「サバ缶を宇宙に広めたい」 3度目の宇宙へ・・・野口聡一さんが語る“宇宙新時代”

カテゴリ:ワールド

  • 今年の年末から3度目の宇宙へ臨む野口聡一宇宙飛行士(54)
  • 搭乗まであと約半年…自分が乗る“宇宙船”がまだ決まっていない!?
  • 民間参入で広がる可能性…野口さんが語る“宇宙新時代”とは?

人類が初めて月に着陸してから今年でちょうど50年。 この節目の年に、宇宙新時代が到来するかもしれない。 それは「民間企業」が開発した新型宇宙船での“宇宙の旅”。 日本人として初めて搭乗予定の野口聡一宇宙飛行士(54)に話を聞いた。

野口聡一宇宙飛行士:
宇宙に行くと、国際宇宙ステーション(ISS)から巨大な地球を毎日見られるんです。地球の周りをくるくる回っているので、90分で地球を一周します。45分昼、45分真っ暗…、これが半年間ひたすら続きます。

フジテレビ Live News α
三田友梨佳キャスター:
へぇ~!(驚)

自分が乗る宇宙船が決まっていない!?

三田:
3回目の宇宙飛行まであと約半年となりましたが、今はどんな準備をされているのでしょうか?

野口宇宙飛行士:準備は順調に進んでいるのですが、実際に自分が宇宙にいく宇宙船が決まっていない、ちょっと珍しいパターンなんですよ。

三田:
決まっていないんですか?(驚)

野口宇宙飛行士:
いま、アメリカでこれから「民間で宇宙に行こう」ということで、色々と宇宙船を開発しているんですが、その準備が早くできた方に乗る可能性が高いです。そういう意味では米・ボーイング社やスペースX社、それぞれが新型の宇宙船を競うように作っていて、その準備ができ次第宇宙に行く感じになると思いますね。

三田:
1回目は、アメリカのスペースシャトルで、2回目は、ロシアのソユーズ(での搭乗)。野口さんは節目節目で宇宙飛行に行っていらっしゃいます。今回は、日本人として初めて民間の宇宙船に乗るということでしょうか?

野口宇宙飛行士:
人間が宇宙に出て、いま大体半世紀くらい経つんですが、今年は、アポロの月面着陸からちょうど50年なんですよ。50年経って“これからどうするんだ?”ということで、アメリカとしては「月にまた戻るか」となっているわけです。もう一つは民間企業の力がもの凄く強くなっているというか、これまで政府主体で進んでいた宇宙開発が民間企業の自由な発想と強い開発力を生かして変わっていこうというその節目に私のフライトがうまく入って…。もしかしたら、(これまで政府主体で進んできた計画から)民間の力によって人間が宇宙に行く時代になるかもしれない節目に上手くあたってきていて、それぞれに新しい挑戦があって宇宙飛行士冥利に尽きると思いますね。

三田
3回目の搭乗、気持ちの面での変化はあるのでしょうか?

野口宇宙飛行士:
1回目2回目に比べると落ち着いてあたっているのは確かです。打ち上げが近づくごとに自分の能力を高めていくというか、一緒に飛ぶ宇宙飛行士とチームワークを高めていくというような…そんな作業が段々本格化してきて、楽しい時期になってきていますね。

宇宙新時代の到来…何がどう変わっていく?

三田:
民間企業の参入もはじまって「宇宙新時代」とも言われますが、今後何がどう変わっていくと野口さんはお考えでしょうか?

野口宇宙飛行士:
一つは、これまで日本が関わっている意味では、スペースシャトルでのいろんな化学実験ですね。今後ろに日本実験棟「きぼう」/国際宇宙ステーション(ISS)モジュールがありますが、(これまでは)そこでのいろんな活動が中心でしたが、それがこれから地球圏から離れていく。もしかしたら月の近くまで、地球周回軌道にとどまっていた日本の活動が大きく広がっていく年だと思いますね。もう一つは、色々な形で民間企業、様々な業種が一気に宇宙産業に入っていく時代になると。アメリカでいうとアマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEOが新たに作った宇宙旅行ベンチャー「ブルーオリジン」ですよね。自分のロケットで月にいくという計画を大々的にして話題になっていますが、民間企業の自由な発想・豊富な資金力、開発にむけたモチベーションが一気に宇宙にむけて集結している時代かなと思います。

三田:
宇宙飛行士として、“民間参入”をどう思われますか?

野口宇宙飛行士:
例えば空を飛ぶことに関しても、昔は、根っからの冒険家しか空を飛べなかったのが、今は飛行機の後ろに旅客を乗せて荷物を載せる時代になってきたと。まさに今は、もちろんプロのパイロットはいますが、そうではなくて、外国に行くためなど物を運ぶために乗ったり乗せる人・物が多いですよね。宇宙もやがてそういう時代になっていくのではないかと思いますね。より多くの人を宇宙に連れて行くためにプロの宇宙飛行士は残って、より多くの人や物を宇宙に運びやすくするお手伝いをする役に変わっていくのではないでしょうか。

三田:
人の月旅行の話もでてきていますもんね!

野口宇宙飛行士:
月旅行の話でいうと、アメリカでは複数社が宇宙船の開発も含めて手を挙げていますので、近い将来、“修学旅行は月”という時代も来るんじゃないんですかね。

三田:
え~!(驚)凄い時代ですね。

三田:
民間の宇宙船はこれまでのものと何が違うのでしょうか?

野口宇宙飛行士:
1つはITの進歩というか、新しい技術を取り込んで、殆どの操作を自動化してしまおうという動きがあります。今は複雑な動きはコンピューターというかオートメーションに任せて、宇宙飛行士はいざというときに緊急時に操作に少し関わるくらいで。あとは無重力状態を利用した様々な活動を宇宙飛行士がやるんだという形になっているので、むしろ計器パネルの設計はどんどんシンプルになってきているんですよ。複雑な操作を極力コンピューターに肩代わりさせて、むしろ人間側・宇宙飛行士側には、余裕をもたせようという思想ではないかと思いますね。

三田:
タブレット端末が搭載されて、タッチパネル操作が可能になるという話もありますよね…!

野口宇宙飛行士:
最初は宇宙飛行士のほうが抵抗があったんです。スイッチや操縦桿がある方が、(宇宙飛行士にとっては)とっつきやすいんですけれども、タッチパネルを使って1つの画面でそれぞれの局面に応じて違う画面を出す、まさにアプリの世界ですよね。そういう考えにどんどん変わっていっているのは確かですね。むしろ我々の方が慣れていかなければならない時代にはなっていると思っています。

3度目の宇宙…野口さんの楽しみは?

三田 :
宇宙服も随分とスタイリッシュなものに変化していますよね

野口宇宙飛行士:
それが私の楽しみなところなんですよ(笑)
新型宇宙船はどちらもスタイリッシュでスリムにみえる宇宙服で…。実は、日本の会社も宇宙服に関してはこれから参入しようとしているんです。例えば、宇宙飛行士が半年間宇宙で暮らすなかで気やすい服というのも大事な技術で。日本のアパレルメーカーのデザイン性・機能性も優れていて、各国の宇宙飛行士に着てもらえるものがたくさんあると思うので、もし可能なら私の次のミッションで、日本のアパレルメーカーの力を宇宙服を通して発信していきたいですね。

三田:
宇宙食についてはいかがですか?

野口宇宙飛行士:
各国の文化を伝えるのに一番いいのは、宇宙食ですよね。日本は、和食を含めて食文化が進んでいますので、“日本宇宙食”としてブランド化して、JAXAが認定した宇宙食を各国の宇宙飛行士に食べてもらおうということで、既に30品目以上で認証が終わっていて、私も大量に宇宙に持って行く予定です。おにぎりやラーメン、海産物など一杯あります。日本の高校生が考えて作ってくれた鯖の缶詰が今回初めて宇宙にいくんですが、それも是非宇宙に広めたいですね。

三田:この10年でいろんなところに進化があるわけですね。

野口宇宙飛行士:
(自身の)宇宙飛行の行き先は3回とも宇宙ステーションで行き先は同じですが、ISSそのものも大きくなっていますし、そこに持って行くもの、そこで行うサービス、そして我々の活動もどんどん変わっていっていると思います。一昨年宇宙に行った後輩の宇宙飛行士たちに聞くと、10年前より住みやすくなっていると聞きました。我々の活動もより雑務から解放されて、本来やるべき仕事、宇宙実験だったり、宇宙から子供たちに語りかけたりといった広報活動などに集中できる体制になってきていると思いますね。

三田:

宇宙船というハードな面が変わると、宇宙飛行士の“働き方”にも変化はあるのでしょうか?

野口宇宙飛行士:
例えば、タブレット端末。普段活動するなかで、複雑な手順書や地上の管制官からの指示をできるだけ我々に分かりやすく伝えてもらうことが大事なんですが、そういうのをタブレット端末で使ったりですとか…。後は、我々の作業を手助けしてくれる専用のコンパニオンロボット「自律移動型船内カメラ(Int-Ball(イントボール))」もあるんです。これは、宇宙飛行士が無重力空間で作業をしている様子を横から撮影してくれて、地上の管制官が「今の手元の作業、おかしいよ!」とか色々と見てくれていて…。耳から聞こえてくるのを聞くと、地上のインストラクターがまるで横にいるかのようで、我々としては作業が楽になるかと思っています。

三田:
最新のテクノロジーが活かされているんですね!

野口宇宙飛行士:
最新テクノロジーをうまく使って、我々の“働き方改革”というか、宇宙飛行士がミスをしない環境を作ってくれているのかなと思いますね。

急速に進む宇宙開発競争…日本の技術の可能性は?

三田:
人類初めての月面着陸からちょうど50年ということで、ブラックホールの写真が公開されたりと色んなニュースが飛び交いますが、どう御覧になっていたのですか?

野口宇宙飛行士:
月面着陸50周年というのは我々にとっては、歴代の先輩飛行士から続いてきた歴史を振り返るいい機会だと思いますし、ブラックホールの映像は本当にわくわくしますよね。そういうニュースがある日突然、宇宙から降ってくるというか。そういうのが我々の宇宙業界の面白いところです。2019年6月上旬には、NASAが宇宙ステーションに民間人ツーリストを本格的に受け入れるということで、話題になっていましたが、これからそういう形で遠くの宇宙を我々が目指していくのも大事ですが、近い宇宙をより多くの人に開放していくという動きも加速していくと思いますね。

三田:
“近い将来”という意味では、2020年東京五輪でも盛り上がるそうですね。

野口宇宙飛行士:
東京2020組織委員会とJAXAのコラボレーション、「G-SATELLITE 宇宙へ」という名前のプロジェクトなのですが、ガンダムの小さなフィギュアを小型衛星の中に入れて、それを無重力空間に放出するんです。超小型衛星にはカメラも設置されて、宇宙空間を舞うガンダムの様子が撮影されるんです。“超小型衛星”自体が新しい技術で、10年前私が宇宙に行ったときはなかったんですよ。今、日本は超小型衛星の開発が進んでいるので、その仕組みを上手く作って、遊び心がある、なお且つ東京2020イヤーに向けて“宇宙から応援する”というプロジェクトができるのは本当に凄い時代になったなと思いますね。

三田:
月の周回軌道上に新たな拠点をつくる「ゲートウェイ」構想がアメリカを中心に進められていますが、野口さんは宇宙に秘める可能性についてどうお考えですか?

野口宇宙飛行士:
宇宙でのプロジェクトは、未来志向のプロジェクトにまとめ上げる力があると思います。これからは、ISSで培ってきた宇宙での国際協力の実績をこの次にどう活かすかというところで、月に向かう可能性もあるでしょうし、無人の「小惑星探査機「はやぶさ2」」については世界をリードしていますが、そういった分野での国際協力も盛んになるのではないでしょうか。

三田:
今は、月や火星に向けての道筋の転換点に立っていますよね。

野口宇宙飛行士:
そうですね。これまでは、ISSを使って地球の近くで宇宙環境を使う時代が長く続いてきたのですが、2019年から2020年は、一気に地球から離れた世界に…視点が内向きから外向きに変わっていく転換点にあるのかもしれないですね。

三田:
宇宙ビジネスが世界的に注目される中で、日本技術の可能性についてはどうお考えですか。

野口宇宙飛行士:
物作り大国としての日本の技術力は、世界中が認めていると思います。例えば、このきぼう実験棟一つとっても、“出来がいい”とか。同じ基準で作っていても、日本のモジュールは音が静かだし住環境が優れているというのは、各国の宇宙飛行士が異口同音に言っていますね。そうした成果が、次のプロジェクトに活かされていくと思いますし、宇宙被服、宇宙食、そして宇宙エンターテインメント分野でも日本の会社や日本の技術がもつポテンシャルは凄く大きいと思います。単に宇宙船やロケットに限らない、宇宙をより豊かに使っていくという部分で、日本の技術力がこれから活きるていくといいかなと。“カラフルな宇宙”になっていくのではないでしょうか。

三田:
カラフルな宇宙?

野口宇宙飛行士:
はい。宇宙に行った方が住環境がいいなとか宇宙に行った方が楽しいなというような状況があるといいなと思いますね。

三田:
最後に野口さんのこれからの夢についてお聞かせください。

野口宇宙飛行士:
宇宙飛行士として3回目、幸せなことに挑戦させていただきます。宇宙を通して我々の次の世代、子供たちに可能性がどんどん広がっていっていると。宇宙を通して、自分たちの夢が広がっていくんだと子供たちが思えるような活動をしたいとずっと思っていました。(3回目のミッションで)新しいチャレンジがどの程度あるかまだ見えていませんが、それを成功させて皆さんに伝えることで、次のプロジェクトに繋げていきたいです。そして、宇宙に夢と可能性をみてもらえると。自分たちの夢の実現にむけたゲートウェイになるように頑張りたいと思います。

(「Live News α」7月4日放送分)

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