮影用セットを作ろうと思った?

映像制作者からの依頼を受け、建設することになりました。本物の「渋谷スクランブル交差点」では、安全性などから警察の許可が出ず、撮影できませんでした。


――足利市を選んだ理由は?

「渋谷スクランブル交差点」を再現するには、4500~5000坪の広さの土地が必要なほか、スタッフの滞在環境、受け入れ体制などもクリアする必要がありました。弊社は「バンクーバーの朝日」にも携わったのですが、その際、足利市にお世話になったので、声をかけさせていただいたところ、応じていただきました。


反響次第では...常設の道も?

――「渋谷スクランブル交差点」はどのように再現する?

誠に申し訳ありませんが、現段階では答えられません。今回建設される撮影用セットは、既に2本の映画・映像作品で使われることが決まっていますが、シーンの重要性などで予算配分などが変わるため、申し上げることができないのです。

建設作業も始まったばかりで、現在はまだ資材を運んでいる段階です。ただ現状ですと、実際の建物よりもCGで再現する部分が多くなるかと思われます。


――今後はどうなる?市民からは常設を望む声もあるが


現段階では、2019年12月までの契約なので、契約期間が終われば解体する予定です。ただ、個人的には反響次第とも思います。撮影用セットの反響が大きく、もし足利市から常設を求める要望があるのなら、検討するのではないでしょうか。


もしかすると「ハチ公前広場」などが再現されるかも
もしかすると「ハチ公前広場」などが再現されるかも

象徴的な場所だけに撮影の需要はありそうだし、閑静な平地にいきなり「渋谷スクランブル交差点」が出現するアンバランスな風景にも興味があるので、せっかく作るなら12月までというのはもったいない気もする。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。