非武装地帯に正体不明の飛行物体! 正体は予想外の…韓国軍“早とちり”の背景とは?

“批判の的”の韓国軍…「早すぎる対応」が裏目に

カテゴリ:ワールド

  • 韓国軍が突然の発表「南北非武装地帯に未詳の飛行物体」
  • 戦闘機が緊急発進も…パイロットの目に飛び込んできたのは・・・
  • 早とちりの背景は「北漁船見逃し批判」のトラウマか?

韓国軍「レーダーに未詳の飛行物体」…戦闘機がスクランブル発進

歴史的な対面の舞台になった「DMZ・非武装地帯」

一報が入ったのは7月1日午後3時過ぎ。韓国軍合同参謀本部からの突然の発表だった。

「わが軍は13:00頃 江原道(カンウォンどう)中部戦線非武装地帯一帯で、レーダーに未詳の飛行物体を捉えて確認措置中」

緊張が走った。
なぜなら「未詳の飛行物体」が捉えられたのは南北の境界にまたがる「DMZ・非武装地帯」。そのまま「未詳の飛行物体」は韓国側に“侵攻”。南北の軍事衝突か?そんなことが一瞬頭をよぎる。さらにDMZ・非武装地帯は、この前日にアメリカのトランプ大統領が訪れ、北朝鮮・金正恩委員長との3回目の米朝首脳会談が開催された、いわば“世界が注目した舞台”だ。

韓国メディアによると南北の軍事合意で飛行が禁止されている韓国側の上空で捕捉されたとのことで、韓国軍は北朝鮮軍のヘリ、無人機の可能性があると判断。戦闘機「KF16」数機をスクランブル発進させた。さらに北朝鮮に対して軍の通信網で「偶発的な武力衝突」を防ぐための通知文を送った。緊張は最高潮に達し、まさに“朝鮮半島一触即発”の事態か!?と思われたのだが…。

パイロットの目に飛び込んできたのは「20羽の鳥」

イメージ 鴈(がん)の群れ

突然の発表から約1時間半後。韓国軍からの追加発表はある意味、驚きだった。

「パイロットが鳥20羽あまりを確認した。特定はできないが、おそらく雁(がん)と推定される」

緊急発進した戦闘機のパイロットが目にしたのは北朝鮮軍のヘリや無人機でもなく、群れをなして飛ぶ「20羽あまりの鳥」だったという訳だ。韓国軍の関係者によると鳥の群れがレーダーに捕捉されること自体は珍しいことではないが、戦闘機まで発進させて確認するのは「異例」だという。この関係者は「今回の鳥の航跡が特異な動きをしていたため戦闘機を出動させた」などと“誤認”の経緯を説明している。

「あ~そうだったのか。とりあえずホッとしたね」と済ませてしまいそうになったが、韓国メディアによると韓国軍が「未詳の飛行物体」が捕捉された時点でメディアに公表するのは極めて珍しい対応だという。韓国軍の関係者はあくまで「必要な軍事態勢を準備するのはいつものこと。メディアから質問がずっと来ていたので知らせただけ」と強調するが、外交関係者は「ある理由で韓国軍が敏感になっている」と指摘する。

北朝鮮の不審船に“3日間気づかなった”韓国軍

6月15日 韓国江原道「三陟港」で発見された北朝鮮漁船

いま韓国軍は“世間の批判の的”になっている。
6月15日、午前6時50分ごろ、韓国北東部の江原道・三陟(サムチョク)港に北朝鮮の住民4人が乗った漁船が停泊しているのを近くに住む住民が発見。「どこから来たのか?」と尋ねると「北からきた。携帯電話を貸してほしい」と答えたという。その後、住民の通報によって韓国軍や警察が対応。結果として亡命を希望した2人が韓国に残り、残る2人は板門店を通じて北朝鮮に送還された。

端的に言えば韓国軍は海上の軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)を越えて3日間かけて韓国側にやってきた“不審船”に全く気付かなかったという失態をおかしてしまったのだ。

「虚偽説明」もバレる…韓国軍の信頼が揺らぐ事態に

6月20日 会見で謝罪する鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相

さらにその後の対応も問題だった。当初、韓国軍は漂流している漁船を「沖合」で発見したかのように説明していた。しかしその後、停泊していた漁船を発見した住民らの証言によって、みるみるうちに「虚偽の説明」がバレてしまい、結局、鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は「虚偽の報告や隠ぺいがあったら徹底に調査し、法や規定に基づいて適正な対応をとる」「軍の警戒作戦の実態をきめ細かく点検し、責任を取るべき関係者は厳重に問責する」と述べ、国民に対して謝罪する事態に追い込まれた。

韓国メディアも「北朝鮮の顔色をうかがって事実を隠そうとしたのではという疑惑が大きくなっている」 (東亜日報)「軍の怠惰な警戒態勢も問題だが、責任を避けようとする指揮ラインの姿勢はさらに大きな問題だ。これが国防と軍の正しい姿勢なのか」(中央日報)と厳しい批判を浴びせている。

韓国軍といえば事実上、棚上げされた日韓の「レーダー照射問題」でも最後まで照射の事実を認めることなく、逆に感情的ともいえる反論を展開した。だが今回のように保身のために虚偽の説明を行うような環境が蔓延していたとすれば、当時の韓国軍の主張自体も疑いを持たざるを得ないだろう。

批判を避けたい韓国軍の“早とちり”?…ちなみに北朝鮮の反応は?

今回の韓国軍の“早とちり”はこれ以上の批判を受けるのを避けるために“早すぎる対応”に徹した結果が招いた事態だったのかもしれない。結果的に今回も韓国メディアからは「北朝鮮漁船の事件をめぐって監視体制や会見内容が不十分だと世論の批判をあびたことを意識したのか」(朝鮮日報)と痛いところをつつかれ、傷口に塩を塗られた形となってしまったが、韓国軍の前のめりな姿勢が垣間見れる出来事だった。

ちなみに韓国軍から「偶発的な武力衝突」を防ぐための通知文が送られた北朝鮮だが、何の反応も示さず“無視”したという。

【執筆:FNN ソウル支局 川村尚徳】

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