施設か自宅か…親の老後の“家選び”でチェックしておきたいポイント

「人生100年時代」を考える。

カテゴリ:暮らし

  • 親の介護の有無で施設選びは異なる
  • 親は施設よりも自宅で暮らしたいと願っている
  • 施設契約までに注意すべき5つのポイント

少子高齢化が問題視される日本。

2042年まで高齢者人口は増加傾向が続くという予測もあり、働き盛りのビジネスパーソンにとっても親のサポートは身近な存在になっているはずだ。老後にはお金や健康、介護など、さまざまな問題があるが、今回は“家”について注目しよう。

介護・暮らしジャーナリストで、NPO法人パオッコ理事長でもある太田差惠子さんに話を聞いた。

介護が必要かどうかで施設が異なる

「特別養護老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」など、老後の家に関してはさまざまな種類の施設がある。どのような観点で選べばいいだろうか?

「ご家庭の状況によって異なるので、一概に決めるのは難しいですが、親御さんに介護が必要かどうかで選び方は変わります。介護が必要なら、24時間体制で介護を受けられる『特別養護老人ホーム』や『介護付き有料老人ホーム』などを選ぶ方が多いです。身のまわりのことができるなら、最近増えている『サ高住』などの『住宅型』も選択肢となるでしょう」(太田さん、以下同)

介護が必要なケースでは「特別養護老人ホーム」が人気だ。介護保険を使って入居できるため費用はリーズナブル。年金などの所得が少ない親だと、自己負担が軽減されるので食費や介護費込みで月額5万円くらいからある。

ただし、申し込めるのは原則、要介護3以上。入居まで待機しなければいけないところも多いので、介護付きの有料老人ホームを選ぶ人も多い。有料老人ホームは、かかる費用は高めだが、施設ごとに医療体制がしっかりしていたり、ラグジュアリーだったり、独自の特色を出しているところもある。

ちなみに、施設には以下のような種類がある。図内の「特定施設」は特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設。指定を受けているところのみ、「介護付き」「介護型」と名乗ることができる。

つまり、24時間体制で介護を受けられるのは、「介護保険施設」と「特定施設」、そして認知症の介護に特化した「グループホーム」。「住宅型」に入居して介護を受ける場合は、外部事業者と別途契約をおこなう必要がある。

多くの親は施設に入居したくないと思っている

前述のとおり、介護の有無が家選びの大きなポイントになるわけだが、それよりも先に確認しなければならないことがあると太田さんは指摘する。

「高級な住宅型のなかには、プールやシアタールーム、レストラン、応接室などが完備されている施設もあります。私たちからすると、すぐにでも“入りたい”と思える設備ではありますが、実際に入居されている方から“子どもから言われて致し方なく住んでいる”という声を聞きます。親の多くは、施設に入るよりも住み慣れた自宅で過ごすことを望んでいる場合がほとんどです。施設を選ぶよりも前に、まずは親と話し合い、施設を選ぶ目的を明確にしなければなりません」

なぜ施設に入居するのか。「なんとなく施設のほうが安心だから」という曖昧な理由ではなく、「在宅でのひとり暮らしはさみしい」や「ひとりでトイレに行けなくなったから、サポートしてもらいたい」といったような目的があるはずだ。

話を突き詰めていくと、施設に入らずとも自宅のままホームヘルプサービスやデイサービスなどを活用することで、悩みが解消されることもあるという。

一方で、自立の親が住宅型で暮らし始めたものの、入居後に重度の介護が必要になり、退去しなければならない状況に陥ったというケースも少なくないという。“なんとなく”で施設を選んでしまうと、あとで「こんなはずでは…」となる可能性が高くなるだろう。

契約までの注意点は?

親と話し合い、ある程度の施設に目星をつけたら、その後はどうすればいいのだろう? 重要なポイントを教えてもらった。

(1)譲れない条件を決める
施設の立地条件や自由に外出できるか、自室にキッチンがあるか、診療体制が整っているかなど、親と子どもの譲れない条件を確認し、優先順位をつけ、さらに施設を絞り込む。

(2)予算の目安を立てる
親の貯蓄や年金などを確認し、どの程度の施設に入居できるかを確認する。予算が少ない場合は、民間施設は選択肢から外し、「特別養護老人ホーム」などを選ぶことになる。

(3)見学する
最低でも3~5カ所の施設を見学し、親(子ども)と施設との“相性”を確認する。ランチタイムに見学すると、食堂に入居者が集まり、入居者とスタッフとの関係や食事内容なども確認できる。また、親やきょうだい、配偶者、友人など、複数人で訪問し、見学後に感想を言い合うことで自分とは違った視点の意見を聞くことも重要。

(4)体験入居する
可能であれば1~2週間程度の体験入居をおこなう。体験入居期間中にほかの入居者やスタッフと交流し、施設の雰囲気などを知ることができる。うまくコミュニケーションがとれないようであれば、入居後に馴染めない可能性があるので注意が必要。

(5)契約
「重要事項説明書」を読むことになるが、契約時に確認するのでは遅い。見学時に「重要事項説明書」をもらい、事前に読んでみる。また、入居一時金がある施設の場合は、「クーリングオフ」制度の有無についても確認する。

太田さんによると、「(1)譲れない条件を決める」を明確すると、どんな施設が適しているのかが見えてくるようになるとのこと。

「うちの親はまだ大丈夫」と思っていても、突然の病気やケガで介護が必要になるケースもある。いつ老後の家探しをしても大丈夫なように、いまのうちから少しずつ施設や介護制度の知識を蓄えておこう。


取材・文=奈古善晴/オルメカ
取材協力=太田差惠子
http://www.ota-saeko.com/

介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長。『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第2版』(翔泳社)は、20年以上の取材活動を行う一方、遠距離介護をする子世代を支援するNPO活動を行ってきた著者が、実際にたくさんの施設を見学し、見聞きして得たリアルな情報を紹介。いざ親の入居を検討しようと考えてはみたものの、どう行動すればいいのかがわからない方に向けて丁寧に解説している。

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