G20大阪サミットには37の国と機関が参加した。これらの国々のうち、特に“大国”は警備上の理由から市内の高級ホテルを貸切った。果たしてアメリカ、中国、ロシアが貸切ったホテルはどこだったのか。警備体制はホテルや国によって異なるのか。そして移動の際の車列に違いはあるのか。比べてみたら“お国柄”を感じさせるとても大きな違いが…

首脳が宿泊するホテル前は警察官だらけ
首脳が宿泊するホテル前は警察官だらけ
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アメリカ・トランプ大統領は「帝国ホテル」を貸切り

まずはアメリカ・トランプ大統領。5月に令和初の国賓として来日した際は東京のパレスホテルに宿泊。今回、大阪では帝国ホテルを貸切った。

トランプ大統領が貸切った帝国ホテル
トランプ大統領が貸切った帝国ホテル

その警備体制はすさまじく、ホテル手前数百メートルから、警察はいつでも道路を封鎖できるジャバラ式のゲートを二重に設置。両脇には機動隊のバスを配置し、ホテル前の公園は規制線を張って完全封鎖。歩道には警察官が数メートルおきに配備され、もはや右見ても左見ても後ろ見てもどこみても、視野には必ず何人もの警察官が。

いつでも封鎖できるゲートを2重に設置
いつでも封鎖できるゲートを2重に設置

G20二日目の午前9時、トランプ大統領がホテルを出るとの情報をもとに行ってみると…すでに数千人の住民が沿道に。

なぜこんなにも多くの住民が…どこでこの時間にホテルを出るという情報を得たのか…

「なんや通りかかったらえらいひとがいたから、おもわず待ってもーたわ」と隣のおばちゃん。なるほど。人が人を呼んでこの状態になったのか…一番前にいたおばちゃんも「8時にきてからもう1時間やわ。こんなにかかるとはおもわんかったわ。えらい暑いし、まったく。はよ出てきてほしいわ」と自分が勝手に出待ちしておきながら大国アメリカに対して愚痴っていたことから、何時に出てくるかまではわかっていない様子。

沿道にあふれかえるトランプ大統領を待つ住民たち
沿道にあふれかえるトランプ大統領を待つ住民たち

しかし、高級一眼レフを構え、脚立に立っていた“本格派”の2人の若者に聞いてみると「アメリカが発表してますよ。向こうの官報みたいなのに載ってるんです。9時15分に出てくるって」という。私たちが得ていた情報と合っている…こうした情報で集まったひとを見て、通りかかった人たちも足を止め、膨らみに膨らみ数千人に…アメリカの人気、すごくないですか…

そして“発表”されていた時間から遅れること30分。空気がピリッとした緊張感に包まれた。「出てきはるでー!」と叫ぶうしろのおじちゃん。否応なく緊張感が一気に沿道の住民と警察官に広がっていく。おもむろに開くジャバラ式のゲート。白バイ3台が先導し、トランプ大統領の車列のお出ましだ。

登場したアメリカ大統領専用車
登場したアメリカ大統領専用車

おもいのほかゆっくりと動き出した車列。トランプ大統領の専用車両「ビースト」は2台。トランプ大統領はどこだ!?映像を見返してみても、残念ながらわからず。反対側だった模様。そして、なぜか見るからにアメリカっぽい重装備な車が通過するたびに沸き起こる拍手と歓声。無視される何台ものハイエース。しめは覆面パトカーと警察車両で、実に48台の車両が一気に移動し、住民数千人が参加した“お祭り”は終わったのだった。

私服警察だらけの「ウェスティン」には中国・習近平国家主席が

お次は、アメリカの関税戦争のお相手、中国。タクシーの運転手のおじちゃんが「中国はめちゃくちゃ敵多そうやからなぁ。警備、半端ないんとちゃうんか。こわいわー」とおじちゃんなりの国際感覚に基づく推測を披露してくれたが…これが、確かに怖かったのだ…

中国が貸切ったのはウェスティンホテル。アメリカのような2重にわたるジャバラゲートはなかったもののこちらも沿道には数メートルおきに警察官が。

中国・習近平国家主席が貸切ったウェスティン
中国・習近平国家主席が貸切ったウェスティン
数メートルおきに配置された警察官
数メートルおきに配置された警察官

しかし、マスコミである証明の顔写真入りメディアパス(黄色くて大きくて目立つ)を首からぶら下げているのにも関わらず、ホテルに近づくつれ、不快な視線をあちらこちらから感じる…ふと見渡すと、短パンにTシャツとラフな格好なのに、不自然に片耳にイヤホンをつけた男性たちが電柱の影やたてものの隅に…しかもあちこちに…私服警察か…。ものすごい数の無遠慮な視線を浴び、そこにいるだけでストレスを感じるほどだ。こんなに私服警察とみられるひとたちがいるのも、中国だからこそのデモ警戒か。

電柱のうしろに私服警察
電柱のうしろに私服警察

ホテルの目の前まではいけるものの、もちろん入り口はすべて完全封鎖。そして…住民は誰もいない…アメリカと違い、習近平主席の出入りの情報がないからか。それとも中国だからか…

そして、いよいよ習近平主席がホテルに帰ってきた。白バイの先導に続いて、習近平主席の車両。スモークが張られているため、目を凝らせばうっすらと人影がみえるが、それが本人なのか、関係者なのかさっぱりわからない。関係車両と合わせて全部で25台。アメリカのおよそ半分の車列であった。

中国・習近平国家主席の専用車
中国・習近平国家主席の専用車

しかし、アメリカの時は沿道から歓声があがり、まるでパレードだったが、こちらはなんとも不気味な静けさにつつまれた車列の移動であった。

川には警察ボートが… ロシア・プーチン大統領はリバーサイドの「リーガロイヤル」に

ロシアのプーチン大統領はリーガロイヤルを貸切り。まもなくプーチン大統領本人が出てくるとあり、手前数百メートルから道路は完全封鎖。バリケードが敷かれた。
リーガロイヤルは川に面しているのだが、そこには2隻の警察のボートが。1隻はホテル前に張り付き。もう1隻はいったりきたり。もちろんほかの船の影はない。

中央の茶色の建物がリーガロイヤル 手前の川には警察のボート
中央の茶色の建物がリーガロイヤル 手前の川には警察のボート

そして、横断歩道も封鎖され、通行が一切できなくなり、いよいよプーチン大統領の車両が。白バイに続いて、見たことのない顔の大型高級車が登場。2本のアンテナが屋根に設置された威圧感たっぷりの車は、まさに大国ロシアの威厳をほうふつとさせる。

プーチン大統領を乗せたと見られる専用車
プーチン大統領を乗せたと見られる専用車

濃いスモークで車内の人影すらみえず、プーチン大統領がどこにのっているかはわからないまま、静かに目の前を通過していった。車列は合計23台。三か国の中ではもっとも少なかったが、“プーチン車”は存在感、いや威圧感が半端なかった。

ちなみに、それ以外の国はというと…たとえばサウジアラビアの車列は16台。随行する
関係者が膨れ上がることから、大国はやはり車列の数も「大国クラス」になるのであろう。

交通規制・警備にあたった全国の警察のみなさん、お疲れさまでした。

(執筆:フジテレビ プライムオンラインデスク 森下知哉)

森下知哉
森下知哉

「そのニュースは未来の事件・事故を防ぐことにつながるのか。生活はより豊かになるのか」が取材テーマ。
2001年フジテレビにアナウンサーとして入社。夕方の報道番組「FNNスーパーニュース」のリポーター・キャスターを9年担当したのち、2009年に海外特派員としてNYへ。2013年に帰国したのち、社会部(司法・警視庁)、政治部(官邸・与党)を担当。好きな映画は「APOLLO 13」「リトルミスサンシャイン」。自動車・大型自動二輪のほか潜水士、船舶免許1級の資格を保有。なのにどちらかというとインドア派。